第4回「おごる?おごられる?」
みなさんこんにちは、心理カウンセラーのヌンサリです。さて、働く女性のライフワークバランスについてあれやこれやお話しさせていただくこちらの連載、第4回目は、働いていると必ずと言っていいほど遭遇する、「あ、ここ、出しますよ!」というセリフ。
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▶︎第3回「なにが基準で、良い奥さん?」
★★★
「おごりますよ!」の一言で「この人、私をバカにしてる?」
友達がインド系アメリカ人、イギリス人、日本人で集まってご飯を食べていた時アメリカ人男性がみんなの分を奢ろうとすると、イギリス人女性が驚いたように言いました。
「ちょっとやめて、同僚だし、私あなたと同じに働いて賃金をもらうのに何だかリスペクトされていない気がするわ」
ヌンサリが別の友達とご飯をした時も、奢ろうとした日本人男性に、フランス人女性、フィンランド人女性も同様の反応。私たちは独立している、働くことで賃金もらっている。自分の分は自分で払うからお気になさらず! ということだ。
社会的立場が下と言われているような、バカにされてるような気になるらしい。
確かに、男女の格差が日本よりはるかに少ない地域出身のヨーロッパの人の方が、自分の分は自分で払うから、splitしようね、といういわゆるワリカンが多い。
社会的に立場があきらかに上の人、そうたとえば上司が奢ってくれる事や、友達がおごってくれて、次は自分が払うね、というのはあるけども。
おごる、おごられ…
例えば韓国や中国では、年上だったり、声かけた人がおごるなど、文化によって様々です。
ちなみに日本の大学で学生と話すと、友達同士は男女関係なくワリカンが今の普通など、ジェネレーションによっての違いもありそう。ちょっと前までは「男の子が払う」みたいなこともあったような。
と考えると、今の若い世代は、男女間の立場に対して、とてもフラットになってきているとわかります。
稼いでいるかいないか。社会的立場が潜む「おごり」
一方で、私が学生だった時、近隣の学生たち20人くらいと国際関係の勉強会をしていました。その勉強会発起人は、国際機関勤務の日本人、40代半ばAさんという方で、勉強会の後にはその方が取り仕切り、ご飯を食べに行くことがよくありました。
Aさんは誰よりもお酒を飲み、食べ、そして清々しいほどの笑顔で最後「はい、ワリカンね(はあと)」というのでしたが、誰も特に言いませんでした。何となく言いにくい…?
そんなある日、とある大学教授が参加し、「Aさん、私たちは働いているし、この中にはお酒も飲まず、あまり食べない人もいる。私たち、学生のみんなより飲んで食べていますよね?大人は多めに出しましょう」と言って、はじめて累進課税のようなシステムが取り入れられました。
教授!金欠の学生にはありがたいお言葉…。「僕もそう思ってたんですよ!」とAさんは言い、どの学生も「ありがとうございますっ!!」と異議を唱える人はいませんでした。
思えば、やはり自分で稼いでいる、稼いでいないなど社会的立場が、おごる、おごられの行為には潜んでいるのでしょう。
時代や文化で変化する「おごる」「おごられる」。
今は「おごられてラッキー!」という単純なものから一歩踏み出て考える時代なのかも。
様々なバックグラウンドの人がいる場合は特に、おごる側はもちろん、おごられる側も、何がお互いにとって快適な行為なのかを考えて、より良い関係を続けたいですね。
これまでの【元国連勤務カウンセラー・ヌンサリが解説する働く女のライフワークバランス】
まずは自己紹介あれやこれや
第2回 「お酒は誰が注ぐのか?」世界と日本の事情の違い
第3回 「なにが基準で、良い奥さん?」
大学講師/研究者/カウンセラー
ヌンサリ
日本生まれ。北アメリカ、東ヨーロッパ、西アフリカなどの国連機関での勤務を経て、現在は大学講師、研究者、カウンセラーとして働く。カルフォルニア大学バークレー校、ニューヨーク大学大学院卒。東京大学大学院医学系研究科卒・博士。家族は夫と保育園児。