非認知能力を伸ばすために料理が適しているのはなぜ?
非認知能力とは、積極性や粘り強さ、リーダーシップやモチベーションの高さといった数値では図りにくい能力、生きていくのに必要な能力のこと。数値化できない能力だからこそ、どうやって伸ばせばいいのか分からない部分もありますよね。でも、リトルシェフクッキング(株)代表取締役 武田昌美さんによると、この能力を伸ばすのに私達の身近にある「料理」が役立つそうです。
「料理をつくるために、どういう手順でつくるか考えたり、新しい方法を試すことで脳に刺激を与えることができます。また、料理だと子供が失敗を怖がらずに、『失敗しても大丈夫』という安心感を感じることができます。なぜなら、料理はたとえ失敗したとしても、いくらでも取り返すことができるからです。更に失敗したことでもっといいレシピが生まれることも多くあります。レッスンでは『失敗は成功の1歩前』を合言葉にしており、子供達が果敢に挑戦する環境をつくっています。卵を割る前は特に緊張するので、たくさんある卵を見せて『ここに30個も卵があるから、失敗してもぜーんぜん大丈夫! だってこんなにたくさんあるんだもん』と言うと、子供達はうれしそうに大笑いして、リラックスした状態で挑むことができます」(リトルシェフクッキング(株)代表取締役 武田昌美さん 以下同)
最近では、男の子が料理を習うことも増えているそうですね。
「お料理は性別を問わず、子供みんなが目を輝かせて楽しめるものです。子供の好きなものをありのまま認め、固定概念を持たずに通わせてくださる親御様が増えたからだと思います」
料理はプログラミング的思考力の習得としても効果的
「料理はこれから何をつくるのか、明確なゴールをもって始めることがほとんどです。つまり、子供でも明確なゴール設定をした状態で作業を開始することができます。そのゴールを目ざして、目の前にある、あらゆる材料をひとつずつ順序よく混ぜたり、焼いていくと、料理が完成する過程を全て体験することができます。料理を通じて、幼児期からゴール設定や、先を見越した準備という考え方を習得することができるのです。そのため、プログラミング的思考力の習得にも効果的であると言われています」
「リトルシェフクッキング」の教育改革を見据えたレッスンとは?
「リトルシェフクッキング」では、一般的な料理教室とは少し違うレッスンを行なっているそうですね。
「単なる料理教室ではなく、料理を真ん中に据えて学びを提供する幼児教室である点が特徴的です。レッスンの前には、『ハカセジカン』というさまざまなリベラルアーツ要素を含んだスライドを見て、皆で考えながら学ぶ時間をつくっています。たとえば、肉まんをつくるときは、世界地図から始まり、中国と日本の近さを発見し、更に中国の有名な遺産や動物、食べ物を学び、中国に興味を持った状態で料理を開始します。苺を使ったレシピのときは、苺は果物なのか、それとも野菜なのか、果物の定義(木になる)と野菜の定義(木にはならない)を確認した上で話し合うなど、一つの正解を講師が一方的に伝えるのではなく、料理から派生する学びを、子供達が自ら学びたくなる仕組みをつくってレッスンを進めています」
本人が興味をもったときが始めどき!大切なのは子供に「任せる」こと
料理が子供の成長に大切なことがよくわかりました!何歳くらいから始めるとよいのでしょうか?
「本人がやりたいと興味をもったときが始めどきです。我が家の子供達は、長女が2歳、長男が1歳10ヶ月のときにそれぞれ初めて卵を割りました」
家で料理をするときは、一緒につくるより子供に任せた方がいいでしょうか? 心配で、つい手を出してしまいそうです!
「危険がない限り、任せてあげたほうが子供は喜びます。ただ、そうは言っても初めからひとりでできるわけではないので、1パートずつ任せる箇所をつくっていき、最終的には全部できるようになったらいいね、と言う具合でしょうか。
しかし、この『任せる』と言うこと、そんなに簡単ではありません。親にとって試練のときなのが、子供料理における『任せる』と言う時間です。子供が作業をすると、時間が普段の倍以上かかるし、キッチンは汚れるし、ついでに見栄えもイマイチ…そんな現状を見たとき、大人はつい手を出したくなってしまいます。更に、せっかく子供が料理をする時間をつくったんだから、写真だって撮りたいし、SNSにだってあげたくなります。ここで子供が喜ぶ『任せる』と親の気持ちが格闘します。なので、『任せる』ことが、一筋縄ではいかないのが子供料理の第一歩目だと思ってください」
イライラしないコツは、子供の手ではなく目を見ること
「子供に料理を任せるとき、ついイライラしてしまうという人は、料理をしているときの子供の目を見てください。手元を見るとどうしても口出ししてしまいそうになるので、真剣な目を見るといいと思います。それでもイライラが治らないときは、遠くをぼーっと眺めて心を沈めてください(笑)」
子供にとって身近で興味をもちやすい料理が、非認知能力やプログラミング的思考の発達に役立つなんて意外ですよね。家で実践できることもあるので、自宅で試してみて子供が興味をもったらレッスンに通うというのもよいかもしれません。