story1 図書館通いで1日1冊読破。絵より文字が想像をふくらませる
Profile
はるか(仮名) 41歳
職業/Webサービス会社・人事
住まい/埼玉県川口市の賃貸マンションで夫・子ども2人(3歳・0歳)と暮らす
校庭より図書館が好きな子どもでした
「子どものころ、うちの子ども部屋の壁はすべて本棚でした。父と母が学生のころから買い集めた本を大事にとってあって、びっしりと。まだ私には難しかったけれど、その本棚の一部に子ども用コーナーがつくってありました。絵本、童話、図鑑…、いろいろ。覚えているのは、3~4歳の頃に読んだ、いわむらかずおさんの絵本『14ひきの~』シリーズ。今はシリーズで12巻まで出ていますが、そのころは確か、5~6巻までだったかな。動物たちの視点が面白くて、妹と一緒に夢中になったことを覚えています」
絵本からスタートして、童話や小説など、次々と読むようになったはるかだが、いちばん夢中になるのが“文字がいっぱいある本”だった。その傾向は、小学生になってますます強くなっていく。そのときはまだ、自分でも理由はわからなかったが…。
「休み時間になるとすぐに図書館に行って、新しい本を借りる。いつしかそれが習慣になっていました。みんなが外で遊ぶ昼休みも、ほんとはずっと本を読んでいたかったくらい。だから、外に出なくていい雨の日が楽しみだった。すっと図書館にいられるから。雨つぶが当たる窓のすぐ横で、少し湿気のある本をめくるのが大好きでした。そして、帰り道も歩きながら読んで、家についたらすぐまた読んで…」
図書館で借りられるのが1日1冊でなかったら、もっと読んでいたかもしれない。なぜなら、薄い本や文字が少ない本だとすぐに読み終わってしまうから。たぶんそのころのはるかは、小学生にしては読むスピードがものすごく早かった。特にテクニックがあるわけじゃない。物語の続きを早く知りたくて、楽しくて、ワクワクが止まらないだけ。“文字がいっぱいある本”が好きなのは、そんな好奇心からだった。
漫画は禁止、読書感想文は嫌い
小学生から中学生にかけてのはるかは、探偵ものや文学シリーズなどで、図書館の貸し出しカードを埋めていった。シャーロックホームズやドリトル先生などのシリーズもの、さらに目に止まった海外文学シリーズを次々に読破していったが、子ども向けにわかりやすく書かれたものより、大人向けのほうが自分を満たしてくれた。
「ふだんの生活では体験できない、海外の暮らし、食べ物、自然…、それを文字から想像するのが、とにかく楽しかった。そこに、絵はいらないんです。
同級生が読んでいた漫画は、うちでは禁止でした。親は買ってくれないし、お小遣いもないし。友達の家に行ったときに借りて読んだくらいで、それほどハマりませんでした。
中学生になってお小遣いをもらって買うようになったのは、文庫本でした。たった数百円でたくさん文字が入ってる本が読めるんですから! その頃は、もともと家にあった両親の本棚の本もたいていは読めるようになっていました」
夏休みになるとお約束の課題図書も、とりあえずはこなしたけれど、いざ感想文となると、なかなか進まない。夏休みの宿題の中でも、いちばん最後まで残ってしまうのは、毎年のことだった。
「私、やっぱり“読む”ことが好き。授業では国語。現代文も漢文も古文も、文字を追うのが楽しいから、どれも大好き。大学の授業でも、一般教養で新しいことを学ぶのが好きでした。でも、それが人から見て変わっていることだとは、ずっと気づいていませんでした」
1日1冊の読書ペースが落ちたのは、高校受験と大学受験の期間くらい。それが終わるとまたいつものペースに戻ったが、同時に世の中は急速にデジタル化に向かっていた。そして、はるかの本とのつきあい方も、少しずつ変化していった。(story2に続く)
南 ゆかり
フリーエディター・ライター。ただいま、7月頭発売の書き下ろし新刊を準備中! ほかに『Domani』2/3月号のワーママ10人インタビュー、Oggi誌面「お金に困らない女になる!」「この人に今、これが聞きたい!」、 CanCam.jpでは「インタビュー連載/ゆとり以上バリキャリ未満の女たち」なども掲載中。