女には3つの顔、3つの時間がある…。今回の「女の時間割。」は、俳優、社外取締役、大学院生、そして小6のお子さんをもつ一児の母と、“四刀流”で奮闘中の酒井美紀さんにお話をうかがいました。
酒井美紀さんの「女の時間割。」
Vol.1「女」時間〜ひとりの女性として仕事に向き合う時間〜
Vol.2「妻」時間〜妻として夫に向き合う時間〜 ←この記事
Vol.3「母」時間〜母として子どもに向き合う時間〜
俳優
株式会社不二家 社外取締役
国際協力NGO ワールド・ビジョン・ジャパン 親善大使・43歳
酒井美紀さん
酒井美紀さんの「妻」時間をClose up 7:30@Kitchen
帰宅時間が遅い夫とのコミュニケーションは、休日朝のキッチンでとっています
「医師である夫の職業柄、彼の帰宅時間はどうしても遅くなりがちです。夕食どきには帰宅できないので朝の時間はけっこう重要。そんな流れもあって、夫が自然にキッチンに立ち始めてふたりで朝食準備をするようになりました。彼がコーヒーを煎れたら私がフライパンで何か焼くとか、分担はきっちり決めずにそのときの感じでつくっていくのが楽しいです」
「妻」時間 酒井美紀さんのとある日曜日
この連載では事前に“ある日の時間割”についてアンケートに回答してもらい、撮影シーンを構成しています。酒井さんの「妻」時間を紹介します。
7:30 起床、夫とキッチンで朝食づくり
その後、植物の水やり、カブト虫や金魚など生き物の世話、ラジオ体操
8:45 子どもが習い事へ出発、家事スタート
10:30 子ども帰宅、私は研究
12:00 昼食
13:00 家族でお出かけ (近場へ遊びに行く、映画、美術館、ヨット等)
18:00 夕食を食べに外へ出る
19:30 帰宅後、家族でおうち映画鑑賞
21:30 入浴
22:00 子どもが就寝してから、研究
24:00 ストレッチと深呼吸をしてから、就寝
教育方針についての会話から、夫婦の価値観の違いが見えるのが感慨深くて
俳優として28年、妻としては13年のキャリアをもつ酒井美紀さん。大学院病院に勤務するご主人との出会いは、語学留学時代の友人のつながりがきっかけだったとのこと。最近の夫婦の議題はもっぱら、成長期にある小学6年生の息子さんについての話題に終始するそう。
「夫とはボランティアのつながりで出会ったので、価値観の基本的なベースや人生で優先させたいものについては近いものがあると感じてきました。ところが、こと息子のことになると、少し様子が変わってくるんですね(笑)。テーマによっては夫婦で意見がぶつかるときもあって、特に教育についてはそんな傾向が強いです。
夫には“息子の人生はこうあって欲しい”という理想の像があるようなのです。だけれども、実際問題現実はそうもいかないと私個人は思っていて。私はどちらかというと息子がやりたいことに対して、制限をつけたくないタイプなんですね。一方で夫は、たとえばテレビを見る時間も含めて、自分で予定したことは1分でも遅れてはいけないくらいのきっちり派。「こうあってほしい」と理想を語る夫と「いや、そんなふうにはいかないでしょう」という現実主義の私がいる。そのたびにああ、こういう部分のスタンスは夫婦でずいぶん違うんだなぁと改めて再確認しています。間をとれたらバランスがとれていいのにと思っています。
ちなみに息子は、これまで夫に対して反抗的な態度はとらない子でした。でも今まさに反抗期にさしかかっていて、最近では自分の意見をぶつけてきたり歯向かって行くので、夫はそのことに密かにショックを感じているようなのです。「どう接していこうか」みたいなことも夫婦で話すようになりました。来年には中学生。そうしたら思春期に入ってくるので、性教育なども教えなくてはならないですよね。そういう意味では私にもとまどいがありますし、夫も自分の経験から「母親に言われたらいやなこともあるんだからね」と、今からクギを刺されていたりします」
