「回避依存症」の男女の恋愛傾向とは?
「回避依存」傾向にある人は、一見、恋愛上手に感じます。気があるようなそぶりを見せたかと思うと、スッと距離を取る態度は、恋愛の駆け引きに見えなくもありません。また、一人の人と深く親しい関係となることを恐れ、ドライな付き合いを好むため、友達以上・恋人未満の異性が数人いるということも。
「回避依存」の人の恋愛傾向とはどのようなものなのでしょうか。事前に知っておくと、心の準備もできます。
初対面の印象がよい
人から嫌われたくないと思っているので、身だしなみに気をつけ、好印象を与えるような態度や行動をとります。特に男性では、相手に好意を抱くと積極的にアプローチすることも。本音を出さず、相手に踏み込むことをしないので、相手は安心して心を開きやすくなります。
両想いになると急に冷たくなる
両想いになり親しくなると、急に冷たくなり、相手を不安にさせてしまいます。これは、嫌いになったわけでも、駆け引きでもありません。単にベタベタした関係が苦手なだけなのです。
距離を詰められると逃げようとする
もっと親しくなろうと踏み込まれると逃げようとするのも、「回避依存」の人によく見られることです。親密な関係になって、それがダメになったときに相手を失うことが怖いため、精神的に相手に依存しすぎるのを避ける傾向にあります。
連絡してこない
相手の気持ちはおかまいなしに、自分の気持ちや都合を優先し、相手に合わせることをしないので、連絡してこないことも多々。連絡してこないだけではなく、連絡に対する返信もなく、まさに音信不通。放っておいたら、そのうち連絡が返ってきます。
自分を受け入れてくれる相手へ依存しやすい
親密な関係を避ける傾向がある一方、自分のペースで思い通りに付き合える相手とは仲良くなり、関係が続きやすいです。しかし、そのような人はなかなかいないもの。自分を受け入れ理解してくれる相手とのつかず離れずの関係が長くなり、信頼が強固になると、嫌われたくないと強く思い、失うことが怖くなって、かえって依存しやすくなることもあります。
「回避依存」になる原因
具体的には、親や親戚などから可愛がられてたくさんの愛情を注がれ、何もかも親が口出しするような、過保護や過干渉な中で育ったこと、厳格な家庭環境で「人に甘えてはいけない」と厳しく言われ続け、自分らしく心を開いて他人と信頼関係を築く経験ができなかったこと、ネグレクトのように養育者の資質や状況に問題があって、幼少期に十分な愛情を受けられずに育ったこと、一貫性のない態度に翻弄されたことなどのケースがあります。
また、大切に思っている人からひどい仕打ちをされた、裏切られた、など、過去のつらく悲しい経験が心の傷となり、適切な手当てがされないまま「人を信用できない」というトラウマになっている場合も、人との距離を置いてしまうことにつながりやすくなります。
愛情が多すぎても少なすぎても要因になる、また、過去の体験が影響する、ということは、状況や環境によっては誰にでも起こりうる、と言えます。回避することで自分を守り、自分らしく生きるために会得してきた術、でもあるのかもしれません。
「回避依存」傾向の対処法はあるの?
自分が傷つかないように回避することは、自分を守るために必要ではありますが、そればかりでは生きづらさを感じることもあります。なんとかしたいと思っている方へ、以下では克服についてのヒントを紹介します。
冷静に自分と向き合う
まず、少し勇気を出して自分を見つめ直し、これまでの人間関係や恋愛での経験について振り返ってみましょう。幼少期を思い返すのは辛いと感じるかもしれません。しかし、「回避依存」の原因が「過去の自分の中」にあるのなら、記憶をたどってみると納得できる場合も。振り返る方法として、紙に書き出してみることもおすすめです。もう一人の自分が自分を眺めるように、客観的に分析してみてください。感情がコントロールできず辛くなってしまうようであれば無理をせず、専門家の力を借りましょう。自分を受け止め、認めることが第一歩なのです。
自分を大切にする
辛いことばかりに目を向けていると、なかなか自分を好きになれないもの。自分のための時間を作り、好きなこと、楽しいこと、体や心が喜ぶことをしてみましょう。仕事や趣味に没頭してみるのも一つの方法です。自分を優先する時間を積み重ねて、自分を信頼すること、すなわち、自信が持てるようになると、他人に心を開くことができるようになります。
信頼できる相手を作る
心を開ける相手を作ることも重要です。精神的な自立ができてくると、「他人を信頼しても大丈夫」「心が傷ついても自分が壊れることはない」と思えるようになります。少しずつ本音で話す練習をしてみるとよいでしょう。相手には、自分が「人に嫌われるのが怖い」「親密な関係を築くのが苦手」など「回避依存」の特徴があるということを伝え、見守ってもらうようお願いし、理解を得ておくと安心です。
「回避依存」傾向の人にとって、自分と向き合うことや他人に心を開くことは、容易ではありません。時間がかかることでもあるのです。適切な方法がとれるように、カウンセリングを利用するのもよいでしょう。
相手が「回避依存」と思われる場合の対処法は?
自分ではなく、相手が「回避依存」傾向にある場合は、相手を安心させることがポイント。ペースを尊重し、一定の距離を保ちながら少しずつ関係を深め、相手に信頼してもらえるような行動を心がけましょう。「回避依存」の人は、心の底で「嫌われたくない」「傷つきたくない」と思っています。理解を示す言葉をかけることで、自分は味方であることを伝えられるとよいですね。
少しずつでも、自分を信じること
「回避依存」は病気ではありません。マイナスなイメージを抱かれがちですが、自分らしく生きるために会得してきた術でもあるのです。しかし、そのことで不都合を感じているなら、信頼できる人に協力してもらって、自分と向き合うことに取り組むとよいでしょう。人を信頼し、信頼されることで、少しずつ改善が見られます。何よりも、自信をもって自分らしく生きられるようになることで幸せを感じられ、ますます愛される存在になることができるでしょう。
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監修
益子雅笛
株式会社M.D.PROJECT代表取締役
精神科専門医・心療内科専門医 日本医師会認定産業医
精神科・心療内科クリニック勤務の他、産業医・顧問医として健康に働くためのアドバイス、メンタルヘルス対策の助言指導などを行っている。少人数のセミナーの開催や音声配信「からだの広場」にて、疾病予防や健康への意識を高める活動にも取り組んでいる。心身のバランスを大切に、自身で健康になれるようなアドバイスを心がけている。
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