急須の素材と特徴
急須には、「陶器製・鉄製・磁器製・ガラス製・樹脂製」の5種類があります。素材によって特徴が異なるので、好みに応じて選びましょう。
まろやかな口当たりになる「陶器製」
陶器製の急須は数多く販売されていますが、中でも「常滑焼(とこなめやき)」と「萬古焼(ばんこやき)」が代表的です。鉄分を多く含んだ粘土とお茶に含まれるタンニンが反応することで、渋みや苦みがなくなり、まろやかな口当たりになります。
また、陶器製は全般的に保温性・吸水性・耐熱性に優れているため、温かいお茶を長く楽しむのに向いています。
ただし、内部に香りや成分を吸着しやすいため、いろいろな種類の茶葉を使うには注意が必要です。
使い込むほど独特の風合いが出てくることから、お茶好きな人に好まれる素材です。
耐久性に優れている「鉄製」
長く使える急須を探している人には、南部鉄器を代表とする「鉄製」の急須がおすすめです。
優れた耐久性が特徴で、存在感のある重厚なデザインはインテリアとしても人気があります。近年ではカラフルなものもあり、バリエーションが増えたことも魅力です。
鉄製の急須は、もともとお湯を沸かすために作られたものなので、お茶を沸かすのにも向いています。表面や内部にホーロー加工が施されたものを選べば、お手入れがしやすく、サビの心配もありません。
しかし、ホーロー加工は鉄分が溶け出さないので、鉄分補給を期待する場合には避けた方がよいでしょう。
茶葉そのものの味を引き出す「磁器製」
苦みや渋みも含め、茶葉本来の味を楽しみたいなら「磁器製」の急須がよいでしょう。有名なのが「有田焼」で、つるつるとした表面は光沢を放ち、高級感もあります。
陶器製のように香りや成分が吸着しないので、いろいろな種類の茶葉を楽しむことができ、お手入れしやすいことも魅力です。
ただし、薄い素材が多いため、ひびや割れなどには注意が必要です。
色合いや動きも楽しめる「耐熱ガラス製」
「耐熱ガラス製」の急須は中身が見えるため、茶葉が開くところや対流によって躍る様子、色合いの変化を楽しむことができます。
高温にも耐えられる特殊加工が施されており、電子レンジに対応しているものは、お茶が冷めても温め直せるので便利です。ただし、耐熱加工が施されていないガラスは、熱湯を注ぐと割れてしまう危険性があるので注意しましょう。
スタイリッシュでおしゃれなデザインのものが多いので、紅茶やハーブティーを楽しむ際にもおすすめです。
丈夫で割れにくい「樹脂製」
「樹脂製」の急須は、うっかり落としてしまっても割れない丈夫さと、お手入れしやすいことがメリットです。耐熱ガラス製のように透明で中身が見えるものを選べば、茶葉の様子やお茶の色合いなども楽しめます。
また、鉄製や磁器製などに比べると軽量のものが多く、握力が少ない子どもや年配の人でも使いやすいことも魅力です。
耐熱性や耐水性にも優れており、価格帯もリーズナブルなので、普段使いに一つあると便利でしょう。
茶こしのタイプ
急須に付いている茶こしのタイプにも種類があります。お茶の味やお手入れのしやすさに関係するパーツなので、それぞれの特徴を知っておきましょう。
一体型タイプ
茶葉本来の味わいを重視したい人には、「ささめ」と呼ばれる、内部に直接茶こし用の穴が開いた「一体型タイプ」がおすすめです。
急須内部の空間が広いため、お湯を注ぐと茶葉が踊り、うまみや香りをしっかり引き出せます。
ただし、使用後のお手入れには少々手間がかかることがデメリットです。抽出後の茶がらが取り出しにくく、内側に茶しぶが付きやすいので、丁寧に洗う必要があります。
網型タイプ
お手入れのしやすさを重視したい人には「網型タイプ」がよいでしょう。茶こしの取り外しが簡単なので、抽出後の茶がらが楽に取り除ける上、食器洗い洗剤とスポンジを使ってきれいに洗えます。茶こしを取り外せば、ティーバッグのお茶も入れられます。
ただし、茶こしによって急須内部の空間が狭くなるため対流が起こりにくく、一体型タイプと比べると抽出力が劣ることも。また、浅いタイプの茶こしは、茶葉がお湯につからないこともあるので注意が必要です。
急須を選ぶときのポイント
人数や使い方に合った急須を選ぶには、どのような点をチェックすればよいのでしょうか。
おいしいお茶が入れられるよう、選ぶ際に押さえておきたいポイントを紹介します。
お茶を入れる量
まずは急須の「容量」をチェックします。人数分のお茶を入れるのに適したサイズを選びましょう。目安は以下の通りです。
・1人分:100~150ml
・2~3人分:200~350ml
・4~5人分:400~550ml
平均的な湯のみの容量は、60~100mlほどなので、この値を基準に計算してみてもよいでしょう。
