気を使うわりに収穫がない!? 後輩とお酒、ホントのところ
新年度が始まり、会社の歓迎会で、後輩世代とお酒を飲む機会が増えるのではないでしょうか。もしかすると、「最近の子たちは、お酒のつきあいが悪い」と嘆いている方もいるかもしれませんね。Googleの検索で「後輩 飲み会」と入力してみると、それに続くキーワード候補として表示されるのは「話題」「来ない」「誘う」など。先輩世代のなんとも悩ましい思いが漂っています。今回は、若者とお酒について最近の流れを紹介したいと思います。
〝若者の酒離れ〞などと語られますが、今の20代がお酒を飲まないかというと決してそうではありません。さまざまな調査でも、たとえば「お酒が好きか」「半年以内に飲酒をしたか」といった質問に対して、YESと答える20代の割合は、上の年代と大差なし。2017年に日本酒造組合中央会が行った「日本人の飲酒動向調査」では、20代は1回あたりの飲酒量が多い傾向があり、ビール以外のお酒を飲む量は他の年代に比べて最も高い結果になっています。
イマドキの20代学生、男女共通の飲み方は?
では、どんなふうにお酒を楽しんでいるのでしょうか。20代の学生たちに聞いてみると、男女共通であがったのが「路上飲み」。「バイト終わりにコンビニでお酒とおつまみを買って、500円くらいで安くサクッと飲んで帰る」「1杯目はとりあえずビール、じゃなくて、とりあえず早く安く酔えるストロングゼロ。あと、居酒屋にいきなり行くと飲み代が高くなるので、0次会として先に飲んでいくこともある」など。ひと昔前の学生はお金がなくて居酒屋に行けず、仕方なく路上飲みをしていたところがありますが、今はコスパもいいし楽しくてやっているという印象です。また、その背景には「居酒屋はほとんどがコールやゲーム禁止。怒られるし、追い出されるのでハジけられない」という今どきの事情も。
とはいえ、さすがに真冬には厳しい路上飲み。もちろんお店での飲み会も行っており、近ごろ女性に人気を集めているのが、「シュガーマーケット」。3000円で時間無制限飲み放題、おつまみは持ち込み制。日本各地の蔵元が造った果実酒が冷蔵庫に入っていてセルフで取って飲むというスタイルになっています。
友人たちとは柔軟にお酒を楽しんでいるにもかかわらず、会社の飲み会がめんどくさいという人の大きな理由は「気疲れしそう」というもの。「なんで個人情報を会社の人に話さなきゃいけないのか疑問」「SNSでこういう写真をあげたらこう見られると考えながら投稿しているので、それ以外の自分を見られたくない。飾っている自分だけ見てほしい」「昔の武勇伝や苦労話をずっと聞かされるのはイヤ。自分の話も聞いてほしいし、やりとりをしたい」という声も。中には、「一緒に写真を撮って仲いいアピールをしたい」という、上司や先輩さえも自己ブランディングに巻き込むツワモノもいます。
いまやお酒を一緒に飲むことは、コミュニケーション手法ではなく…
概して自分のペースが大事な若者たちは、帰りたかったら帰ります。昔の感覚だと、先輩に誘われているのに帰るという選択肢はなかったですよね。自由が獲得できたともいえるし、まだ何も成していないのに獲得しすぎているともいえるかもしれません。
また、今の若者たちは、ストレス発散のためにお酒を飲むというわけではないようです。ストレス解消ならむしろ「ひとりで音楽聴きながらスタバでゆっくりするほうがいい」と言い、それを彼らは〝チルってる(chill outから)〞と表現。昭和的縦社会のストレスは減ってきていますが、人間関係の数だけは増えていて、むしろ横社会のストレスは増えていると感じます。確かに、死ぬ気で働いて、過剰なストレスを溜め、それをお酒で解消する時代ではない。私自身もお酒が一緒に飲めたほうがいいなと思うものの、飲みニケーションを最優先のコミュニケーション手法とすることは、前時代的だと自覚せざるをえない気がしています。
力を引き出す/¥800 講談社青山学院大学陸上競技部の原晋監督との共著。育て方しだいで、すごい能力を発揮するゆとり世代を見抜き、彼らを伸ばすヒントが見つかる。
マーケティングアナリスト
原田曜平
1977年生まれ。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。学生や20代の社会人と共に、若者の消費行動について調査・分析を行う。マーケッターの立場から現代を読み解き、テレビ番組『ZIP!』(日本テレビ)、『新・情報7DAYSニュースキャスター』(TBS)などに出演。
Domani2018年2月号 新Domaniジャーナル「後輩世代のトリセツ」 より
本誌取材時スタッフ:構成/佐藤久美子