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2018.03.13

今さら聞けないトランプ政権の失敗と成功を振り返る【三浦瑠麗の「優しさで読み解く国際政治】

国際政治学者・三浦瑠麗さんに教えていただく世界の「今」。今回はトランプ政権について伺いました。

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トランプ政権発足から1年。功罪相半ばの内政と外交政策

トランプ米大統領の初のアジア歴訪が行われました。大統領の長女イヴァンカさんへの好待遇や、大統領と安倍総理がゴルフをしたとか、どんなハンバーガーを食べたかというゴシップも大盛り上がりでした。ただ、せっかくトランプ大統領当選1年の節目でもありますので、トランプ政権の内政と外交を振り返ってみたいと思います。

トランプ政権の内政上の評価については、陣営によって完全に評価が割れています。最大の失敗は、最優先で取り組んだオバマケアを代替するための医療保険法案の挫折。与党である共和党内の支持がグラついてしまい、上下両院を共和党が握っているにもかかわらず大統領の最優先課題を通せないという異常事態を生じさせてしまいました。失態の責任を取って、ホワイトハウスの高官の多くが1年を待たずに更迭されている混乱ぶりです。しかし内政上のいちばんの山、減税及び税制改革は成就しました。法人税を20%に下げるなど、米経済史に残るこの税制改革のインパクトは絶大なものです。

内政上の最大の成果は、ゴーサッチ最高裁判事の指名

他方、税制改革と並んで内政上の最大の成果は、保守的な有権者の間では大きな関心事であったゴーサッチ最高裁判事の指名でしょう。米国の最高裁判事は、終身の身分保障を持つ身。最高裁の方針は、中絶問題、銃規制問題、環境規制、政治資金改革などあらゆる問題に及びます。オバマ政権期に亡くなった保守派の判事の椅子を、どのような候補が埋めるのか注目を集めていました。保守的な志向を有する判事を送り込んだことで、米国の司法は今後数十年にわたって保守派優位となるはずです。 トランプ大統領の失言問題や、リベラル陣営やメディアとの争いでは激化していますから、米国の分断は深刻です。政権への支持率は30%台後半から40%台前半で推移しており、保守層の支持は底堅い中での低位安定といったところです。

外交については、アメリカ・ファーストの政策が実行されつつあります。特に、地球温暖化に関するパリ条約や、TPPからの撤退は世界に衝撃を与えました。パリ協定からの離脱に関しては、環境問題に意識が高いカリフォルニアなどの各州が独自の目標を推進することによって、脱退のマイナス効果の緩和が期待されています。TPPからの撤退は、アジアの市場に市場メカニズムと法の支配に基づくルールを注入して、中国の参入に備えるという戦略目標の挫折を意味します。多少基準を緩めた上で、米国抜きで妥結までもっていけるかどうか、日豪などのリーダーシップが問われています。

事前の予想とは異なる米国と個別国との関係

他方で、米国と個別国との関係は、事前の予想とは異なり、概ね現状維持で推移しています。最重要は中国との関係です。ただ、今回のアジア歴訪で目立ったのは中国の用意周到さに対比される米外交の行き当たりばったり感。アジア歴訪の目標だった北朝鮮情勢の安定化と、米国の経済権益の維持で具体的な進展があったようには見えません。北朝鮮問題では、経済分野でのプレッシャーを多少弱めても、解決策を迫る算段だったはず。結局、具体的な譲歩は何ら引き出せずじまいでした。中国得意の米中二大国路線に乗っかって、かえって中国の影響力誇示に加担してしまった印象です。

とは言え、トランプ政権はやはり内政中心の政権。北朝鮮情勢の緊迫化は予断を許さない面があるものの、積極的な外交を展開するというよりは、内政上の課題が外交に波及するという展開を今後は見せるのではないでしょうか。

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国際政治学者

三浦瑠麗

1980年生まれ。国際政治学者。東京大学農学部卒業。東大公共政策大学院修了。東大大学院法学政治学研究科修了。法学博士。現在は、東京大学政策ビジョン研究センター講師、青山学院大学兼任講師を務める傍ら、メディア出演多数。気鋭の論客として注目される。

Domani2月号 新Domaniジャーナル「優しさで読み解く国際政治」 より
本誌取材時スタッフ:構成/佐藤久美子

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