ビジネスの現場では「適正」と「適性」という言葉を使う場面が多々あります。しかし、その違いを明確に説明できる人は意外と少ないかもしれません。似たような言葉ですが、使い分けを間違えると誤解を招くこともあるでしょう。この記事では、適正と適性の基本的な違いをわかりやすく整理し、職場での実践に役立つ視点を紹介します。
「適正」と「適性」の違いを理解しよう
ここでは、「適正」と「適性」、それぞれの定義と違いを解説します。

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「適正」とは何か?
まずは「適正」と「適性」の違いを明確に理解することが大切です。それぞれの意味を辞書で確認してみましょう。「適正」の意味から確認します。
てき‐せい【適正】
[名・形動]適当で正しいこと。また、そのさま。「―な運用」「―な価格」
[派生]てきせいさ[名]
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
「適正」とは、物事を判断・運用する際に「適切で正しい状態」を指します。例えば「適正な価格」とは、過度に高すぎたり安すぎたりせず、妥当で公正な価格を意味。「適正な運用」と言った場合も、無理や偏りがなく、理にかなった方法で行われていることを示します。
「適性」とは何か?
続いて「適性」の意味も確認しましょう。
てき‐せい【適性】
性格や性質が、その物事に適していること。また、その性格や性質。「―を見る」「―に欠ける」
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
適性とは、人が持つ性格や能力が、ある特定の物事に対して「どれだけ向いているか」を示します。例えば、「適性を見る」という表現は、その人の性格や能力が仕事や課題にどの程度合っているかを判断する意味です。
適正と適性の違いを簡単に解説
● 適正は、「物事が適切で正しいかどうか」に着目した言葉です。公正さや妥当性を示す際に使われます。
● 適性は、「人の性質や能力が特定の物事にどれだけ合っているか」を示す言葉です。
これらの言葉を正しく理解し、状況に応じた適切な使い分けを意識しましょう。
「適性」を見極めて適材適所を実現する
適性を見極めることは、組織を円滑に運営するための大切なポイントです。一人一人の特性を理解し、特性に応じた役割をお願いすることで、仕事の質や成果が向上し、個々の成長も促されますよ。

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適性を見極めるための自己分析法
自己分析を行う際には、自分の得意分野や好きな業務、成果を上げやすい環境を意識してみるといいでしょう。さらに適性診断ツールを活用すると、自分では気づけない特性を客観的に把握する助けになります。
継続的に自己分析を行うことで、適性が変化するタイミングを見逃さずに対応できますよ。
部下の適性を見極めるための方法
部下の適性を把握するには、業務の進行状況や成果だけでなく、どのような業務に対して前向きに取り組んでいるかを観察することが大切です。さらに、部下と直接対話し、意見やフィードバックを積極的に求めることで、本人も気づいていない適性を引き出せる可能性があるでしょう。適性を見極める際は、業績評価にとどまらず、長所やモチベーションの源泉を見極める視点が求められます。
適材適所を実現するためのポイント
適材適所とは、業務を割り振ることではなく、個々の能力が発揮しやすい環境を整えることを意味します。役割を任せる際には、「本人が納得しているか」「挑戦できる要素があるか」を意識することが肝要です。
また、適材適所の実現には、適性に応じた柔軟な配置転換を行う姿勢も大切。組織の状況や部下の成長に応じて適性を再評価し、必要な配置変更を検討しましょう。
適正・適性を使い分ける際の注意点
「適正」と「適性」は似た言葉ですが、意味が異なるため使い分けが必要です。適切に使うことで、誤解を避け、より明確で信頼性のあるコミュニケーションが可能になります。
ビジネス文書における適正・適性の使い分け
「適正」は、基準やルールに対する妥当性を示します。例えば、「適正な価格」「適正な対応」という表現がよく使われます。
一方で「適性」は、その人の能力や向き不向きを指し、「適性を生かす」「適性検査」といった使い方をします。混同しやすい言葉ですが、文脈を意識して使い分けましょう。