現実逃避は悪いこと?どうしてそうなってしまうの?
やるべきことをつい後回しにしてしまったり、困難やトラブルに直面したときに向き合えず逃れようとしてしまう「現実逃避」。時としてその心理に直面することがあるのではないでしょうか。
「現実逃避」=実際問題としてやらなくてはならないことを、意図的に避けようとすること。また、その行為や心理状態。(小学館刊・大辞泉)
現実逃避したいと思うことはある?
頻度に差はありますが「現実逃避したい」と日常的に思っている人が5割強という結果に。
では、なぜ人は現実逃避をしてしまうのでしょうか。心理的メカニズムを、臨床心理士・吉田美智子さんにお聞きしました。
※アンケートは30~45歳の日本全国の有職既婚女性を対象にDomani編集部が質問。調査設問数10問、調査回収人数110名(未回答含む)。
臨床心理士が語る「現実逃避」
「現実から目をそむけて逃げることは、一般的に望ましい行為とは言えないでしょうが、緊張やストレスが続くときに、自分の精神状態をやりくりするために上手に使えたらよい方法なのではないかと思います」(吉田さん)。
「アンケート結果を見ていると、特にアラサー・アラフォー読者が多いDomani世代の皆さんは、キャパシティいっぱいの仕事や家事育児を抱えて精一杯の毎日ですから、『逃げ出したい!』『投げ出したい!』と感じることがあっても、心の自然な反応であると感じられます」(吉田さん)。
「『逃げたい!』と思うことで緊張を少し和らげているので、現実逃避したいと思うことを『ダメ』だと思う必要はありません。だからと言って本当に仕事や家族を捨てて逃げてしまっては困りますけどね」(吉田さん)。
【体験談】現実逃避したくなる理由や心理とは?
アンケート調査では具体的にどんな状況下で「現実逃避」したくなるのかも聞きました。また、その原因に対し、どう対処するのがいいのか吉田さんにお聞きしました。
現実逃避したくなる原因は主に以下の3つに分かれているようです。
仕事と家庭
仕事と家庭の両立が大変
・仕事と家庭のバランスが保てなくなったとき。仕事が忙しい時に限って、家族のイベント事が重なる (40代・埼玉県・子ども3人)
・仕事や家事など予定が立て込んだ時に自分の体がいくつも欲しいと感じた時(40代・滋賀県・子ども3人)
・子供の世話や家事、仕事で自分のために使える時間がない時、もう何もかも捨ててどこかに行ってしまいたいと思う (30代・愛知県・子ども2人)
仕事が忙しい
・やらなければいけないことが山積みで、やってもやっても片付いた感覚がないとき(40代・神奈川県・子ども2人)
・仕事が忙しくて、トイレに行く時間も、飲み物を飲む時間もないとき (40代・茨城県・子ども1人)
・仕事量がキャパを超えてきて、心も体も目一杯のとき (30代・埼玉県・子ども2人)
夫が不機嫌
・夫の機嫌が悪いときは言い方もキツイし、無視もされるのでここからいなくなりたいと思う (30代・北海道・子ども2人)
吉田さんのアドバイス
「仕事と家庭の両立に困難があるのは、そもそも2つの仕事量を足すと24時間じゃ足りないからではないでしょうか? それを、ワーママの才覚と裁量でやりくりしているのですから、大変すぎて現実逃避もしたくなろうというもの。〝 やって当たり前〟 〝できて当然〟と思わずに、仕事量を減らしたり、助けてもらえる仕組みを考えてみてくださいね。
ご主人の不機嫌は心身ともに消耗しますね。機嫌のよいときに何か困っていることがないか聞いて、工夫してあげられることがあればしてみるのはいかがでしょうか。定期的に不機嫌になり、なす術がない場合は、自分のせいと思わず、ひとまず離れましょう」
子ども
子どもが泣いたり言うことを聞かない
・子どもが泣き止まないとき。家事も溜まっていて時間がないのに、どうあやしても泣き続けられるとツラい (30代・愛媛県・子ども1人)
・スーパーやお友達のお家など、外で子どもが言うことを聞かず泣きわめくとき (30代・東京都・子ども2人)
・子どものわがままがひどくイライラしているとき、放って外に出たくなる (30代・新潟県・子ども1人)
子どもが泣いてしまったりワガママを言ってしまうことを頭で理解できていても、心に余裕がないときはその現実から目を背けたくなってしまうという声が多く聞かれました。
自分の時間が欲しい
・ひとりになりたいとき。育児、家事と目一杯にも関わらず、仕事をこなさなくてはならないため子どもも夫も遮断したくなるときがある (40代・神奈川県・子ども2人)
・自分の時間を取ろうとすると、子どもからひっきりなしに呼ばれて、5分でさえ自分のことができないとき (40代・千葉県・子ども2人)
このほかにも「育児と夫のストレス。子どもが泣いていようが、わがままを言っていようが、夫は我関せず」 (40代・静岡県・子ども1人)という人や、「24時間〝お母さん〟でいないといけないのがつらい」 (30代・大阪府・子ども2人)という意見も。
吉田さんのアドバイス
「子どもって親が急いでいたり、今は困るというときに限って泣いたりわがままを言ったりすることがあり不思議ですよね。大人側に余裕がないときは、ついつい子どもの気持ちより自分の都合を優先してしまい、さらなる惨事を招くことがあります。こういうときは無理にコントロールしないで、子どもの『もう嫌だ』という気持ちを共有してみませんか?子どもは親が自分と同じ気持ちになってくれる(同調する)と気が済みます。
また、自分の時間の確保も永遠の悩み。年齢によっては、トイレすら自分の時間にならないことも。でも子どもに苛立ちをぶつけてしまうと後から後悔することになるので、工夫をしたり、『一時的に腹をくくる』など上手に切り抜けてくださいね」
金銭面
お金がない
・お金がないときはこの生活が嫌になって、逃亡したくなるときがある (30代・大阪府・子ども2人)
・夫がコロナで失業。バイトをしてくれてはいるが、どんどん残高が減っていく通帳を見ると現実逃避したくなる(40代・東京都・子ども1人)
そのほか、「家計のことを考えず、金額を気にせず買い物したい」というような声もありました。
吉田さんのアドバイス
「金銭面の悩みも切実ですよね。ただ長い人生の中で苦しい時期というのは生じることがありますから、工夫と家族の協力で乗り切っていけるといいですね」
最後に
そのほかの意見として、「いつも」「睡眠不足」「朝」「プレッシャー」「疲れ」「うまくいかないとき」などという声も。
世間一般ではあまりいい印象を受けない「現実逃避」ですが、時として心のためには必要なことだということがわかりました。心が押し潰されてしまうことがないよう、自分自身のSOSサインを受け止めながらどこかでガス抜きができるといいのかもしれません。
取材・文/福島孝代
写真/(C)Shutterstock.com
臨床心理士
吉田美智子
東京・青山のカウンセリングルーム「はこにわサロン東京」主宰。自分らく生きる、働く、子育てするを応援中。オンラインや電話でのご相談も受け付けております。
HP
Twitter: @hakoniwasalon
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