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2020.12.21

「寝る直前の勉強」が記憶に効くこれだけの理由|徹夜勉強よりも寝たほうが効果的なカラクリ

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池田 義博(2019年度記憶力日本選手権大会優勝者)
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人生100年時代を迎え、価値観の多様化も進み、社会の構造がますます複雑化していくことが予想されます。これからの子供たちがそんな世の中に対応していくためには、「考える力」がますます必要になってくるでしょう。

実は、その力を伸ばすカギは、「記憶力」にあります。子供の頭をよくし、その子の人間力や、非認知能力、EQ(心の知能指数)までをも高めるための近道が記憶力を鍛えることなのです。

ロンドンで開催された世界記憶力選手権での経験を基に「記憶」の根本からひもとく脳育の入門書『子供の成功は記憶力で決まる 学力、思考力、心を育む子育て』から一部を抜粋・再構成して紹介します。

改めて考えたい、睡眠の重要性

よく寝る子は育つといわれますが、それは記憶に関してもまったく無関係ではありません

記憶学習をするならば寝る前の1〜2時間がゴールデンタイムと言われていますが、なぜその時間帯が記憶に向いているのかを説明します。

皆さんは、徹夜勉強で次の日のテストに臨んだ経験はあるでしょうか。もしあるならばその当時の感覚を思い出していただきたいのですが、一睡もしていない状態でテストを受けて、そのテストが終わるまではなんとか勉強した内容を思い出して解答することができたのではないでしょうか。

ところがテストが終わってしまったらほとんど覚えた内容が消えてしまったのではないですか。このエピソードは記憶を長期に残すためには睡眠が必要であることを物語っています。

そもそも記憶にとって睡眠というのは切っても切れない関係、絶対に必要な過程なのです。なぜなら睡眠の過程を経ないと上記の徹夜のテスト勉強のように記憶が定着しないからです。

皆さんが寝ている間も実は脳のなかでは脳の司令塔「海馬」は一生懸命働いています。その間、海馬は何をしているのかといえば、昼間のうちに頭の中に入ってきた断片的な情報や記憶を整理しているのです。

どのように整理しているかというとその断片的な情報どうしを組み合わせてその整合性をチェックしているのです。そして整合性が確認された情報が長期の記憶となることができるわけです。

夢とは記憶の再生

もう少しわかりやすくたとえるならば、昼間頭の中には情報がジグソーパズルのピースのような状態でばらばらに入ってきます。海馬はそのバラバラのピースどうしを組み合わせてみて正しい絵になるかの確認をしているというわけです。

ピッタリ合うピースの組み合わせが見つかったらその完成した絵、つまりその記憶は整合性あり、と見なされ、長期の記憶として大脳で保管されることになります。それで寝る前の時間が記憶学習にとって効率がいい理由もわかります。

昼間、寝る時間よりもだいぶ前に頭に入ってきた情報、ジグソーパズルのピースは寝る時間にはもうばらばらに散らばっていてそれらを拾い集めること自体大変なわけです。ところが、寝る直前に頭に入ってきたパズルのピースは1カ所にかたまっているので海馬は苦労せず、それらの整理作業に入れるというわけです。寝ている間に見る夢、あれもこの海馬の情報整理作業によって引き起こされているといわれています。

つまり夢とは記憶の再生というわけです。皆さんもまったく現実性のない夢や風変わりで変な夢を見たことがあると思いますが、それもこれも海馬が情報の組み合わせを試しているからこそ起きる現象なのです。

いずれにせよ人は一晩のうちに膨大な夢を見るのですが、それらは海馬がキープしている情報や記憶が夢のなかで再現されているということです。そしてそれらの情報の整合性を確認して必要なものか、必要ないものかを吟味しているということです。

ここまで説明してきたことからわかるように、寝ないということは海馬の情報整理の作業が行われないということですので、その過程をとらない情報はすぐに廃棄されてしまうのです。それが徹夜勉強の内容がすぐに消えてしまう理由です。

当然、勉強の目的は長期にわたって学習内容を記憶することにあるわけですから、そのためにも睡眠時間を削って勉強することなどは愚の骨頂といえるのです。せっかくがんばって勉強するならばできる限り睡眠時間を確保するほうが結局は得だということです。

