「多様性」について、子どもにどう伝える?
まず〝多様性〟を辞書で調べると、【いろいろな種類や傾向のものがあること。変化に富むこと】(小学館刊・大辞泉)と書いてあります。近年における多様性は、〝今までの価値観にとらわれない〟〝少数派や弱者も多数派と変わらない〟という、個々を尊重する風潮にあります。もっと言ってしまえば、【普通や一般的という言葉が通用しなくなる】社会になるかもしれませんね。
そして、多様性に関してよく耳にするのは「トランスジェンダー」「みんな違ってみんな良い」という言葉ではないかと思います。言葉の意味を理解しているつもりでいても、いざ子どもに伝えるとなるとどうでしょう? どのように伝えるべきか、頭を悩ませてしまうかもしれません。
親が知らないことは知ったかぶりをしない
まず今の親世代は、子育ての様々な場面で〝自分の小さい頃とは違う〟と感じる機会が多いと思います。自分自身もアップデートしていかないと、子どもにうまく説明してあげられないことも。ですので、〝親が完璧に教える〟という姿勢はとらず、〝知らないものは一緒に学ぶ〟という方向性がいいと思います。
多様性についてどう話す?→自分のマイノリティ体験を思い出す
ジェンダー、肌の色、異なる意見…多様性を唱える幅は広く、それぞれを勉強するのは時間的に無理があると思います。そんな忙しい子育て世代の皆さんには、まず〝自分のマイノリティ体験〟を見つめ直すという作業をしてみてください。これはいろいろな多様性の問題の原点にあたる部分だと考えます。
マイノリティ=少数派となるわけですが、例えば出来上がったグループに新しく入る場合や、みんなが賛成した意見と異なる意見を持っていた時などを想像してください。心細かったり、自分は間違っているのかなと疑心暗鬼になったり、不安な気持ちでいっぱいになっていたと思います。そんなとき、誰かが優しく声をかけてくれ緊張していた心がほぐれた、という経験もあるのではないでしょうか。
この自分がマイノリティだった時の記憶を元に、様々な多様性について大きな心で理解を示せれば、個々に学びを深めずとも子どもへ偏見なく伝えられるはずです。
多様性をどこからどこまで話す?→親発信ではなく、子どもが疑問を持つ話題をチョイス
多様性の時代だからといって、いきなりジェンダーやマイノリティの話をされても、子どもも「?」となってしまいます。また興味のないことを話されても、身につきませんよね。話すタイミングや幅は、子どもから疑問を投げかけられた時がチャンスです。
例えば、街で女装家を見て「男の人なのになんでスカートはいてるの?」、TVで青い瞳の人を見て「なんでこの人は目が青いの?」など率直な疑問を投げ掛けられると思います。その疑問を持った時に、疑問がなくなるまで答えてあげましょう。「男の人でも、スカートが好きな人はいるんだよ。反対に女の人でもズボンしかはきたくない人もいる。好きなものを着られた方が楽しい気持ちになるよね」「青い目も、茶色の肌も、黒い髪も、みんなお父さんお母さんからもらった最初のプレゼントなんだよ。大切にしたいね」など肯定的に説明できるとベストですね。
親の知識だけでカバーできない場合は、無理せず一緒に調べてくださいね。【親は完璧】という考えも、今の時代には合わないと思います。
親の価値観が子どもにも影響を与えがちです。新しい時代を生きていく子どもに対し、親が苦手・嫌いだからと決めつけた意見を述べるのではなく、一緒に考えたり、世界が広がる思考へ繋げられたらいいですね。
取材・文/福島孝代
あわせて読みたい
▶︎親だって辛いときだってあるんです。子どもに弱音を吐いてもいいですか?
▶︎「もしかしてうちの子…!?」子どもの〝グレーゾーン〟を知る5W1Hとは