「自分の可能性を限定せず、ご縁を大事にしつつチャレンジしていく」退団後の仕事論
元花組娘役の芽吹幸奈さんからのバトンは、彩凪 翔(あやなぎ・しょう)さんへ。宝塚歌劇団在籍時は雪組一筋16年。華やかなスター性をまとい、美しい男役の姿で観客の目を奪っていた彩凪さん。2021年4月に宝塚歌劇団を退団したのちも、さまざまなジャンルで活躍の場を広げています。今回は、現役時代のこと、雪組のこと、今の仕事についてなど、ONのシーンについてのあれこれをうかがいました。
ご紹介いただいた芽吹幸奈さんは、昨年の七海ひろきさんのクリスマスディナーショーで演出されていますよね? 以前から交流はあったのですか?
彩凪さん(以下敬称略):現役時代は、2期上さんで組も違ったのでほぼ交流はなかったんです。でも、実は宝塚に住んでいた時にご近所さんで、お会いした時にご挨拶はしていました。とろみちゃん(芽吹さんの愛犬)にも触らせてもらったんですよ。
芽吹さんには、おしとやかで優しいイメージを持っていました。かい(七海)さんのクリスマスディナーショーでご一緒させていただいてから、芽吹さんの多才さにびっくりしています。作曲や振付もされているんですよ。クリスマスディナーショーでは演出もされて、本当にすごい。芝居込みの演出だったのですが、『ルパン三世』や『ME AND MY GIRL』のパートは芽吹さんが台本を書いてくださいました。曲も譜面に書き出して下さったり、なんでもできる方。そして、意外にも男前な性格で素敵なんです。『サンタが街にやってくる』のジャスティン・ビーバーバージョンのところではかなりイケイケな振りをつけて下さいました(笑)。知れば知るほど魅力的な方です。あとはどんな才能を持っていらっしゃるんだろうか、と。
彩凪翔さんの写真をもっと見る芽吹さんはかなりオタクなところも素敵ですよね(笑)。彩凪さんご自身は、宝塚歌劇団を退団されて約1年が経ちましたけれども、今の雪組はご覧になりましたか?
彩凪:はい、(トップコンビ就任の)お披露目公演(『CITY HUNTER/Fire Fever』)を観まして、次作(『夢介千両みやげ/Sensational!』)も観劇する予定です。いろいろ、感慨深いですね。下級生時代から一緒に頑張ってきた咲(彩風咲奈/あやかぜ・さきな さん)がトップスターになって。今はコロナの影響で楽屋にも行けず、お披露目公演の時に「初日おめでとう」と連絡だけしました。咲自身も(パレードの)羽根を背負って階段を降りる時に「(彩凪さんの)顔が浮かんだ」と言ってくれてうれしかったです。雪組の上級生が結構退団してしまいましたが、みんなすごく頑張っていてそれだけで胸が熱くなりました。
雪組92期ですと真那春人(まな・はると)さんが現役生でいらっしゃいますね。
彩凪:たまたま同期の笙乃茅桜(しょうの・ちお)も退団したので、急に真那をひとりにさせてしまいましたが、今もいろいろと連絡をしています。私が退団後に出演したコンサートや舞台の初日にも、みっくん(真那さん)が撮ってくれた雪組のみんなの動画を送ってきてくれました。「おめでとう〜!」って言ってくれて、とてもうれしかったです。今は客席と舞台でしか会うことはできないけど、そこでみんなの姿を見て「私も頑張ろう」と元気をもらっています。
同期つながりで、真風さん(真風涼帆/まかぜ・すずほ さん、宙組トップスター)は『NEVER SAY GOODBYE』をされていますね。
(※『NEVER SAY GOODBYE』は92期生の初舞台作品)
彩凪:宙組公演は宝塚公演の初日が延期されてしまいましたが、再開して落ち着いた時にゆりか(真風さん)に連絡しました。2019年のタカスぺ(『タカラヅカスペシャル』)でゆりかが『NEVER SAY GOODBYE』を歌ったんですよ。初舞台の時の曲を同期が舞台でひとりで歌っている姿を舞台袖で見ていて、「めっちゃ感動したわ!」って話していたのに、まさかその作品を主演で、しかも初舞台の時と同じ宙組でやるということは本当にすごいこと。
私は東京でみんなで見守りたいなと思います。初舞台の作品は特別なものなので、いろんな感情が湧いてきそうですね。現役中はゆりかが出る作品はほとんど観ていたし、ゆりかも観に来てくれていたんですよ。(以前宙組にいた)七海さんも『NEVER SAY GOODBYE』の記憶はすごくあるとおっしゃっていて、ディナーショーでも歌っていらしたし、私もコンサートで歌ったんですよ。だからより思い入れがあるのかもしれません。本当に素敵な作品なので楽しみです!
92期のみなさんは、結構キャラ濃いめですよね。
彩凪:濃いですね、個性的ですね(笑)。音楽学校の時は家族みたいに過ごしていて、同じ組になるともっと近い関係性になります。組が違うと会わないんですよね。ほぼずっと稽古場にいるので、廊下や更衣室ですれ違うくらい。公演が宝塚と東京で離れていたり、それぞれ地方公演に行ったりしていてタイミングが合わないことが多いのですが、お正月の拝賀式や年明けのパーティなど年に数回顔を合わせる程度なんです。
会っていない期間が長くても、何事もなかったかのように昔のままの関係性で話せるのは同期ならではですね。まるで家族みたいな関係が、(音楽学校時代の)2年間で培われるのがすごいなと思います。普通の同級生とはちょっと違うというか。それぞれの性格もわかっているし、いいところも悪いところも全部知っているから、お互いにカッコつけたり頑張らなくていいんです。芸名というより、本名でいられるから。私は中卒で、同期では一番年下なんですよ。だから、みんながいるととても落ち着きます(笑)。
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