少しずつ現実味を帯びてきた危機に人々は…
アパレルのプレスを経てN.Y.に留学、現在は日系企業でマーケティングを担当している白子真由美です。
新型コロナウイルスの感染が拡大し、ニューヨーク州のクオモ市長が3月7日に、非常事態宣言を出したことはすでにみなさんご存知かと思います。この時点で、市内の約2,300人にウイルス感染の可能性があり、自己隔離状態にあるとのこと。
とはいえ、コロナウイルス拡散防止のために日常生活が制限されている日本の様子をニュースやSNSで知っている私としては、ニューヨークはまだまだ静寂感があるのかな?とも。とはいえ、その影響は少なからず出てきています。
日常茶飯事になってしまったアジア系への差別
まず、中国における患者数の爆発的増加と、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」での集団感染についての報道が盛んになった2月上旬あたりから、ニューヨークでも人々が敏感になってきました。
アメリカでは予防目的でマスクを着用するという風習がないためか、マスクをしたアジア系がいきなり理由もなく殴られるという事件が起こります。コロナウイルス感染への恐怖によるアジア系人種への差別です。私のまわりでも、アジア系友人がタイムズスクエアを歩いていたときに、見知らぬ人から「コロナウイルス、コロナウイルス!」と罵られたり、日本人の同僚はLAからの出張帰りの機内で、席が隣になった方から突然顔(体ごと)を背けられたうえ席を変更されたり、またUberの乗車拒否をされたという友人もいるなど、例を上げればキリがないくらい日常茶飯事に差別が起きるようになりました。私自身もマスクを着用して地下鉄に乗ったときに、「F*** Chinese!!」といきなり叫ばれたことがあります。このような差別は、感染者数がアジア人に限定せずに増えているなかでも残念ながら続いています。(ちなみに私は、この体験から怖くなってマスク着用はやめました)。
企業の対応は?そして人々の生活は…
その後、3月に入り、イランに旅行したマンハッタン在住の医療従事者に陽性が出て、以来どんどん患者数が増えています。陽性患者のなかに、マンハッタンに勤務する弁護士の男性がいらっしゃるのですが、彼のオフィスが私の勤める企業のご近所だということもあり、社内は一時騒然となりました。「できること(手洗い、手の消毒)をするしかないよね」と、今は落ち着きを取り戻しています。この頃からランチでの同僚との話題は「いかに免疫力をあげられるか?」です。また発症者数増加とともに、中止もしくは延期になるイベントも出始めました。そのなかには毎年恒例の東日本大震災復興・追悼式典「TOGETHER FOR 311」も含まれており、残念な想いをされている在留日系人も多いのではないかと思います。
そして3月7日の「ニューヨーク非常事態宣言」直前5日には、「中国、韓国、イタリア、イラン、日本を訪問した市民は帰国後14日間の自宅待機を求める」というニューヨーク市長の会見があり、各企業がこのガイドラインに従っています。
各日系企業でもリモートワークや時差通勤を奨励。私が勤務する会社では自社が行うセミナーをウェビナー(オンラインでセミナーを行うこと)に切り替えるなどの対応をしているところです。
ニューヨークよりも患者数が多いカリフォルニア州のCostco では、人々が殺到し、食料品や日用品を買い占めて、棚から品物がなくなったというニュースがありました。ニューヨークではハンドサニタイザーやソープ、フェイスマスクは日本と同様、店頭から消え始めています。マスクをしないのに、なぜ買い占めるのかは不思議ですよね(笑)。
今回の「ニューヨーク非常事態宣言」を受けても、街中にはまだ人が溢れており、日本ほどの切迫感はまだないのかな?というのが正直なところ。しかし、つい2日前には、陽性と診断されたUberドライバーが出るなど、経路の分からない市中感染が今後一気に深刻化しそうな気配。刻々と状況が変わる中、ニュースから目が離せません。
画像:(C)Shutterstock.com
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白子真由美
大学卒業後、東京にて、ファッションブランドのPR・コミュニケーションに従事。2016年からニューヨークへ渡米。MBAを取得後、現地日系企業に勤務しマーケティングを担当。