「獅子身中の虫」とは内部の害をもたらす者のこと
【獅子身中の虫:しししんちゅうのむし】
《獅子の体内に寄生して、ついには獅子を死に至らせる虫の意》1 仏徒でありながら、仏法に害をなす者。2 組織などの内部にいながら害をなす者や、恩をあだで返す者。〔補説〕「獅子心中の虫」と書くのは誤り。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
獅子身中の虫は、内部にいながら害を与える者や恩を仇で返す者を意味する言葉です。読み方は「しししんちゅうのむし」です。身中は「みなか」ではなく、しんちゅうと読むことに注意してください。また、獅子心中の虫と誤用するケースも見られるため気をつけましょう。
あまり頻繁に目にする表現ではないため、はじめは意味がわかりづらいですが、漢字を眺めているうちになんとなく意味を掴める気がするという方もいるはずです。
獅子身中の虫の語源は、仏教の「梵網経(梵網経)」にあります。ここからは、獅子身中の虫の語源について詳しく解説します。
「獅子身中の虫」の語源は仏教語
獅子身中の虫は仏教語であり、語源は仏教の「梵網経(梵網経)」の中にあります。もともとは仏教の教えの恩恵を受ける仏教徒が仏教を裏切り、仏法を破壊することを意味する言葉として使われていました。
梵網経では、出家した者が守るべき戒律を次のように述べています。
「獅子は自分の体の中に巣食う害虫に食われて死ぬ。外からの虫に食われるわけではない。仏教もまた、外部から破壊されるわけではなく、教えに背く仏教徒によって破壊される。」
この戒律から転じて、組織の内部にいる者が内部から害をもたらし、組織を破壊する例えとして使われるようになりました。
「獅子身中の虫」を使うときには注意が必要
獅子身中の虫は組織の内部にいる者が害をもたらすという意味です。どんな組織にもあてはまる言葉ですが、社会人であれば会社がもっともイメージしやすいといえるでしょう。また、家族などの身内についても使われることがあります。
誰かを獅子身中の虫と表現する場合、裏切り者というニュアンスで使うことが多いため、言われて気持ちの良い人はいないはずです。それなりに重い表現であるため、たいして悪いことをしていない人に対して、意味を正しく理解しないまま使うことのないようにしましょう。冗談半分でも、軽々しく使うことは避けるのが賢明です。
「礼儀知らず」「恩知らず」な会社の人物にも使う
獅子身中の虫は、組織を内部から壊す者という意味がありますが、そこまで深刻な意味でなくても、礼儀知らずや恩知らずといった批判を指して使うことがあります。一般的には、こちらでの使用することの方が多いかもしれません。
恩を受けているはずの組織に対して感謝の気持ちを示すこともなく、それどころか何らかの害をもたらす人物を例えます。組織を壊す裏切り者という意味よりは強くはありませんが、いずれにしてもネガティブな意味なので、安易に使うべきではないでしょう。
「獅子身中の虫」の例文・会話例
【例文】
・転職先の企業に、社内の機密事項を漏らした彼はさしずめ獅子身中の虫だ。
・獅子身中の虫のような社員が横領をしたせいで会社の社会的信用まで失われた。
・新商品の情報は彼女から流出した。これは獅子身中の虫だ。
・世話をかけた両親にまで迷惑をかけて、これでは獅子身中の虫といわれてもしかたがないだろう。
・目をかけてくれた先輩にその仕打ちとは、まるで獅子身中の虫だね。
【会話例】
「どうしてこうも社内のトラブルが続くんだろう。」
「一度、内部の調査をして獅子身中の虫を見つけ出した方がよいと思うよ。」
獅子身中の虫はこのように、会社に損害を与えたり、身内に迷惑をかけたりするようなケースで使います。裏切り者と言い換えても意味が通じる点がポイントです。
「獅子身中の虫」の類語と関連語
獅子身中の虫の類語や関連語には「恩を仇で返す」「唐獅子牡丹」があります。
類語である「恩を仇で返す」は、比較的よく使われる表現であり、口にしたことがある方も多いはずです。「唐獅子牡丹」は獅子の中の害虫の弱点をあらわし、関連語に当たる言葉です。ここからは、それぞれの意味について解説していきます。