浴衣の構造やたたむ前の準備を知ることで、作業が簡単で美しく仕上がります。
Summary
- たたむ前の準備や汚れ・シワのチェックが長持ちのポイントです。
- 男女や浴衣と着物の違いを知ると、たたみ方の理解が深まります。
- 適切な保管方法で、来年も美しい浴衣姿を楽しみましょう。
「浴衣をたたむのって、難しそう…」と思っていませんか? いくつかのポイントを押さえておけば、意外と簡単にたたむことができますよ。この記事では、初心者でも迷わず実践できる浴衣のたたみ方を、写真付きで丁寧に解説します。保管の仕方なども紹介しているので、ぜひチェックしてみてくださいね。
初心者でも安心! 浴衣をたたむ前に知っておきたい基本知識
浴衣のたたみ方に入る前に、基本的な構造や準備の仕方を押さえておくと、後の作業がスムーズになりますよ。男女の浴衣の仕様の違いや、浴衣をたたむ前にするといいことなどを一緒に見ていきましょう。
浴衣と着物の違いを理解しておこう
浴衣と着物は見た目が似ていますが、仕立てや用途に違いがあります。浴衣は、裏地のない単衣で、主にお祭りや花火大会、友人とのお出かけなど、夏のカジュアルシーンで親しまれています。素材は綿、綿麻、吸水速乾性に優れたポリエステルの浴衣もありますよ。
一方、着物は結婚式や卒業式などの式典やパーティーなどでも用いられるフォーマルの着物や、カジュアル着としての小紋や紬など、裏地付きの袷(あわせ)や夏場に着る薄物(うすもの)など、季節や格に応じてさまざまな種類が存在します。
着物の場合は、肌襦袢の上に長襦袢を着て、それから着物を纏いますが、浴衣は長襦袢を着用せず、肌着の上から直接浴衣を着ます。また、着物では足袋と草履の組み合わせが基本ですが、浴衣は裸足で下駄を履くのも違いの一つといえるでしょう。
男女で異なる浴衣の構造
男女の浴衣には、いくつか異なる点があります。女性の浴衣は身丈(首の付け根部分~裾まで)が長く、お腹部分の生地を折り返しておはしょりを作って着るのに対して、男性の浴衣は身丈が短くおはしょりはありません。そのため、男性の浴衣は身長にぴったりあったサイズの浴衣を選ぶことで、女性の浴衣よりも簡単に着ることができますよ。
また女性が浴衣を着るときには、あえて衿を抜いてうなじを見せる方がほんのり色っぽく、涼しげな印象に。反対に、男性は衿を抜かないのが基本のスタイルです。
浴衣をたたむ前にやるべきこと(シワ・帯・小物の処理)
たたみ始める前に行なう下準備は、浴衣の保存状態や次回着たときの仕上がりに大きく影響します。浴衣を脱ぐ前に、帯や腰ひも、伊達締めなどの付属品をすべて取り外しましょう。ひも類は、汗をかいて湿っていることが多いため、ハンガーなどにかけて一晩乾かしておくことをお勧めします。
次に浴衣を脱いで、ハンガーにかけてシミや汚れがないかチェックします。特に見て欲しいのは、衿の裏や前身頃(まえみごろ)の部分。ファンデーションや日焼け止めが衿の裏についていたり、衿元や袖、前身頃に食べこぼしのシミなどがついていることも! また雨の日には、泥が飛んで裾部分が汚れている可能性もあるのでチェックしたいですね。
汚れに気づかずにたたんでしまうと、一年後夏祭りの日に着ようと思って浴衣を広げたときに汚れが染み付いていた… なんてことになりかねません。汚れの種類によって汚れの落とし方も異なるため、心配な人は着物専門のクリーニング店に依頼してみてください。
浴衣は広げた状態で、縫い目や布の流れに沿って手のひらを滑らせるようにしながら、しわを取っていきます。浴衣も小物類と同じく、日陰に干して湿気を飛ばしてからたたみましょう。

写真でわかる! 基本の浴衣のたたみ方【男女共通】
一見難しそうに見える浴衣のたたみ方ですが、実は縫い目に沿ってたたむだけで簡単にたたむことができますよ。ここでは、浴衣の基本的なたたみ方、「本畳み(ほんだたみ)」を紹介します。
この方法でたたむと、市販のたとう紙にぴったりと収まるので、収納する際に便利ですよ。手でアイロンをかけるように、生地のしわを伸ばしながら折りたたむと綺麗に仕上がります。
浴衣のたたみ方の手順
1.体の左側に衿がくるように、浴衣を広げる
2.右の脇縫い部分で生地を折ります
3.下前のおくみ線を手前に折り返す
4.一番向こう側にある衿(上前の衿)、脇縫い、おくみを2にピッタリと合わせる
5.左手で衿を谷折りにして、右手で衿先を持ち、ピンと張って生地を合わせる
6.左の脇縫い線と右の脇縫い線を合わせて浴衣をたたむ
7.上にある袖をたたむ
8.衿先の下から浴衣を半分に折る(衿先に折り目がつくと、着たときに折りじわが目立つため、衿先の下からたたむ)
9.浴衣を裏返す。反対側の袖をたたむ
裾部分は、浴衣の丈や収納スペースに応じて、二つ折りまたは三つ折りにすると収まりがよくなります。
麻の入った生地の浴衣や白地で柄の少ない浴衣は、しわが目立ちやすい傾向があるのでより丁寧にたたむといいですね。
縫い目を基準に揃える方法
きれいにたたむ際の目安になるのが、背中の中心に通っている縫い目(背縫い)です。この縫い目を中心に据え、浴衣の左右を対象に整えることで、たたみ終わったあとのバランスも取りやすくなります。
左右の袖と身頃をたたむ順番
基本的には左の袖をたたんでから、身頃、右袖の順にたたみます。折り終えたら、手のひら全体で生地をそっと押さえて、空気を抜くようにするとしわや型崩れを防ぐことができますよ。
浴衣の保管の仕方
浴衣をたたみ終えたら、着物専用のたとう紙につつんでください。たとう紙は主に和紙が使われているため、適度に湿気を吸い、カビやチリ・ホコリから浴衣を守ってくれます。虫に大事な浴衣を食われないように、着物専用の防虫剤を入れると安心です。
タンスや衣装ケースにしまい、年に3回ほどよく晴れた日にハンガーにかけて虫干ししてあげると、虫食いやカビから浴衣を守ることができるでしょう。
最後に
- 浴衣をたたむ前に、汚れやシワをしっかり確認しましょう。
- 本畳みは縫い目を基準に整えるのがきれいに仕上げるコツです。
- 定期的な虫干しも、カビや虫食い防止に効果的です。
浴衣は折り目に従ってたたむことで、簡単に綺麗にたたむことができます。たたむ前に汚れがないかどうかチェックして、適切にケアをすればより綺麗な状態で長く着ることができると思いますよ。たたみ方を覚えて、浴衣との付き合いがもっと身近になれば幸いです。
画像/鈴木菜々絵(京都メディアライン)

監修
きものトータルクリニック吉本
吉本は、創業80余年の歴史を持つ、京都発祥の染み抜き・お直し専門店です。京都・日本橋・南青山・金沢・高松・鹿児島に店舗を構えています。着物をはじめ、高級衣類や鞄などのクリーニング・染み抜きや修復を行なっております。他店で難しいと言われた品も、最高峰の修復技術でお直しします。 →HPはこちら
執筆/鈴木菜々絵(京都メディアライン)
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