親が自分自身で呪縛をかけている!?
「◯歳になったのに、こんなこともできないの」「もう◯年生なんだからできるよね」、このような言葉を口にしたことありませんか? 就学前は伸び伸びと子育てができていたのに、小学生になると段々とこの言葉を親は口にしてしまうことがあるようです。このような背景にはどんな心情が隠されているのか、スクールカウンセラーとしても活動している、臨床心理士・吉田美智子さんにお話を伺いました。
◯年生という区切りが、親の焦りに拍車をかける
「子育てをしていると、ついつい〝何歳なら何ができる〟と子どもに期待してしまったり、できないとがっかりしてしまったりしがちです。期待することは悪いことではありませんが、この年齢でジャッジしてしまうことが問題かと思います。親がこの心情になってしまう原因のひとつは【学年】という判断基準を手にしたから。
そして学校では、学年の中でも、12ヶ月の年齢の差があります。未就学児の間はこのことが尊重されていましたが、小学校では12ヶ月の成長の差を加味することなく【同学年】としてひとくくりにされます。みんなと同じにできない子は、肩身が狭くなったり、自信を失いがちに。
さらに、個人面談などで先生に〝〇〇がちょっと…〟などと言われてしまうと、家庭でも『もう〇年生なんだから、ひとりでできるよね』などと学年縛りで評価してしまいがち。ゆっくりなお子さんはますます自信を失ってしまいます。そして、何より怖いのは親自身が子どもにそう声掛けすることで【うちの子は〇年生なのにできない】と不安になってしまうことです」
短期的<長期的、短所<長所に目を向けて!
「基本は年齢や学年で縛るのではなく、本人のペースに合わせて考えてみてください。まずは短期的から長期的な見方へ思考をチェンジしてみましょう。1年刻みで一喜一憂するのではなく、6年間で身につけて欲しいことは何かをハッキリさせておきましょう。
ゆっくりな子は、物事をよく観察したり、想像力が豊かだったり、ゆっくりならではの長所があります。周りとテンポがズレていても、そこを直させるより、長所を育んだほうが親子共々楽しい毎日が送れます。
勉強面で理解が遅いなと感じることもあると思います。【やる気スイッチ】なんて言葉もあるように、本人が興味を持つタイミングがあります。隣に座ってみっちり教えるより、日常生活の中にやる気スイッチは転がっていることが多いようです。
例えば、ホールケーキを家族の人数分に切って、2Lのペットボトルを4人家族で分けるとひとりどれだけ飲めるのかなぁ?など、実際に身体を使ってみるとひらめきが楽しく感じるはずです。しかし、様子を見てて苦しそうだったり、先生に指摘をされるようであれば、スクールカウンセラーや地域の教育相談所などを頼ってみてください」
年齢や学年縛りで、我が子のできるできないをジャッジしてしまうには、親の期待や不安が入り混じっているよう。まるで呪縛のようなこの思考は終わりにして、子どもの自尊心へきちんと目を向けてあげたいですね。
取材・文/福島孝代
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