ちなみに最新の研究では新しく知識を身につけたいときには、その日に6時間以上眠ることが必要であることがわかっています。海馬にまかせてしっかり寝るに限るというわけです。

さらにもう1つ睡眠が記憶にとって重要な理由があります。

勉強してもまったく理解できなかったことがあるとき突然ぱっと閃いてわかるようになるとか、楽器やスポーツで何度も練習すれどもうまくいかなかったテクニックがある瞬間いきなりできるようになるなど、あるとき突然今まで蓄積していた情報や記憶が高度化する現象があります。このように、学習した内容が時間が経つことで、より理解が深まるという現象のことをレミニセンス現象といいます。

このレミニセンス現象にも睡眠が関わっています。これも寝ている間に情報が整理整頓されているからこそ引き起こされるのです。勉強したものが充分な効果を発揮するためにはある程度の時間が必要であるというわけで、直前に頭に入れた知識よりも、入れてから数日おいた知識のほうが脳のなかで整理整頓がなされ利用しやすい記憶になっているという仕組みです。

私は学習のやり方に関して「分散学習」をおすすめしています。新しく英語の単語を覚えるときに1日で4時間一気に覚えるか、1日1時間ずつ4日かけて覚えるか。かけた時間は同じでも4日に分けたほうが長期の記憶になると考えているのですが、その理由も実はこのレミニセンス現象なのです。ここからも勉強はコツコツ進めることが大事なことがわかります。

いい睡眠をとるために

それではその睡眠は長くとればとるほどいいのかというとそうでもなく、それよりも重要なのは睡眠の質です。質のいい睡眠をとるための目安はとにかく寝始めの最初の90分の質を上げることに注力することなのです。寝始めの90分の睡眠の質がよければ、残りの睡眠の質もそれに比例してよくなることがわかっています。その一番のキーポイントになるのが「体温」のコントロールです。

体温には体の表面の「皮膚体温」と体の内部の「深部体温」があります。良い眠りにつくためには深部体温が目覚めているときより下がる必要があるのです。この深部体温はまずは皮膚体温を上昇させて体の表面から放熱することによって下がりやすくなります

そのために効果的なのが入浴、お風呂に入るということです。理想的には眠る90分前には入浴を済ましておくことです。するとそこから徐々に深部体温が下がってきてスムーズに眠りに入ることができるのです。

そしてもう1ついい睡眠のために考えなくてはいけないのが、スマートフォンなどの電子機器から発せられるブルーライトによる影響です。

睡眠にとってこのブルーライトは大敵です。ブルーライトを見ることで、体内時計のリズムが乱れてしまうからです。

目からブルーライトが入るとその情報は体内時計の重要な中枢といわれている視交叉上核(しこうさじょうかく)という場所に伝わります。

ブルーライトの刺激は、さらにメラトニンというホルモンがつくられる松果体(しょうかたい)に伝えられます。夜に浴びるとブルーライトを含む明るい光を昼と判断し、体内時計に作用して睡眠を促すメラトニンの分泌が抑制されて眠れなくなると考えられているのです。

今や多くの子供たちがスマートフォンを持つ時代になりました。体内時計のリズムを狂わせて、睡眠の質を下げてしまうのを防ぐためにも、スマートフォンをはじめ電子機器の寝る前の使用に関しては、子供たちとよく話し合ってルールを決めることをおすすめします。

2019年度記憶力日本選手権大会優勝者

池田 義博(いけだ よしひろ)

記憶術と出合ったことがきっかけで記憶力に興味をもち、日本記憶力選手権大会に出場。40代半ばでの初出場にもかかわらず、10カ月の練習で優勝を果たす。その後2019年まで、6度出場し、すべて優勝。また2013年にロンドンで開催された世界記憶力選手権において日本人初の「記憶力のグランドマスター」の称号を獲得。現在は記憶力も含め、世の中の多くの人たちの「脳力」向上に貢献することを自身のミッションとして活動中。テレビ・ラジオの出演および著書多数。アクティブ・ブレイン協会テクニカルディレクター。ライフキネティックジャパン・アンバサダー。

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