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2018.03.09

スティーブ・ジョブズも本田宗一郎も市場調査は嫌い。でも凡人にはやっぱり必要?【飯田泰之 半径3メートルからの経済学】

 

アラフォー世代に刺さる経済、社会、働き方などについて、経済学者・飯田泰之さんがわかりやすく語ります!

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市場調査の限界を感じたら〝ちょっとだけやってみる〟

2社の靴メーカーの調査員が、アフリカの未開の地の市場調査を行いました。その地域では、ほとんどの人が伝統的なサンダルを履いて生活しており、両メーカーが生産しているような革靴を履いている人はいません。A社の調査員はここから「同地では革靴を履く習慣がなく、わが社の靴が売れることはないだろう」と結論しました。一方で、B社の調査員は「革靴を持っている人はおらず、ライバル社もないため非常に有望な販売先になる」と結論しました。正しいのはどちらでしょう。

事前の市場調査なんて当てにならない。だけど…

この話の元ネタは、営業研修などで有名な「裸足の国で靴を売る」という例話です。通常の研修では「誰も靴を履いていないなら、むしろ売り込みのチャンスだ」として、厳しい状況をチャンスととらえる心構えを説く――のですが少々怪しい話ですよね。実際にふたを開けてみたら、A社の調査員のほうが正しかったということになる可能性はいくらでもあるでしょう。

この例話は、むしろ、事前の市場調査なんて当てにならないという戒めとして理解したほうが良いのではないでしょうか。今やどこの会社でもやっている市場調査ですが、その効能には限界があるようです。

スティーブ・ジョブズや本田宗一郎の市場調査嫌いは有名ですし、フォード・モーターの創業者であるヘンリー・フォードの「顧客に何が欲しいかを聞いたら、もっと速い馬が欲しいと言われただろう」という発言は、人々のニーズ把握の難しさを的確に表現しています。

事前の調査は当てにならない。しかし、ジョブズや本田宗一郎のような天才でない身としては、事前調査なしに「勘と度胸」で新市場・新商品に参入するのは不安すぎる。

このジレンマを解決する手法として、「リアルオプション」と呼ばれる方法があります。今まで出店したことのないエリアに進出するとき、入念な調査の後に大規模店を出すよりも、基本的な調査をして、「とりあえず」地元店のひとつの棚に商品を置いてもらう……いわば実際のビジネスによって実験をしてみるのです。

予想より好調ならば、徐々に追加の投資を行って規模を拡大していけば良いですし、結果が芳しくなかったら投資した分はあきらめて早めに撤退すれば良い。ちょっとだけの投資だからあきらめもつきやすいでしょう。むしろ小規模な失敗を数多く経験することで、新商品・新市場への組織全体の「勘」を研ぎ澄ましていくことにもつながります。

やってみないとわからないことは沢山ある

どうせやるなら徹底的に調べ、準備して最善の選択をしたいと思うのは人情。これは個人の行動にも当てはまります。資格試験にチャレンジしてみよう、新しい習い事を始めてみようというとき……ついつい準備しすぎて調べ疲れてチャレンジをやめてしまったことはありませんか? せっかく入念に準備したのだから途中でやめられないと、自分に合っていない勉強を無理に続けてみたなんて経験はありませんか?

事前の調査はほどほどに。調査が自己目的化してしまっては意味がない。やってみないとわからないことは沢山あるのです。

これからの地域再生/¥1,600 晶文社人口減少が避けられない日本にとって、すべてのエリアでの人口増加は不可能。中規模都市の繁盛が、日本経済を活性化させ、未来を救う!

経済学者

飯田泰之

1975年生まれ。エコノミスト、明治大学政治経済学部准教授、シノドスマネージング・ディレクター、内閣府規制改革推進会議委員。東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。わかりやすい解説で、報道番組のコメンテーターとしても活躍。

Domani2月号 新Domaniジャーナル「半径3メートルからの経済学」 より
本誌取材時スタッフ:構成/佐藤久美子

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