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2020.09.05

「生前贈与」は税金対策になる?弁護士に聞いた節税の仕組みを徹底解説

相続税の節税対策の一つに「生前贈与」があります。生前に遺産を贈与すると、さまざまな特例や非課税枠が利用でき、それらをうまく活用することで税金を抑えられるのです。生前贈与の仕組みや注意点について解説します。

【目次】
生前贈与は税金対策になる?
生前贈与に税金はかからないの?
生前贈与の税金が軽くなる特例

生前贈与は税金対策になる?

生前贈与 税金

(C)Shutterstock.com

遺産相続では相続人に「相続税」が課されますが、「生前贈与であれば節税対策になる」という話を耳にしたことはありませんか? 生前贈与とは何か、なぜ税金対策になるのかを確認しましょう。

相続税の対策になる

生前贈与」とは、生きているうちに、自分の財産を特定の人に贈与することです。贈与は基本的に誰でも、いつでも可能です。自分の望む人になら、基本的に誰に対してでも贈与ができます。

生前贈与を行う理由のひとつに「相続税の軽減」が挙げられます。「相続税」とは、遺産を相続したときにかかる税金のことで、国が定めた一定の基準額を超えた場合に納税の義務が発生します。

相続税の金額は、死亡時にその人が持っている不動産や預貯金などの財産の総額から計算され、それが多いほど、税金が高くなります。

そのため、前もって生前贈与を行うことで、財産の総額を減らしておけば、相続税の金額を抑えられるのです。

相続税|国税庁
No.4402 贈与税がかかる場合|国税庁

孫に生前贈与する人も多い

祖父母から孫に、生前贈与を行うケースも少なくありません。孫に贈与することも、実は「節税対策」のひとつなのです。孫への贈与は、「生前贈与加算」のリスクを減らせるというメリットがあります。

生前に贈与された財産のうち「相続開始前3年以内」に贈与されたものがある場合、それには「生前贈与加算」というルールが適用され、相続税の課税価格に加算されてしまうのです。

つまり、親が亡くなる3年以内に子ども(相続人)に贈与した金額は、相続財産に加算され、相続税対策としての意味がなくなってしまいます。

一方で、子が生きている場合は孫はそもそも「相続人」ではないので、「生前贈与加算」のルールの対象外になります。

ただし、孫が遺言によって孫が遺産を取得する場合や生命保険金の受取人となっている場合は、生前贈与加算の対象になるので注意が必要です。

No.4161 贈与財産の加算と税額控除|相続税 |国税庁

生前贈与に税金はかからないの?

生前贈与 税金

(C)Shutterstock.com

節税対策として生前贈与を行う人がいますが、そもそも贈与自体に税金はかからないのでしょうか?「遺産相続と比べてどのくらい節税できるのか」という疑問と共に解消しておきましょう。

110万円以下なら非課税

結論から言うと、生前贈与は税金がかからないわけではありません。むしろ税率だけで考えると、相続税よりも基本的に高く設定されています。

税率が高いのにもかかわらず生前贈与を選ぶ人がいるのは、さまざまな「非課税枠(基礎控除額)」があり、それらを組み合わせることで高い節税効果が見込めるためです。

贈与税は、1年間(1月1日~12月31日)に贈与された財産の合計が基礎控除額の110万円を超えなければ、基本的に贈与税の申告は不要です。

ただし、この基礎控除額は「贈与を受けた人ごと」に適用されるという点に注意しましょう。

例えば、2人の贈与者から110万円ずつ贈与された場合でも、受け取った金額の合計は220万円なので、基礎控除額を超えた110万円に対しては贈与税を払う必要があります。

No.4402 贈与税がかかる場合|国税庁

定期贈与に注意

ただし、何年かにわたって連続で贈与を受けた場合、毎年の金額が110万円以下でも、贈与税が課税される可能性があることに注意しましょう。

毎年連続して行われる贈与は「連年贈与」(暦年贈与)と「定期贈与」の2種類に大別されます。「連年贈与」とは「独立した毎年の贈与」のことで、年間110万円の基礎控除額が適用されます。

しかし「10年間にわたり、毎年100万円を贈与する」などの「定期贈与の取り決め」を行うと、取り決めをした年に定期金に関する権利の贈与を受けたとして、贈与額の合計額1000万円に対する贈与税が発生するのです。

2年以上連続で贈与する場合、それが「定期贈与」として前もって取り決めたものでないのなら、その証拠となる「贈与契約書」を、贈与の度に作成するのが望ましいとされています。

No.4402 贈与税がかかる場合|国税庁

生前贈与の税金が軽くなる特例

生前贈与 税金

(C)Shutterstock.com

日本には、生前贈与の税金が軽くなる、さまざまな特例が存在します。特例を上手に活用することで、大きな節税効果が見込める場合があるのです。

住宅取得の際の贈与税の特例

祖父母や両親から、マイホーム購入の資金援助を受ける家庭も多いでしょう。自分たちが住む住宅の新築、取得や増改築の支払いに充てる目的で贈与されたお金は、一定の要件を満たせば「住宅取得等資金」として、一定の非課税限度枠まで贈与税が非課税となる特例があります。

非課税枠は、マイホームの契約締結日・住宅のタイプ・家屋にかかる消費税率などによって変わります。

例えば、家屋の契約の締結日が令和2年4月1日~令和3年3月31日までで、消費税などの税率が10%の場合、省エネ等住宅は1500万円、その他の住宅は1000万円が非課税限度額です。詳細は国税庁HPで確認しましょう。

国税庁 財産をもらったとき|住宅取得の際の贈与税の特例

国税庁 No.4508直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

教育資金の一括贈与

「教育費に充ててほしい」と、祖父母や親から「教育資金」の援助がなされるケースについても特例があります。

受贈者(お金を受け取る人)が30歳未満で、父母・祖父母などの直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合、1500万円までが非課税となります。

この特例を受けるには、あらかじめ「教育資金贈与専用口座」を開設し、金融機関を経由して教育資金非課税申告書を提出する必要があります。資金の払い出しを行う際は、支払いに充てた領収書の原本等を期限内に銀行に提出しなければなりません。

受贈者の前年分の合計所得金額が1000万円を超える場合、特例の適用外になる点に注意しましょう。

祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし|国税庁

結婚・子育て資金の一括贈与

親や祖父母等の直系尊属から、結婚、妊娠、出産、育児に必要な資金の一括贈与を受けた場合、一定の要件を満たせば、「結婚・子育て資金」として1000万円まで(結婚資金は300万円が限度)が非課税となります。特例が利用できるのは、受贈者が20歳以上、50歳未満の場合です。

この場合も、予め受贈者(子や孫)の名義で銀行などに専用口座を開設し、結婚・子育て資金非課税申告書を提出することが必要です。結婚や・子育てのために使った資金の領収書等を銀行に提出することで、資金の払い出しをする仕組みです。

教育資金と同様に、受贈者側の前年分の所得税にかかる合計所得金額の合計が1000万円を超える場合は、特例の対象外となります。

国税庁  父母などから結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし

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写真/Shutterstock.com

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弁護士

正木裕美

アディーレ法律事務所所属。男女トラブルをはじめ、ストーカー被害や薬物問題、労働トラブルなどを得意分野として多く扱う。過去『ザ・世界仰天ニュース』(日本テレビ)に出演のほか、『ゴゴスマ -GO GO!Smile!-』(TBS系)等のコメンテーターをはじめ、多数メディアに出演中。

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