リーダーシップの言い換え表現

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日常会話でもよく使われる『リーダーシップ』という言葉ですが、実はさまざまな要素を含んでいます。まずはじめに、ビジネスシーンや就活の自己PRでも使われる、リーダーシップの言い換え表現を紹介します。
指導力
指導力は、リーダーシップの言い換えとしてよく使われる表現のひとつです。文字どおり人を教え導くことを意味しており、目標を達成するための方向性を示したり、チームや組織のメンバーを指導する能力を指しています。
指導力のある人は、メンバーの成長を促進しながら、チーム全体のパフォーマンスを向上させられるのが特徴です。また、人々をうまく指導するために必要な説明力や、コミュニケーション能力も兼ね備えています。
「あの人はリーダーシップがある」と表現する際は、「あの人は指導力に優れている」のようにそのまま言い換えてみましょう。ただし、指導力はあくまでリーダーシップの一要素であることに注意が必要です。
統率力
統率力も、多様な個性を持つメンバーを導くことを表す言葉です。「率いる」という文字が含まれているように、チームをひとつにまとめて引っ張っていく力を表しています。
統率力に優れたリーダーは、メンバー間の結束を高め、正しい方向へと導いていくことができます。さらに、重要な場面では自ら判断を下す決断力も持ち合わせているのです。
具体的な使い方は、「彼女は統率力が高い」「メンバーの力を結集させる統率力を持っている」など。ただし、リーダーシップという言葉には〝チームを率いる〟以外の意も含まれるため、言い換えに適した場面で使いましょう。
イニシアチブ
イニシアチブ(initiative)は「主導権」「率先」といった意味を持つ英単語です。ビジネス用語としても使われており、主導権を握ることを「イニシアチブを取る」「イニシアチブを握る」と表します。
自ら率先して物事に向き合う姿勢を意味することから、積極的に動く人を「イニシアチブがある」と言うのもポピュラーな表現です。また、「イニシアチブな行動」のように、形容詞として使う場合もあります。
リーダーシップがチームや組織など集団に対して発揮される力を表す反面、イニシアチブは個人の行動を意味する言葉です。主体性や積極的な態度もリーダーに求められる能力ではありますが、多少意味がずれていることに気をつける必要があります。
リーダーシップの対義語

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リーダーシップの意味や類義語を理解するとともに、対義語となる表現も覚えておきましょう。また、従来のリーダーシップから派生した概念「サーバントリーダーシップ」についても併せて解説します。
フォロワーシップ
リーダーシップの対義語はフォロワーシップで、「指導者を補佐する能力」や「指導者に限らず人を補佐する能力」を意味します。
フォロワー(follower)とは、動詞のfollowに〝~する人〟を表すerが付いた名詞です。followが〝~についていく、従う〟などの意味を持つことから、主に「誰かに付き従う人」を指します。
また、フォロワーには「リーダーを支える人」という意味も含まれています。そのためフォロワーシップは、リーダーに導かれる立場の「フォロワー」へ求められる能力を指すのがポイントです。
単に導かれるだけでなく、自分の見解や意見を述べるなど、主体的に行動するのもフォロワーに必要なスキルといえます。チーム一丸となって目的を達成するためには、リーダーの考えを理解して優れたパフォーマンスを発揮するフォロワーシップも大切なのです。
サーバントリーダーシップについて
サーバントリーダーシップは、「リーダーが上の立場として部下を率いる」という一般的なリーダーシップの概念を覆す考え方のこと。召使い・使用人を意味するサーバント(servant)が示すとおり、この考え方ではリーダーが部下へ奉仕する存在に位置づけられます。
こうしたリーダー像をサーバントリーダーといい、メンバーの話をよく聞いたり共感するなど、献身的に部下と関わっていくのが特徴です。チームをよい方向へ導くため、メンバーがストレスなく力を発揮できているかに気を配ります。
サーバントリーダーシップは従来のリーダーシップとは大きく異なるものの、チームを導くスタイルの一種です。対義語ではありませんが、チーム全体をサポートしながら指導するアプローチ方法といえます。
そもそもリーダーシップの意味とは?

