「恩を仇で返す」
「恩を仇で返す(おんをあだでかえす)」は、人間関係で聞くことが多い言葉ですね。
恩返しをしないで、かえって恩人に害を与える。恩を仇で報ずる。「世話になった人に―・すようなことをする」⇔仇を恩で報いる。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「恩を仇で返す」とは、恩を受けて本来は感謝するところを、感謝するどころか害を与えるという意味。恩を与えた人物や周囲は、期待を裏切られ、無礼さに落胆するでしょう。「獅子身中の虫」は組織の中にいながら組織を壊す者を意味するので、似た意味をもっています。
「獅子身中の虫」の対義語
「獅子身中の虫」と反対の意味を持つ言葉には、「腹心」「縁の下の力持ち」などが挙げられます。どんな人物を指すのかチェックしてみてください。
腹心
「腹心(ふくしん)」の意味は以下の通りです。
1 腹と胸。また、転じて心の奥底。「―を打ち明ける」
2 《「詩経」周南・兔罝から》どんなことでも打ち明けて相談できること。また、その人。「―の部下」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
心の奥底にある気持ちを打ち明けられる人のことを、「腹心」と呼びます。主に、ビジネスシーンで使われる傾向がある言葉で、「腹心の部下」など、いざという時に頼りになる人が当てはまりますね。
縁の下の力持ち
「縁の下の力持ち」は、時々耳にする言葉ではないでしょうか? 意味を見ていきましょう。
他人のために陰で苦労、努力をすること、また、そのような人のたとえ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
組織や他人のために、陰で働く人のことを「縁の下の力持ち」と言います。こちらもどちらかというとビジネスシーンで用いられることが多く、社内で会社を支える人に対して「経理の〇〇さんは、我が社の縁の下の力持ちですね」などと褒め言葉として使われることも。陰で組織を裏切っている「獅子身中の虫」とは、真反対の言葉ですね。
「獅子身中の虫」の英語表現
「獅子身中の虫」は本来仏語なので、そのまま直訳しても意味が伝わりにくいでしょう。「獅子身中の虫」が持っている、「裏切り者」や「恩知らず」という意味を英訳するとわかりやすいですよ。
traitor
「traitor」は、「裏切り者」「反逆者」という意味。相手や国家などに対して反抗し、裏切るという意味合いがあります。組織での裏切り者を表す「獅子身中の虫」の言い換え表現として使いやすいのではないでしょうか?
(例文)
・He’s a traitor who cheated on his boss who took care of him for years.(彼は、長年面倒を見てくれた上司を騙した裏切り者だ)
ungrateful
「ungrateful」は、「恩知らず」「感謝をしない」という意味。「感謝する」という意味の「grateful」に、否定形の「un」がつくことで、「ありがたく思わない」といったニュアンスになります。「You ungrateful!(この恩知らず!)」と罵る時にも使われますね。
(例文)
・It’s ungrateful of you not to thank him for his hospitality.(お世話になった彼にお礼も言わないなんて恩知らずだよ)
最後に
「獅子身中の虫」は、組織内にいるのに害をもたらす者、恩を仇で返す者を批判する際に使われることわざです。真っ向から裏切り者と批判すると角が立つものですが、「獅子身中の虫」ということわざを使うことで遠回しに伝えることができます。
会社などの組織において、自分が「獅子身中の虫」などと言われるような事態は避けたいもの。周囲に感謝し、誠実に働くことを心がけたいですね。
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