役員報酬とは?
役員報酬は〝役員に支給される報酬〟で、従業員に支給される給与とは異なります。労働の対価として支給される給与とは税務上の取り扱いが違い、役員報酬は金額の決定時と変更時にいくつものルールが設けられています。
ここでは役員報酬と給与の違いを説明するとともに、そもそも役員とは何か、役員報酬の相場はどのくらいかについて解説します。
■給与との違い
役員報酬と給与は所得税の計算が同じであり、年末調整の対象となる点でも共通しています。しかし、労働の対価である給与は基本的に全額を経費に計上できるのに対し、役員報酬を経費に計上するには一定の条件があり、無条件には計上できません。
オーナー企業の役員は自分で報酬を決めることができるため、無条件に経費計上を認めれば決算の前に役員報酬を増やして法人税を減らすなどの調整ができてしまいます。
そのようなことを避けるため、原則として事業年度を通じて一定額にするなど、さまざまなルールが設けられているのです。また、賞与を支払う場合は事前に金額と支給時期を決め、税務署に届け出なければなりません。
■そもそも役員とは
役員報酬の対象となる役員とは、会社の経営に責任のある役職に就いている人のことです。法人の取締役、会計参与、監査役などがこれにあたります。
取締役は、業務執行の意思決定を行う者です。取締役会を設置する会社では構成メンバーである複数の取締役の中から、業務執行を担う代表取締役が専任されます。
会計参与は取締役とともに会社の計算書を作成する者です。会計参与になれるのは、税理士・公認会計士など、社内から独立した立場にある者に限られます。
監査役は、取締役と会計監査の業務執行を監査する役割があります。取締役や会計参与へ報告を要求し、職務に不正がないかを調査するのが仕事です。
■役員報酬の相場
役員報酬は、相場に合う金額であることが必要です。同業種、同規模の他社と比較して多すぎる役員報酬は、税務署から経費として認められない可能性があります。
国税庁では資本金ごとに調査した役員報酬の平均額を公表しています。あくまで平均ですが、その内容は以下のとおりです。
会社の設立当初はまだ実績がわからないため、低めに設定する会社が多い傾向とされます。2期目以降は業績や同規模の他社と比較し、ひとつの参考として金額を設定するのがよいでしょう。
出典:国税庁「令和2年分 民間給与実態統計調査」
※図表は編集部にて作成
経費にできる役員報酬の種類
役員報酬には、以下のような3つの種類があります。
・定期同額給与
・事前確定届出給与
・業績連動給与
定期同額給与とは、事前に金額を決めて毎月同じ額を支給するものです。1年ごとに変更することはできます。事前確定届出給与とは、役員に支給する賞与を指します。業績連動給与とは、業績に連動して決まる役員報酬です。それぞれの内容をさらに詳しく見てみましょう。
■定期同額給与
毎月同じ額に設定する報酬のことです。報酬額は事業年度開始から3ヵ月以内に決定し、年度中は毎月同じ額の報酬を支給することが必須です。
会社の経営が著しく悪化するなどの特別な事情がない限り、年度途中の金額変更はできません。年度ごとには変更ができ、その際は新しい事業年度が始まってから3ヵ月以内の決定が必要です。
■事前確定届出給与
役員への賞与は、原則として経費に計上できません。しかし、例外があり、新しい事業年度の前に支払いの時期と金額を税務署に届け出た場合は、事前確定届出給与として支給することができます。
事前確定届出給与を経費に計上するには、届出書に記載した対象者と支給金額、支給時期に沿った支給の実施が必要です。届出書の提出期限は、株主総会などの決議した日から1ヵ月以内、もしくは事業年度の開始から4ヵ月以内のうち、いずれか早い日までとなります。
■業績連動給与
業務に連動して、報酬を支給できる制度です。有価証券報告書に記載されている指標をもとに算定されるため、現実的に採用できるのは有価証券報告書を提出しているような上場企業に限られます。
役員報酬を決める方法
役員報酬を決めるには、まず株主総会で金額の総枠を決議します。そのあと取締役会を開催して決議するという流れです。定期同額給与の決定は、事業の開始日から3ヵ月以内に行わなければなりません。
また、役員報酬を経費に計上するためには、必ず守るべき点があります。ここでは、役員報酬を決定する流れと、役員報酬を経費に計上するための注意点についてご紹介します。
■報酬決定までの流れ
役員報酬の決定は、まず株主総会を開催して決議し、取締役会での決議を経て決定するのが一連の流れです。定期同額給与の場合は事業開始日から3ヵ月以内に株主総会を開き、役員報酬の総枠を決定します。決定は役員報酬の総枠で、個別の支給額ではありません。
総枠につき、総会で2分の1以上の賛成票が得られれば決定となります。決議事項を議事録に残し、取締役会で役員への個別の支給額を決定します。こちらも2分の1以上の賛成が得られれば可決となり、議事録などを作成し、役員報酬が決定するという流れです。