「お越しいただく」の意味とは?
「お越しいただく」という言葉を辞書で調べると、ヒットしません。「お越しいただく」は、二つ以上の言葉を繋げたものであると思われます。
前半の「お越し」の意味から見ていきましょう。「お越し」は、「来ること」や「行くこと」の意味の尊敬語です。 次は、「いただく」について考えましょう。「いただく」は「もらう」の謙譲語で、相手が来てくれたことを表す敬語表現です。相手を立てると同時にへりくだっていることを表しています。
「お越しいただく」が敬語であることは、以上の点からも明らかです。
「お越しいただく」は二重敬語?ビジネスの場での使用は問題ない?
ビジネスの場面でも、この「お越しいただく」はよく登場します。マナーに反しない「使い方」が気になりますが、使用を避けたいものに、二重敬語があります。まず、二重敬語の定義について再度確認しましょう。
一つの語について、同じ種類の敬語を二重に使ったものを「二重敬語」という。例えば「お読みになられる」は 、「読む」を「お読みになる」と尊敬語にした上で、更に尊敬語の「…れる」を加えたもので、二重敬語である。「二重敬語」は、一般に適切ではないとされている。ただし、語によっては、習慣として定着しているものもある。
(文化庁「敬語の指針」より)
続いて、「お越しいただく」が、二重敬語にあたるのかを考えましょう。「お越しいただく」は「お越しになっていただく」を短くした形です。二つ以上の敬語を接続助詞「て」で繋げると、「敬語連結」になります。敬語連結の定義は下記の通りです。
二つ(以上)の語をそれぞれ敬語にして、接続助詞「て」でつなげたものは、「二重敬語」ではない。このようなものを、ここでは「敬語連結」と呼ぶことにする。例えば「お読みになっていらっしゃる」は、「読んでいる」の「読む」を「お読みになる」に「いる」を「いらっしゃる」にしてつなげたものである。つまり「読む」「いる」という二つの語をそれぞれ別々に敬語(この場合は尊敬語)にしてつなげたものなので 、「二重敬語」には当たらず 「敬語連結」に当たる。「敬語連結」は、多少の冗長感が生じる場合もあるが、個々の敬語の使い方が適切であり、かつ敬語同士の結び付きに意味的な不合理がない限りは、基本的に許容されるものである。
(文化庁「敬語の指針」より)
以上のことから、「お越しいただく」は二重敬語ではなく、正しい敬語表現だと言えます。ビジネスシーンで使用しても問題がないことが分かりました。では、「お越しいただく」を使用する際のバリエーションについて考えていきましょう。
使い方を例文でチェック
「お越しいただく」を理解できたところで、どのような使い方をしていけばよいか、例文を確認しましょう。例文を覚えておけば、様々なシーンで役に立つはずです。
「本日はお忙しい中、お越しいただき誠にありがとうございます」
こちらは、よく耳にする表現でしょう。目上の方やお客様に来ていただくという敬意を払っていますので、とても使いやすいフレーズです。 集会の冒頭などで、「本日はお忙しい中、お越しいただき誠にありがとうございます」と、定型の挨拶として使われることが多いです。
「お越しいただきますよう、お願い申し上げます」
この使い方は、相手に「来てもらう」ことを依頼するときに使えます。柔らかいイメージを与える表現になっていて、電話やメールなどのコミュニケーションツールを使っている中で、先方に「来てほしい」という気持ちを伝えるときに、とても便利な言葉です。
類語や言い換え表現にはどのようなものがある?
日本語には、さまざまな表現方法があります。「お越しいただく」にも、同じような気持ちを相手に伝えられる「別の言葉」があります。