「多岐にわたる」とはどのような意味の言葉?
「多岐」とは、道筋がいくつにも分かれている様子や、物事が多方面に分かれている様子を指す言葉です。名詞としても使われますが、「多岐な」「多岐だ」のように形容動詞としても使われます。
また、動詞として使うときは「わたる」をつなげて「多岐にわたる」と表現することが一般的です。
たき【多岐】 名・形動
道筋がいくつにも分かれていること。物事が多方面に分かれていること。また、そのさま。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「多岐にわたる」を例文で解説
「多岐にわたる」は、次のように使います。
・試験問題には多岐にわたる分野が含まれていた。
・彼は多岐にわたる話題を、次から次へと面白く話した。
・機械を組み立てるには、多岐にわたる知識が必要です。
そもそも多岐の「岐」とは?
多岐の「岐」は、法令や公用文書、一般社会生活における漢字使用の目安を示す「常用漢字表」に記載されている2,136の漢字の一つです。常用漢字表では訓読みは紹介されておらず、「キ」の音読みのみ記載されています。
「岐」には、本道から枝分かれした道や、行き方が幾筋にも分かれることといった意味があります。多岐以外にも、岐路(きろ)や分岐(ぶんき)といった熟語、また、隠岐(おき)や岐阜(ぎふ)などの地名にも使われる漢字です。
「わたる」の漢字は「渡る」「亘る」?
「多岐にわたる」の「わたる」は、「亘る」が正しいとされています。「亘る」には「端から端までおよぶ」の意味があり、道筋や多方面の物事が広がっている様子を示します。
ただし、「亘る」は、常用漢字ではありません。そのため、漢字で表記しても問題はありませんが、法令や公用文書などでは平仮名で表記されます。
「多岐にわたる」と類似した意味の表現
「多岐にわたる」のように、物事の方法や種類が豊富な様子を示す言葉は多数あります。たとえば、次の表現はいずれも「多岐にわたる」と類似した意味を持つと考えられます。
それぞれの意味や「多岐にわたる」とのニュアンスの違いについて、例文を通して見ていきましょう。
多種多様な
「多種多様な」とは、種類が多くさまざまであることや、そのような様子のことです。
・人の好みは多種多様だから、自分なら選ばないデザインや色も含めて商品化するほうがよい。
・学校には多種多様なバックグラウンドを持つ子どもたちが集まっている。
「多岐にわたる」は枝道や物事が分かれている様子ですが、「多種多様な」は種類が多いことのみを指すため、分かれているニュアンスはありません。
単に種類が多いときは「多種多様な」、分野や知識のように多さだけでなく広さも表現したいときは「多岐にわたる」が適しているかもしれません。
バラエティ豊かな、バラエティに富んだ
「バラエティ(variety)」とは、変化があることや多様性を指す英語由来の言葉です。「多様な」の意味で、「バラエティ豊かな」や「バラエティに富んだ」と使います。
・バラエティ豊かな食事をすることで、栄養バランスが取りやすくなる。
・彼女のアイデアはバラエティに富んだもので、どれ一つとして似たものがなかった。
「バラエティ豊かな」や「バラエティに富んだ」は種類の多さだけでなく、変化や多様性のある様子を示す言葉です。「多岐にわたる」も種類が豊富な様子を示す言葉ですが、変化のニュアンスはない点が異なります。