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リーダーシップという言葉への理解を深めるために、改めてどのような意味が含まれているのかを確認しましょう。似た言葉としてよく挙がる「マネジメント」との違いについても解説します。
目標達成のためにメンバーを導く能力を指す
リーダーシップ【leadership】
1. 指導者としての地位・任務。指導権。
2. 指導者としての素質・能力。統率力。「—に欠ける」→フォロワーシップ
小学館『デジタル大辞泉』より引用
リーダーシップとは、目標を達成するためにメンバーを導く能力を指します。ただ指示を出すだけではなく、明確なビジョンを示すことでチームのポテンシャルを引き出す力です。
こうした能力に優れたリーダーは、メンバーのモチベーションを高め、個々の強みを活かせる環境を創出するのです。
組織のリーダーとして求められることは、状況に応じて柔軟に変化します。あるときは皆をひっぱり、またあるときにはメンバーを支えて後方支援に回るなど、状況を見極める洞察力も大事な資質だといえるでしょう。
リーダーシップとマネジメントの違い
リーダーシップに似た言葉としてよく挙げられるのが「マネジメント」ですが、このふたつは実際には異なる概念です。マネジメント(management)は経営・管理などの意味を持ち、大抵は事業の経営に関して使われます。
チームや組織を切り盛りする、という点においては共通しているものの、リーダーシップはあくまでメンバーに対して方向性を示すアプローチです。個人の意欲を盛り上げ、行動を起こさせるようなスキルを表します。
一方マネジメントとは、目標達成のため効果的な方法を考えるなど、チーム全体の動きを管理すること。どちらもビジネスには欠かせない概念なので、意味や役割の違いを把握しておきましょう。
リーダーシップが必要とされる理由
リーダーシップがビジネスに欠かせない能力として評価されるのは、ただ目標達成に役立つからという理由だけではありません。それぞれ異なる価値観を持つ従業員が同じ方向を見てチームワークを深められるのも、リーダーシップの影響によるといわれているためです。
効果的なリーダーシップはチームの生産性を向上させるだけでなく、従業員が働く上での満足度も高めます。また、適切にタスクを調整し、やるべきことを示すリーダーが存在することで、社員の育成につながっていくのです。
リーダーが示すビジョンは、会社のポリシーや指針を社員が理解する助けにもなります。このように、リーダーシップは短期的な目標達成だけでなく、長期的な組織の成功にも深く関わっているといえます。
リーダーシップにおける3つのタイプ

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ひとくくりに「リーダーシップに優れた人」といっても、実はタイプの異なるリーダー像がいくつか存在します。本項では3つのタイプに絞って紹介していきますので、それぞれの特徴とアプローチ方法を見てみましょう。
民主型
民主型リーダーシップは、チームメンバーの意見や話し合いを尊重する、民主的な意思決定プロセスを重視するスタイルです。このアプローチでは、さまざまな視点を取り入れることによって創造性を高めることができます。
メンバーの自主性を尊重するため、モチベーションの向上にもつながるのがメリットです。また、リーダーとメンバーが平等な立場で意見を交換することにより、フレンドリーな関係性を築きやすくなります。
ただし、多様な考えを取りまとめる必要があり、意思決定までに時間がかかるのがデメリットです。効果的な意見を出し合うためには、メンバーにも活発に議論へ参加するアクティブさが求められます。
放任型
放任型リーダーシップは、メンバーに大きな自由と責任を与え、リーダーが介入する場面を減らして組織を運営するスタイルです。メンバーの権限が大きくなるため、高度な専門性を持ったチームに適しています。
個人のスキルが求められる環境となるので、メンバーの主体性向上や成長に期待できるのがメリットです。しかし、放任しすぎることでチーム全体の方向性が定まらず、作業の進捗が遅れるリスクもあります。
放任型リーダーシップに必要なのは、メンバーの様子を見守りながら、必要であれば支援するバランス感覚です。状況に応じて自らチームを牽引するなど、ほかのスタイルと組み合わせると、より効果的なマネジメントが可能になります。
専制型
「専制政治」という言葉もあるように、リーダーが特に強い権限を持つのが専制型リーダーシップの特徴です。独断で意思決定を行うため、素早い決断が求められる緊急時などに力を発揮します。
しかしながら、リーダーが正しい行動を取っていたとしても、メンバーから見て一方的な印象を与えかねないのが大きなデメリットといえます。専制型リーダーシップでは、メンバーが意見を出したり、積極的に行動する機会が少なくなってしまうのです。
ワンマンな体制は、長期的な組織の成長を妨げかねないことに注意を払う必要があるでしょう。短期的な結果は期待できるなど、専制型リーダーシップが役立つ場面もありますが、メンバーの多様な考えが損なわれぬよう柔軟に対応してください。
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