慈悲について知ろう
「慈悲(じひ)」は、仏教用語を元に一般化した言葉です。意味の理解と併せて、似た言葉も覚えておきましょう。
辞書的な意味と仏教用語としての慈悲
慈悲とは、相手をかわいがり、大切にし、かわいそうに思うことを意味する言葉です。自分よりも境遇が恵まれなかったり、立場が弱かったりするような相手に対し、何かをしてあげたくなる気持ちを含みます。例えば、親は自分の子どもが泣いていれば、悲しみを取り除いてあげたいという思いを抱くはずです。このような感情は、まさに慈悲と言えるでしょう。
慈悲という言葉は、仏教に由来しています。世の中における全ての人々に対し、苦しみから解放し楽を与えたいとする、仏や菩薩(ぼさつ)の心を表現した仏教用語です。特に、大乗仏教では、慈悲を持つことが覚り(さとり)を求める菩薩の大前提と言われており、智慧(ちえ)と並んで重視されています。
じ‐ひ【慈悲】
1 《「慈」は、梵maitrī「悲」は、梵karuṇāの訳》仏語。仏・菩薩ぼさつが人々をあわれみ、楽しみを与え、苦しみを取り除くこと。
2 いつくしみ、あわれむこと。なさけ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
慈悲の類語
慈悲の類語としては、思いやりのある優しい心を意味する「温情」「厚意」や、相手の痛みを理解しようとする心を表す「情け」「同情」などが挙げられます。
仏教用語では、情けをかけることを指す「恵み」のほか、良い知らせを意味する「福音」や、宗教による究極的な救いを表す「救済」が、慈悲の類語です。
キリスト教の「アガペー(無償の愛)」も、慈悲と似た意味の言葉です。しかし、アガペーが全ての人に幸福を与えるのに対し、慈悲は苦しんでいる人に限定して救いを与えます。
慈悲の対義語は「無慈悲」です。相手を思いやる心やあわれむ心がないことを意味し、「無慈悲な人」といわれる場合は、利己的・排他的な性格がイメージされます。「残忍」「冷酷」「邪険(じゃけん)」などが類語です。
▼あわせて読みたい
慈悲深いとは
では「慈悲深い」と言う場合、どのような意味になるのでしょうか。英語表現も併せて解説します。
慈悲深いの意味
慈悲深いは、強い慈悲の心を持っている状態のことです。情け深く、他人をいつくしみあわれむ気持ちが深い状態を意味します。「慈悲深い僧侶」「慈悲深い性格」「慈悲深い振る舞い」のように、人・気持ち・行動などの前に付け、形容詞として使用される言葉です。
基本的に、慈悲深い人は、自分が苦労することをいとわず、他人のために尽くす行動をとります。損をしているように見えても、相手からの見返りは一切求めていません。他人の苦労を取り除くことに喜びを感じるため、常に自分のことを後回しにし、どんな苦労にも耐えうる強さを備えています。
慈悲深いの例文
実際に「慈悲深い」はどのように使われるのでしょうか? 例文で見ていきましょう。
・失態をしたにも関わらずチャンスを与えるなんて、慈悲深い人だ
・どんな困難があっても笑顔を絶やさず、慈悲深い彼女の姿にはいつも驚かされる
・入院中は、看護師の慈悲深さに救われた
・寄付をする国民が多いことから、世界で最も慈悲深い国であると言われている