近年レストランや酒店でよく見かけるようになった「ナチュールワイン」。なんとなくオーガニックで健康に良いイメージがありますが、どのようなワインなのでしょうか? 本記事では、ワインの基礎知識について、京都で100年以上続く老舗ワイン商「ワイングロッサリー」の3代目・吉田まさきこさんに教えてもらいます。後半では、吉田さんおすすめのナチュールワインの紹介も。ワインに関する基礎知識を身につけ、あなた好みのナチュールワインを見つける手立にしていただけたら幸いです。
ナチュールワインとは?
ナチュールワインは、英語表記でナチュラルワイン(Natural Wine)といわれています(以下、ナチュラルワインと表記)。フランス語だと、ヴァン・ナチュール(Vin Naturel)。日本では自然派ワイン、ビオワインなどと呼ばれることが多いですね。これらは言語の違いで、一般的には同じワインを指しています。それでは、具体的にどのようなワインのことを、ナチュラルワインと呼ぶのでしょうか? 結論から言うと、ナチュラルワインの明確な定義はありません。
ただし、共通認識として「農薬や化学肥料を使わない農法で育てられたブドウを使用していること」「醸造の工程で酸化防止剤を使わない(もしくは最小限しか使用しない)」「人的介入を極力行わずに、ブドウを栽培し、醸造されたワイン」などが、ナチュラルワインと呼ばれるワインの特徴として挙げられます。
ナチュラルワインの特徴
ブドウ栽培や醸造法にこだわった、ナチュラルワインならではの特徴もいくつか見られます。ここでは主な4つの特徴について見ていきましょう。
生産者のこだわりや個性があらわれている
自然を重視した農法や醸造方法で作られているブドウ本来の美味しさや、生産者のこだわりや個性がワインに表現されていることも、特徴のひとつ。
工場規模のような大量生産ではなく、小規模でも家族経営のような手の届く範囲でブドウ栽培と醸造を行っている生産者も多く、大切に育てたブドウの美味しさをそのままワインに反映させたいという思いが詰まっているのです。しかし、ナチュラルワインでなくても、土地の気候や土づくりにこだわり、規模を問わず精魂込めたワイン造りをしている生産者も多くいることは、忘れてはいけないポイント。
ボトルに濁りや底に澱があることも
ナチュラルワインの瓶の底には澱(おり)やにごりが見られることも。一見「悪くなっているのでは?」と心配になるかもしれませんが、品質に問題はありません。無清澄もしくは軽いフィルターで濾過され瓶詰めされると濁ったり、微細な成分が澱となって底面に残ることがあります。
渋みが少ない
赤ワインは通常、ブドウ果汁を皮ごと長時間漬けて醸造するため、渋みも少し出てきます。赤ワイン特有のえぐみや苦味を楽しめる人もいますが、人によっては飲みづらさを感じる原因になることも。
一方、ナチュラルワインに使用されるブドウは無農薬で栽培され、また漬け込む期間も短くすることが多いため、安心かつ渋みを感じにくいと言われています。そのことからナチュラルワインのほうが飲みやすいと感じる人も多いよう。
独特の香りがある
初めて飲む人は、その独特な香りに戸惑うこともあるかも。煮た豆、硫黄などといった香りを感じることも。この独特な香りは日本ではビオ臭と呼ばれ、お漬物のような酸味のある匂いもたまにあります。醸造中の酵母による作用が原因とされていますが、近年では改善され、この香りが抑えられた綺麗なスタイルのナチュラルワインが増えてきている傾向にあるようです。
ナチュラルワインは二日酔いしない?
ナチュラルワインは二日酔いしないと言われることもあるようですが、科学的な根拠は全くありません。中には酸化防止剤を極力使用しないから、飲んだ翌日に頭が痛くなったりだるくならないというイメージもあるようですが、科学的には立証されていません。
また、生産者の中には、品質を維持するため必要最低限の酸化防止剤を使用する場合も。酸化防止剤を使用していないワインでも、醸造中に二酸化硫黄が自然発生することがあるので、「酸化防止剤含有」の表記がされることも多いのです。
ナチュラルワインの飲み方と保存方法
ワインを購入するときに気になるのが、飲み方や保存方法ではないでしょうか? ナチュラルワインを飲むためのきまりごとなどは特にありませんが、より美味しく飲むためのポイントがいくつかあります。
飲み方
ナチュラルワインには、ワインが濁っていたり底に澱(おり)が溜まっているのが見られることもあります。これは、ブドウ本来の成分を残すため、あえてろ過をしない製法によるもの。澱や濁りにはブドウの旨みが凝縮されています。
澱や濁りは舌がざらつき、苦みも感じることもあるので、気になる場合はボトルを数日間立てておき、澱が底に沈んでから飲みましょう。グラスに注ぐときは、澱が舞い上がらないよう静かに注ぐといいですね。
保存方法
ナチュラルワインを購入後は、14℃以下の涼しくて、振動がなく、直射日光が当たらない場所で保管しましょう。温度変化の少ないワインセラーや冷蔵庫の野菜室だとより安心ですが、冷蔵庫に長期間置くのはオススメできません。
製法上、ワインを瓶詰めした後も酵母は生きているので、温度の高い場所や振動が多い場所に置くと二次発酵が始まってしまい味わいが変化してしまう可能性も。本来の味わいを楽しむためにも、開封後はなるべく早めに飲むことをおすすめします。
適温はある?
