懐が深いとは
優しい振る舞いや言葉遣いを評して「懐が深い」と言う場合があります。時折、耳にする言葉ではありますが、具体的な意味となると、うまく説明できない人も多いかもしれません。「懐が深い」という言葉の意味や語源、「器が大きい」などとの違いなどを見ていきましょう。
懐が深いの意味や語源
懐とは、和服と胸に生まれる空間を指します。昔は、和服と胸の間に財布を入れていたため、懐は所持金や内心などの気持ちを表し、幅広い意味で使われるようになりました。
そのため、「懐が深い」という言葉は、一般的に心が広く包容力がある人を意味します。相撲の世界では、腕と胸との空間が大きいためなかなか回しを取れないときに、「懐が深い」と言う場合もあります。心が広いという意味を持つことから、柔らかい物腰の人や、言動の優しい人を指して言う場合もあります。
【懐が深い:ふところがふかい】
1.相撲で、腕と胸のつくる空間が大きく、相手になかなか回しを取らせない。
2.心が広く、包容力がある。
「―・い人物」
〈小学館 デジタル大辞泉〉より
懐が広いや器が大きいとの違い
「懐が深い」と似た言葉で、「懐が広い」や「器が大きい」といった言葉も見聞きします。実は「懐が広い」とは、辞典にもあまり掲載されておらず、一節には誤用で広まったのではないかと推測されています。
「懐が広い」は「太っ腹」と「懐が深い」との造語という見方もあり、「太っ腹である」「度量が広い」といった意味で使われるケースがあります。
「器が大きい」とは、「小さなことを気にしない」という意味があり、「懐が深い」の意味である「包容力がある」といった意味とはまた違った使い方をする言葉です。
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主な類語
「懐が深い」と同じ意味を持つ類語はいくつかあります。たとえば、「寛容である」や「大らかな」と言う、多くのものを受け入れられる心の広さを表す言葉が類語として挙げられます。
他にも「人間味豊かな」「差別のない」「度量の大きい」などの言葉も類語として認識されています。人からの印象がよく、安心感を持てる様態を表す意味から、「物柔らかそうな」「穏やかな」などの言葉も類語になります。「人柄が丸い」「温和な」「愛想がよい」なども類語です。
懐が深い人の特徴
懐が深い人には特徴があります。いくつか見ていきましょう。
素直に感謝や謝罪できる
懐が深い人は、高すぎるプライドは持たず、どのような人にも分け隔てなく感謝や謝罪の言葉を口にできる特徴があります。たとえ年下であろうと、謝意の念を誠実に伝えられる人です。他人に対し、ライバル心をむやみに抱かず、ねたむこともありません。相手の長所や才能を素直に認め、その気持ちを言動に表現できます。必要に応じ、自然に相手を立てるなどして、周囲との人間関係を良好に保てる人です。
物事の本質や周囲への影響を考えられる
自分への関心ばかりではなく、周囲の状況を俯瞰して見ることができる感性も持ち合わせています。自分の行動が状況全体に対してどのような影響を与えるのかを考え、冷静に行動して周囲への配慮を欠かしません。
同時に、懐が深い人は、物事の本質を捉えようとする力にも優れているため、本当にするべきことや守るものを的確に判断できます。感情や目先の利益に惑わされず、必要に応じて物事の良し悪しや自己犠牲を受け入れ、目的を成し遂げる力を備えているのです。