Q.離婚しようと迷っていた夫が脳梗塞で突然亡くなり、銀行口座が凍結されてしまいました。
お葬式などすぐに必要な費用がありますが、夫の口座が死後に凍結されてしまったため、預貯金が一切引き出しできません。また、成人した息子がふたりおりますが、長男とは生前仲違いしていたため、長い間、音信不通でした。このような状況下で、夫の預金を引き出すにはどうすればいいでしょうか。(群馬・48歳・24歳と22歳の息子のママ)
A.「口座が凍結してしまったということであれば、基本的には法定相続人全員の同意がないと口座解約はできません。口座解約する際、金融機関からは、相続人全員で作成した遺産分割協議書や銀行所定の解約申請書というものの作成・提出を求められることがほとんどです。
そして、これらの書類を作成するにあたっては、まず、大前提として法定相続人が誰なのかを調査する必要があります。そのためには、夫の出生から死亡までの戸籍謄本を取る必要があります。これは、例えば夫に前妻や、前妻との間のお子さんがいる場合は、その方々も遺産相続人の対象になってくるからです。実際、戸籍を取ってみたら実は別のお子さんが居た、あるいは養子縁組をして養子が居た、なんてケースもたまにあります。
さて、無事に法定相続人を確定できたら、今度はその全員からの口座解約に対する同意が必要です。この手続きには、解約申請書や遺産分割協議書に、遺産相続人全員の署名と実印での押印、印鑑登録証明書の提出が求められます。
ご相談者様の場合、仮に相続人がご相談者様とお子様2名ということであれば、夫の遺言がない限り、法定相続分としては、ご相談者様が妻として2分の1、息子さんおふたりが2分の1の2分の1ずつ、となります。
そしてもし、この内容について全相続人が納得せず、協議が整わない場合には、遺産分割調停という手続きを家庭裁判所で行ない、遺産の分配方法について協議します。遺産分割調停がまとまれば、その遺産分割調停調書により、遺産分割調停がまとまらずに審判が下されれば、その遺産分割審判書に基づいて、ようやく預金が解約できるという運びになります。
今回ご相談の件では、ご長男が疎遠ということですので、まずはご長男の居場所を探して連絡し、預金解約への協力を依頼するという流れになるでしょう。
ちなみに、今まではこうした遺産分割の合意がなければ故人の預貯金が下ろせなかったのが、 2019年の民法大改正により預貯金債権の仮払い制度というものができ、僅かではありますが、ある一定の金額については、ある一定の要件を満たせば、遺産分割協議前でも法定相続人が単独で引き出すことができるようになりました。詳しく知りたい場合には、お近くの弁護士までご相談ください」(中川裕一郎先生)
●本連載では離婚に関する慰謝料や養育費など、法律的な悩みや疑問にプロの弁護士が直接回答します!ご相談ごとがあるかたは、domani2@shogakukan.co.jp またはこちらのフォームより詳細の情報をお寄せください(お子さんの年齢、性別、ご自身の職業などをお知らせください。より詳しい回答ができます)。 メールの場合は件名に「離婚相談」と書いてなるべく具体的な内容をお送りください。すべてのご相談にお答えできるとは限りません。あらかじめご了承ください。
過去の相談はこちら▶︎離婚駆け込み寺
お悩みに回答してくれたのは・・・
中川裕一郎先生
弁護士。東京中川法律事務所経営。https://tokyo-nakagawa.com
商社勤務時代にバックパッカーとして世界に飛び出し、地球を一周回ってみつけた社会的正義を実現するという生涯の目標のため弁護士に。紛争を未然に防止し、目の前の依頼者を笑顔にすべく日々奮闘中。親身になってアドバイスをくれる人情派弁護士として、依頼者たちからの信頼も厚い。
インタビュー・文
さかいもゆる
出版社勤務を経て、フリーランスライターに転身。女性誌を中心に、海外セレブ情報からファッションまで幅広いジャンルを手掛ける。著書に「やせたければお尻を鍛えなさい」(講談社刊)。講談社mi-mollet「セレブ胸キュン通信」で連載中。Web Domaniの人気連載「バツイチわらしべ長者」で様々なバツイチたちの人生を紹介している。withオンラインの恋愛コラム「教えて!バツイチ先生」では、アラサーの婚活女子たちからの共感を得ている。
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