ただし、急須が大き過ぎるとお茶が出すぎて渋くなったり、逆に小さ過ぎると何度も入れる手間がかかったりします。飲む人数や使用頻度によって、最適な容量を選択しましょう。
急須とフタのすり合わせ
「すり合わせ」とは、急須本体とフタが合わさる部分のことです。
よい急須を選ぶには、すり合わせ部分が丁寧に作られているか、急須とフタがぴったり合うかどうかが重要なポイントになります。この部分に隙間があると茶葉を十分に蒸らせず、注いだお湯の温度も下がりやすくなるため、おいしいお茶を入れることができなくなってしまうのです。
また、お茶を注ぐ際にフタからポタポタと漏れ出てしまうこともあります。
急須を選ぶ際には、すり合わせに隙間がないか、がたつきがないかをしっかり確認しておきましょう。
持ち手のタイプ
急須の持ち手は、「横手型・上手型・後手型・宝瓶」の4種類に分けられます。
最もスタンダードなタイプは「横手(よこて)型」です。親指でフタを押さえながら、片手でお茶を注げるので、複数の湯飲みにも楽に入れられます。
「上手(うわで)型」は、持ち手が急須の上部分に付いているため、熱いお茶を入れるのに便利です。大容量タイプでも持ち上げやすいので、たっぷりお茶を楽しめます。
ティーポットのように、注ぎ口の反対側に持ち手が付いているのが「後手(うしろで)型」です。利き手に関係なく使えるので、向かい合っている人にも注ぎやすいでしょう。
「宝瓶(ほうひん)」は持ち手がなく、低温で入れる玉露などの高級な煎茶に向きます。持ち手がない分、収納の際にも場所を取りません。
それぞれの特徴を踏まえ、自分が使いやすいタイプを選びましょう。
陶器製のおすすめ急須
お茶の渋みや苦みが苦手な人なら、まろやかな口当たりになる「陶器製」の急須がおすすめです。
レトロでかわいい見た目のものも多く、お茶を味わいながら、ほっこり安らぐ時間を過ごせるでしょう。
藤総製陶所「萬古焼 至高急須(大)焼締め」
ふっくらしたフォルムが味のある陶器製の急須です。丸みを帯びていることで、お湯を注いだときに茶葉が対流しやすく、お茶本来のうまみをしっかり引き出せます。
茶こし穴の大きさや数は、おいしいお茶が入れられるよう職人さんが試行錯誤を重ね、一つ一つ手作業で作られています。
内側がガラス仕上げになっていることで洗いやすく、茶しぶも付きにくいので、長くきれいに使えるでしょう。
注ぎ口の形状にも工夫が施されており、お茶を注ぎ切りしやすく、最後の一滴まで楽しめるように作られています。
商品名:藤総製陶所 萬古焼 至高急須(大)焼締め
西海陶器「Karakusa SS急須」
唐草模様が華やかな波佐見焼・翔芳窯の急須です。職人さんによって一つ一つ模様が描かれており、連続性のあるツタには「繁栄」の意味が込められています。
取り外しが可能な茶こしはステンレス製で、お手入れがしやすく、抽出後のお茶がらも簡単に取り除けます。茶こしの目孔が細かいこともポイントで、小さな茶葉がお茶に紛れ込んでしまうこともありません。
いろいろな種類のお茶を入れても、常にクリアなお茶を入れることができるでしょう。
商品名:ステンレス Karakusa SS急須
鉄製のおすすめ急須
長く使える急須を探しているなら、鉄製がおすすめです。
近年は、カラフルなデザインで、インテリアとして見栄えがするものも多数出ているため、プレゼントにも向いています。
及源鋳造「鉄瓶 東雲亀甲1L(IH対応)」
底面に厚みを加え、ガスコンロはもちろん、IHでも使える鉄製の急須です。容量は1.1lと大き過ぎることも小さ過ぎることもなく、鉄瓶の中では使いやすいサイズでしょう。ツル(持ち手)部分を倒せば、省スペースで収納が可能です。
内部にはホーロー加工がされておらず、まろやかなお湯が茶葉のうまみを引き出します。
本体に施された亀甲模様には、長寿吉兆の願いが込められており、縁起のよいものです。フタに付いた細いつまみは「ごまの花」をモチーフにデザインされたもので、フォルムを引き締めるのに一役買っています。
商品名:及源鋳造 鉄瓶 東雲亀甲1L(IH対応)
のレン「南部鉄器 急須 カラー アラレ」
ニューヨークの現代美術館MoMAに展示された実績のある、洗練されたデザインと、鮮やかな色が特徴の南部鉄器の急須です。部屋に置いておいてもインテリアとして見栄えがよく、プレゼントにしても喜ばれるでしょう。
内部にはホーロー加工が施されているため、サビが発生する心配がなく、お手入れも簡単に行えます。
本体は厚みがあるため、中身が冷めにくく、ゆっくり温かいお茶を楽しめることもうれしいポイントです。
使えば使うほどに味が出てくるため、長く愛用したくなるでしょう。
商品名:のレン 南部鉄器 急須 カラー アラレ