ナチュラルワインには特別な適温があるわけではないため、普通のワインと同じように考えて飲めば問題ありません。スパークリングワインは6度〜8度、白ワインは8度〜14度、赤ワインは14度〜20度くらいが温度の目安です。
おすすめのナチュラルワイン
美味しい飲み方がわかったところで、おすすめのナチュラルワインの銘柄を京都で100年以上続く老舗ワイン商「ワイングロッサリー」の3代目・吉田まさきこさんにお聞きしました。赤ワイン、白ワインの銘柄の中からそれぞれ紹介します。
ヴァンダル ゴンゾー コンバット ルージュ 2021
ワインメーカーの詳細もシークレットという一風変わった生産者で、マールボローで生まれたブドウを自然酵母で発酵させ、自由な発想とナチュラルなアプローチで、挑戦的なワイン造りを追求しています。まずは抜栓し、その香りと味わいを自身の体で体感して欲しいワインです。
新たな可能性を感じさせる型破りなブレンド。甘みとスパイシーさを伴うラズベリーやチェリーのフレーバーが感じられ、滑らかな口当たりにジューシーな果実味が広がります。型破りなブレンドから生まれる見事な調和は、ワインの新たな可能性を感じさせる革新的な味わいです。
ユルチッチ モン・ブラン 2021
製法的にはオレンジワインのカテゴリーですが、見た目は白ワインで、生産者も「僕の白」という名前をつけているので、白ワイン扱いでご紹介。リンゴや熟した洋梨など、果実の旨味がたっぷりな味わいで、優しく華やかな風味を合わせ持った、とても美しい味わいです。
おすすめのおつまみ
健康志向への高まりによって注目を集めている、ナチュラルワイン。ナチュラルワインはクラシックなワインに比べると、自由なスタイルで気軽に飲めることが魅力。おうちで楽しむときには、ナチュラルワインに合ったヘルシーなおつまみを選んでみては?
ヴィーガンチーズ
ヴィーガンチーズとは、豆類から作られた植物性のチーズのこと。肉や魚や乳製品を食べないヴィーガンの人でも食べられます。フランスパンやリッツの上に乗せて、ディルなどのハーブを添えればオシャレな一品に。チェダーチーズやクリームチーズタイプなど、近年では種類も増えてきたのでお好みのものを選んでみましょう。
野菜のオーブン焼き
ワインにヘルシーな一品を合わせたいなら、野菜をたっぷり使ったオーブン焼きもおすすめ。ナスやパプリカ、ズッキーニ、カボチャなどカラフルな野菜を選べばおもてなし料理としても活躍するでしょう。作り方は野菜を耐熱皿に乗せて、オリーブオイルや塩で味付けし、オーブンで焼くだけ。お好みでニンニクや粒胡椒をトッピングすると美味しいですね。
最後に
今回は、「ナチュラルワイン」の特徴や飲み方、保存方法などをひとつずつ紹介してきましたが、がいかがでしたか?
ぶどう本来の美味しさをワインにしたいという生産者の思いが詰まったナチュラルワイン。無農薬や無添加、自然農法でぶどうを栽培することなど様々な特徴はありますが、法的に定められた定義は今のところありません。健康志向やサスティナブルな取り組みにスポットライトが当たる昨今、これからますます注目されていくことでしょう。本記事で紹介したヘルシーレシピと合わせて、ナチュラルにワインを楽しんでみてくださいね。
監修
吉田まさきこ
京都で100年以上続く老舗ワイン商「ワイングロッサリー」の3代目。
J.S.A.認定ソムリエ
シャンパーニュ騎士団公認 オフィシエ(将校)
アルザスワイン騎士団公認 シュヴァリエ(騎士)
アカデミー・デュ・ヴァン講師
ヨーロッパを中心に世界各地のワイン生産地を幾度も訪問し、ワインを学ぶ。それら一流の生産者たちとワインイベントを開催し、交流のコーディネイトを行なう。ショップでは世界各地の地域のワインを多種取り扱うが、特にブルゴーニュ、シャンパーニュ、アルザスでの滞在が長いためこの地域のワインは日本有数の品揃えを持つ。初級~専門分野までのワインセミナーも多く実施し、中でも京都の持つ和の食文化とワインのマリアージュを強みとしている。
構成・執筆/京都メディアライン
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