「経緯」とは?簡単に基礎知識を解説
「経緯」は、複数の意味と読み方を持つ言葉です。同じ漢字であっても、読み方によっては異なる意味で用いられることがあります。そのため、文章を正しく理解するには、それぞれの意味や使い方を把握したうえで、前後の内容も踏まえて意図を読み取る必要があるでしょう。
それでは、経緯が持つ複数の意味や読み方、背景との違い、使い方・例文を確認していきます。
意味は「物事における一連の出来事の推移」など
【けい‐い経緯‐ヰ】
(名)スル
1.縦糸と横糸。
2.縦と横。
3.南北と東西。経線と緯線。また、経度と緯度。
4.物事の筋道。いきさつ。顛末(てんまつ)。「事件の―を話す」
5.秩序を立てて治め整えること。
「本朝支那の言語文字を―して用うること千有余年」〈西村茂樹・明六雑誌一〉
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「経緯(けいい)」とは、「物事における一連の出来事の推移」などを指す言葉です。「どのようなことが起こり、どういった事情によって物事が現状に至ったのか」を理解できる情報のことを、経緯といいます。
また、「縦糸と横糸」「縦と横」「南北と東西」「経線と緯線」「経度と緯度」「秩序を立てて治め整えること」を指す場合もある言葉です。
経緯の複数の読み方
経緯の読み方は、「けいい」以外に「いきさつ」「たてぬき」「たてよこ」もあります。これらの読み方のうち、一般的に使われているのは「けいい」や「いきさつ」です。
経緯を「いきさつ」と読む場合には、「物事のこみいった事情」「事件の経過」を意味します。
いき‐さつ【経=緯】
物事のこみいった事情。事件の経過。「これまでの経緯を語る」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
また、「たてぬき」と読む場合の意味は、「機(はた)の縦糸と横糸」「縦と横」「事の始終」です。「たてよこ」と読む場合には、「縦と横」「縦糸と横糸」を指します。
たて‐ぬき【▽経▽緯】
1 機はたの縦糸と横糸。けいい。
2 縦と横。けいい。
3 事の始終。すべて。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
経緯と背景の違い
経緯と少し似た意味を持つ言葉に、「背景」があります。経緯と背景の違いは、以下のとおりです。
・経緯……物事の筋道。いきさつ。顛末(てんまつ)。
・背景……物事の背後にある事情。
物事に関する意味でそれぞれの言葉を用いる場合、経緯が「物事の出来事の一連の流れ」を指すのに対し、背景は「物事の背後にある事情」を指します。経緯と背景では、どのような流れだったのかを伝えるのか、物事が起こった事情を伝えるのかという違いがあるのです。
また、経緯と背景には、どちらにも物事に関するものではない意味があります。物事に関するものではない意味も、経緯が「縦と横」、背景が「絵画や写真における背後の光景」などの意味で、それぞれで大きく異なります。
経緯の使い方・例文
それでは、経緯の使い方を簡単な例文で確認しておきましょう。
・関係者に今回の事件の「経緯(けいい)」を話した。
・あの国の「経緯(けいい)」はどれほどだろうか。
・彼女にはこれまでの「経緯(いきさつ)」を語って、理解を求めようと思います。
これらのうち、「あの国の経緯(けいい)はどれほどだろうか」と表現した文章での経緯とは、地理座標系における「経度」と「緯度」を指したものです。このように、地理座標系における経度と緯度を、あわせて「経緯(けいい)」もしくは「経緯度」と表現することがあります。
経緯の関連語もチェック!
経緯の関連語も、あわせてチェックしておきましょう。
経緯の類語・言い換え表現と、経緯と読み方が同じ言葉は以下のとおりです。
〈経緯の類語・言い換え表現の例〉
・過程
・いきさつ
・顛末(てんまつ)
・一部始終
・プロセス
〈経緯(けいい)と読み方が同じ言葉の例〉
・敬意
・軽易
・敬畏
それでは、これらの言葉の意味などを解説します。
経緯の類語・言い換え表現
経緯の類語・言い換え表現の例とその意味は、以下のとおりです。
・過程
……物事が変化し進行して、ある結果に達するまでの道筋。
・いきさつ
……物事のこみいった事情。事件の経過。
・顛末(てんまつ)
……事の最初から最後までの事情。一部始終。
・一部始終
……成り行きの初めから終わりまで。
・プロセス
……仕事を進める方法。手順。過程。経過。
このように、経緯の類語・言い換え表現もそれぞれで少しずつ異なるニュアンスがあります。
同様に「けいい」と読む言葉1:敬意
経緯と同様に「けいい」と読む言葉には、敬意が挙げられます。
敬意とは、「尊敬する気持ち」や「それを示す行為や態度」のことです。多くの場合、「敬意を表する」「敬意を払う」「敬意をこめる」などと用います。
敬意を表する方法には、敬語を用いた言葉遣いや相手を尊重する態度、礼儀正しい行動などがあります。相手に敬意を払うことは基本的なマナーであり、コミュニケーションの円滑化や人間関係の構築・維持に役立つものです。
同様に「けいい」と読む言葉2:軽易
経緯と同様に「けいい」と読む言葉には、軽易も挙げられます。軽易とは、「手軽でたやすいさま」「軽率なさま」「あなどり、軽んずること」を指す言葉です。
たとえば、簡単な問題であると伝えるときに、「それは軽易な問題だ」などと用います。また、軽率なさまだと注意したいときには、「軽易な振る舞いが多いですよ。ほどほどにしてくださいね」などと表現可能です。
経緯という言葉を理解しよう
経緯の読み方は、「けいい」「いきさつ」「たてぬき」「たてよこ」と複数あります。読み方によっては言葉の意味自体が異なってくるため、文章を読む際は注意が必要です。
経緯の読み方で多いのは、「けいい」や「いきさつ」です。「けいい」と読む場合には、「物事における一連の出来事の推移」「縦糸と横糸」「縦と横」「南北と東西」「経線と緯線」「経度と緯度」「秩序を立てて治め整えること」など、とくに多くの意味が含まれています。
経緯と少し似た意味を持つ言葉には「背景」がありますが、物事の一連の流れなのかそれとも事情なのかが異なります。
経緯の類語・言い換え表現も少しずつ異なるニュアンスが含まれる場合があるため、実際に使用する際は注意しておきましょう。
経緯や関連する言葉の意味・使い方などを正しく理解し、ぜひ日常やビジネスシーンで活用してください。
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