「心太」とは?
「心太」は「ところてん」と読みます。ツルッとした喉越しで、夏によく食べられる「心太」。俳句では夏の季語として用いられます。そんな「心太」を辞書で調べてみると、以下のように記されています。
海藻のテングサを煮て寒天質をこし、型に流し込んで冷やし固めた食品。ところてん突きで突き出してヒモ状にし、酢醤油や三杯酢などをかけて食べる夏の味覚です。(<小学館 デジタル大辞泉>より)
■「心太」の名前の由来
なぜ、「心」と「太」で「ところてん」読むのでしょうか? 「ところてん」の名前の由来は諸説あります。「心太」の原材料はテングサという海藻。古くは、テングサのことを「心太(こころふと)」と呼ばれていました。そこから「こころふと→こころたい→こころてん→ところてん」と変化していったという説があります。
■「心太」と「寒天」の違いとは?
実は「心太」と「寒天」の原料は一緒なんです。「心太」と「寒天」の違いは、製法が異なるだけということをご存知ない方も多いのではないでしょうか。「心太」は、テングサを煮て溶かし、固めたもの。ミネラルを多く含み、海藻ならではの磯の香りを感じることができます。一方で「寒天」は、「心太」を凍らせて乾燥したもの。一度乾燥させているため、ミネラルは少なくなり、磯の香りを感じることはあまりありません。磯の香りが苦手な人には、「寒天」の方が食べやすいでしょう。
■「心太式」とは?
「心太式(ところてんしき)」とは、以下の通りです。
ところてん突きで突き出されるように押されて自然に先へ進むこと。また、そういう方式。(<小学館 デジタル大辞泉>より)
テングサを煮て作った寒天質の「心太」は、片方が網になっている天突きという道具に入れ、棒で押し出します。そうすると、「心太」は細長い麺状になります。そのことから、「心太式」は、自分の意思にかかわらず、後ろから押し出され、自然に前に進むことを表す言葉。「心太式に大学を卒業することができた」のように用います。努力や工夫なしに物事が進むことを表すことから、ネガティブな意味合いを含めて使うことが多いでしょう。また、言い換え表現には「エスカレータ式」や「順送り」が挙げられます。
「心太」は地域によって食べ方が違う?
「心太」は、おかずなのか、それともスイーツなのか。それは地域によって異なるのです。関東で最も多い「心太」の食べ方は、酢醤油や三杯酢または二杯酢をかける食べ方。関東では「心太」を、おかずとして認識している人が多いでしょう。
しかし、関西で「心太」は、黒蜜をかけて食べるのが主流。スイーツとして認識されています。なぜ関西では黒蜜をかけて食べるのか。それは、くずきりが黒糖で食べることから、食感が似ている「心太」も同じ食べ方になったという説が有力だとされています。関東から関西に移り住んで来た方は、「心太」の食べ方にびっくりする人が多いのだそうですよ。
■「心太」の食べ方を地域別にチェック
「心太」は、関東、関西以外にも、それぞれの地域によって少しずつ食べ方が違います。地域別に「心太」の食べ方をみてみましょう。
・東北地方… 酢醤油や三杯酢が主流。しかし、宮城では酢醤油に砂糖をかけて食べることもあります。
・中部地方… 酢醤油に、からしやみょうが、きゅうりなどと一緒に食べられることが多いようです。
・四国地方… だし汁やめんつゆで食べるのが主流。しょうがや胡麻をトッピングして食べられます。
・沖縄… 泡盛を造る過程でできる、もろみ酢や沖縄県産の黒糖をかけて食べられます。
■市販の「心太」は洗う?
市販の「心太」を器に出すと、汁気も一緒に出てきますよね。これは、保存用の薄い酢水。そのため、洗わずに食べても問題ありません。しかし、酢水の味が気になる方や、黒蜜をかけるなどしてデザートとして食べたい場合は、流水で洗うと良いでしょう。
「心太」は自宅でも作れる
「心太」はテングサが手に入れば、自宅でも作ることができます。美味しい「心太」の作り方をみていきましょう。
用意するものは以下の通りです。
【用意するもの】
深いめの鍋(大きいものが良いでしょう)
テングサ(乾燥したもの)
ザル
大きめのボウル
ガーゼもしくは厚手のクッキングペーパー
食品保存容器
1. テングサを洗う
テングサをよく水で揉み洗いしながら、ほぐします。
2. 水につけておく
鍋に洗ったテングサと水を入れて、しばらく水につけておきます(この水は、あとで使うので捨てないでください)。理想は半日から丸一日つけておくと良いでしょう。急ぐ場合は1時間程度でもOKです。
3. テングサを煮出す
水につけておいたテングサを火にかけて、煮出していきます。強火で約10分、沸騰したら、少し火をゆるめます。しばらくすると、鍋の中でテングサがぐるぐると回転し始めます。そうすると、吹きこぼれないように火を加減しながら、さらに20分ほど煮ましょう。