この先の夫婦のビジョンで決まっているのは、老後のハワイ暮らしだけ(笑)
夫婦の話題やあり方は、ライフスタイルや環境の変化、子どもの成長につれて変わりゆくもの。コロナ禍において医療従事者として働き続けるご主人との関係性の様子についてもたずねてみると…。
「臨床医という仕事柄、医師に在宅勤務はできないので、夫の勤務状況だけで見れば大きな変化はありませんでした。ただ、企業においても同様の状況があるかと思うのですが、夫には不要不急の外出は回避せよという病院からの行動制限の規定がありました。うちでは昔から、週末は私は家で“ズボラかあちゃん”をしていいことになっていましたので、以前は土日の外食時間がとても楽しみでした。それが行動の自粛によって、家族の外食機会がなくなってしまったのです。
ところが、そうなると夫も週末の料理を手伝おうと、自主的に餃子を焼いたりおみそ汁をつくってくれるようになったんですよ。さらに、本人に行動制限がかかっているからか「食糧やストックの買い出しはOKでしょう?」と、家の外に出る口実を探しては薬局でトイレットペーパーを買って来るなど、日用品の買い出しもしてくれるようになりました。彼はもともとストックがないと安心できないタイプの人。いつの間にか、箱ティッシュがない、キッチンペーパーがないと、備品切れにいち早く気づいてはそれらを買ってきてくれる生活用品補充班になってくれました(笑)。これは非常にありがたい変化でしたね。
そんな私たち夫婦の将来のビジョンは、けっこう何も決まっていません。実際に行けるかどうかはわかりませんが、ずっと昔から老後はハワイで暮らしたいという、ゴールのビジョンだけは明確にあるのですが(笑)。けれど、そこに至るまでの手前のところはそんなに長いスパンでは見ていなくて。今はただ、息子の成長や変化に対応していくことが私たちの最大の関心事。当分は何か起こるたびに、夫婦で頭を寄せあっては、真剣にああだこうだとふたりで議論し合う様子が目に浮かびます」
酒井さんを撮影させていただいて改めて感じたのは、演じる人だけあって、こちらが設定を細かくお伝えするほど、カメラを前にしたときの表情が活き活きと輝いてくること。あたかも長身のご主人が酒井さんの横で朝食づくりを手伝っているかのような、素敵なショットを撮影することができました。次回、Vol.3の酒井さんの「母」時間にもご期待ください。
Profile
酒井美紀
さかい・みき/1978年、静岡県生まれ。演じることに憧れて1995年に17歳で女優デビュー。同年に映画『Love Letter』、『ひめゆりの塔』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞する。18歳でドラマ『白線流し』(フジテレビ系)シリーズにて主演。同年の映画『誘拐』で第21回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。25歳でアメリカ語学留学を経験。29歳のときに12年間アシスタントを務めた『世界ウルルン滞在記』(TBS系)を卒業し、国際協力NGOワールド・ビジョン・ジャパンの親善大使に就任する。30歳で大学院病院勤務の医師である夫と結婚。32歳で長男を出産。41歳で事務所を独立して湘南にオフィスを構える。同年、国際協力活動の知識を深めるために一念発起して、都内大学院の国際協力研究科へも進学。42歳で不二家のマスコットキャラクター・ペコちゃんの生誕70周年記念アンバサダーに就任し、翌年株式会社不二家 社外取締役に抜擢される。現在は俳優として幅広く活躍しながら、仕事と子育てと大学院の三刀流に邁進。山崎製パン「ダブルソフト」のCMキャラクターも継続中。
インスタグラム : @mikisakai.mua
撮影/眞板由起 スタイリスト/亀 恭子 ヘア&メーク/後藤真弓 構成/谷畑まゆみ
シャツ¥27,500(アルアバイル<トーマスメイソン>)
協力社リスト
アルアバイル 03-5739-3423