「お送りいたします」は間違い?
「お送りいたします」と耳にすると、一瞬違和感を覚えませんか? なぜそのように感じるのか、まずは「お送りいたします」を品詞分解をしてみましょう。
前半部分、「お送り」は、「送る」という動詞の名詞化「送り」に、接頭語の「お」をつけた謙譲語Ⅰ。後半部分、「いたします」は、動詞「する」の謙譲語Ⅱ(丁重語)で「いたします」という形で用いられます。
「お送りいたします」は尊敬語として間違ってはいません。ですが、「お送りいたします」に違和感を覚える理由は、「送る」という自分の動作に「お」をつけているからではないでしょうか。ここで、文化庁の「お」についての解説を紹介します。
自分側の動作やものごとなどにも、「お」や「御」を付けることはあります。
自分の動作やものごとでも、それが<向かう先>を立てる場合であれば、謙譲語Iとして、「(先生を)お待ちする」、「(山田さんに)御説明をしたい」など、「お」や「御」を付けることには全く問題がありません。
また「私のお菓子」など、美化語として用いる場合もあります。
「お」や「御」を自分のことに付けてはいけないのは、例えば、「私のお考え」「私の御旅行」など、自分側の動作やものごとを立ててしまう場合です。
この場合は、結果として、自分側に尊敬語を用いてしまう誤用となります。
(文化庁「敬語おもしろ相談室」より)
「お送り致します」のように、「いたします」を「致します」と表記していることがあります。「お送りいたします」の「いたします」は、補助動詞で使用する場合は「ひらがな」表記と文化庁が定めています。よって、「致します」は間違いです。
ビジネス等で使う時の注意点
では、ビジネスシーンで使用する際にはどのような注意が必要なのでしょうか。「送ります」や「お送りいたします」という表現を使っても、問題はありません。「送ります」では、カジュアルすぎると感じるときに、「お送りいたします」を使用するとよいでしょう。ここで混同してはいけないのが、「送らせていただきます」です。丁寧な表現をしようと「させていただく」を使用する方が多いと思いますが、文化庁の指針で確認してみましょう。
「(お・ご)・・・(さ)せていただく」といった敬語の形式は、基本的には自分側が行うことを
ア)相手側又は第三者の許可を受けて行い
イ)そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合に使われます
したがって、ア)、イ)の条件をどの程度満たすかによって、「発表させていただく」など、「・・・(さ)せていただく」を用いた表現には、適切な場合と、余り適切だとは言えない場合とがあります。
(文化庁「敬語おもしろ相談室」より)
「させていただく」を使用する場合には、まず、ア)の相手側又は第三者の許可を受ける必要があるので、「送る」行為にもハードルが高くなってしまいます。注意が必要でしょう。
▼あわせて読みたい
使い⽅を例⽂でチェック
「お送りいたします」の使用例を、チェックしましょう。