磁器製のおすすめ急須
茶葉本来の味や香りを楽しみたいなら「磁器製」の急須がよいでしょう。注ぎやすくお手入れがしやすい、おすすめの磁器製を紹介します。
白山陶器「茶和 急須(右手用) 白磁」
握りやすい持ち手と、指が届きやすいフタのつまみで、片手でも楽にお茶を注げるデザインになっています。
つまみ部分は本体の縁にかけることができるので、茶葉やお湯を入れる際も置き場所に困ることがなく便利です。茶こしは急須と一体になっているタイプですが、口縁が広めになっていることで茶がらを取り出しやすく、内部もきれいに洗えます。
すっきりとしたシンプルなデザインは、どんな部屋の雰囲気にもなじむでしょう。
商品名:白山陶器「茶和 急須(右手用) 白磁」
テーブルウェアイースト「エッグ急須 480cc」
コロンとした丸い形がかわいらしい印象の急須です。短い注ぎ口により切れよく注げるため、お茶が垂れる心配はありません。
たっぷり入る480ccサイズで、大きめの湯飲みやカップでお茶を飲みたいときにも、お湯を足す手間がなく便利でしょう。
また、取り外しのできる茶こしが付いているので、お手入れがしやすいのも魅力です。口が広く、急須の底までしっかり洗えます。
カラーは粉引・黄瀬戸・アメ・シルバーの4色です。手持ちの食器に合わせて、コーディネートしてみてはいかがでしょうか。
商品名:テーブルウェアイースト エッグ急須 480cc
耐熱ガラス製のおすすめ急須
茶葉の動きや色の変化など、視覚的にもお茶を楽しみたいなら、耐熱ガラス製の急須がおすすめです。
お茶が冷めたらそのまま温め直せる、電子レンジ対応の商品を二つ紹介します。
HARIO「茶茶急須 丸」
大きめの茶こしで茶葉が踊る様子を楽しめる、耐熱ガラス製の急須です。
丸みを帯びたシンプルなデザインなので、日本茶はもちろん、紅茶やハーブティーなど、さまざまな種類に使えます。特殊加工が施されているため、冷たいお茶から熱いお茶まで対応し、シーズン問わず活用できることもポイントです。
また、注ぎ口は切れのよさを考慮したデザインで、フタのつまみも手になじみやすい形になっています。
茶こしを外せば電子レンジで温め直しができる点や、口径が大きく洗いやすい点も魅力です。
商品名:HARIO 茶茶急須 丸
KINTO「UNITEA ワンタッチティーポット」
フタ部分にストレーナーが付いているデザインで、ポットに直接茶葉を入れて使えます。注ぐ際にストレーナーがしっかり茶葉をキャッチするため、お茶に紛れ込むことはありません。
空間が広いことから対流が起こりやすく、お茶のうまみや香りもしっかり引き出してくれます。
フタ部分はストレーナーとパッキンに分解できるので、お手入れがしやすく、食洗機で丸洗いすることも可能です。
幅の広いハンドルは大人でも子どもでも握りやすく、楽に持ち上げられるよう設計されています。本体は電子レンジ対応です。
商品名:KINTO UNITEA ワンタッチティーポット
樹脂製のおすすめ急須
樹脂製の魅力は何といっても割れないことです。軽量な商品が多いため、持ちやすさや注ぎやすさにもこだわって選べば、子どもでもお茶を入れられるでしょう。
煎茶堂東京「透明急須」
「究極にシンプルにお茶を入れられる」ことをコンセプトに作られた、1人用の急須です。一見、ガラスのような見た目をしていますが、樹脂製なので割れる心配はありません。また、樹脂に厚みがあり、お茶を入れた本体を手で持っても熱くないので、持ち手がなくても楽に注げます。
直径130×高さ65mmのコンパクトサイズなので、食器棚に入れても場所を取らず、積み重ねて収納することも可能です。
取り外しのできる茶こし付きで、使った後のお手切れも簡単に行えます。
利き手を選ばず使うことができ、子どもからお年寄りまで幅広く使いやすいデザインといえるでしょう。
商品名:煎茶堂東京 透明急須
曙産業「クリアティーポット L ポリエステルメッシュ 急須タイプ」
プラスチック製で割れにくく、長く使うことができる急須です。茶こしは目が細かいポリエステル製で、どんなに小さな茶葉もお茶に混じってしまうことはありません。
取っ手は持ちやすい形状で、注ぎ口の切れもよいので、お茶を注ぎやすいでしょう。容量は480mlとたっぷり入り、食洗機に対応していることもうれしいポイントです。
ガラスのように透明なので、茶葉の様子や色味の変化を見て楽しむこともでき、お茶の時間が楽しくなるでしょう。
商品名:曙産業 クリアティーポット L ポリエステルメッシュ 急須タイプ
トップ画像/(C)Shutterstock.com
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