不器用の意味は「器用でないこと」
不器用（ぶきよう）とは「器用でないこと」という意味の言葉です。音が変化して「ぶきっちょう、ぶきっちょ」と発音することも。また「不器用」は名詞ですが、「不器用だ」は形容動詞です。不器用な状態、もしくは不器用であることは「不器用さ」という名詞を使います。一方、器用も名詞で「器用だ」は形容動詞です。器用な状態や器用であることは「器用さ」という名詞で表現します。
手先が器用でないこと
手先が器用でないことを「不器用」といいます。お箸を上手に持てないことや、豆などの転がりやすいものを上手に摘まめないことを「お箸の使い方が不器用」という風に表現することがあるでしょう。たとえば次のように、手先が器用でないことを表現します。
【例文】
・不器用なので、線に沿って切ることができない。
・不器用ながらも頑張ってマフラーを編んだら、やっぱりまっすぐには仕上がらなかった。
・簡単なプラモデルなのに何日もかかってしまうなんて本当に不器用ね。
道理に外れていること
世の中の常識や道理に外れていることを「不器用」ということがあります。卑劣で卑怯な様子を指して「人間としての道を外した不器用な生き方」という風に表現することも。ただし現代ではあまりこのケースでは使うことがなく、古い小説や浄瑠璃の原作などにいくつか例があるだけです。人としての道理に外れていることは、「道理に合わない」「人の道に外れる」「公徳心の欠如した」というように表現することが一般的といえるでしょう。
行動が器用でないこと
行動が器用でないことを「不器用」と表現することがあります。たとえばとても感謝をしているのに、言葉がすぐに出てこなくて、相手から非常識な人間だと誤解されるような人は、不器用な人だといえるでしょう。また次のように、行動が器用でないことを不器用と表現します。
【例文】
・彼は不器用なので愛情表現をするのが苦手だ。しかし、奥さんをとても大切にしているのは、奥さんの顔からよく分かる。
・不器用な言葉だからこそ、かえって心がこもっているように感じた。ペラペラと立て板に水のようにお礼を言われても、あまり心がこもっているようには思えないものだ。
・彼女の不器用さは、彼女の心が正直であることを際立たせている。
器用とは「不器用ではないこと」
反対に、器用とは「不器用ではないこと」を意味する言葉です。不器用とは手先や行動、言葉などがスムーズではない様子を指すことが多いので、「器用だ」といえばスムーズな様子を指します。具体的には、器用という言葉は次の4つの意味で使われることが多いでしょう。
・手先や体の動きがスムーズであること
・柔軟に対応すること
・優れた才能があること
・要領が良いこと
手先や体の動きがスムーズであること
手先の動きがスムーズなことを器用と表現することがあります。たとえば手工芸や楽器など手先を使った作業が得意な人は器用な人ということが多いです。
【例文】
・彼女は手先が器用なので、ハンドクラフトが得意だ。
・彼は器用にその難しい曲をすらすらとピアノで弾いた。
・お父さんは小さな部品を器用に組み合わせて、立体パズルを完成させた。
手先だけでなく、体の動きがスムーズな様子を器用と表現することもあります。
【例文】
・その男の子は器用に身体を丸めて、小さな穴に入っていった。
・彼女は器用に手足を動かして、今流行りのダンスを踊っている。
・その猫は器用に水たまりを避けて、足元を濡らさずに歩いている。
柔軟に対応すること
対応が柔軟であることを、器用と表現することもあります。不平不満を言わずに、上手に立ちまわって穏便に物事を収めることも、器用という言葉で表現できるでしょう。たとえば次の場面では、器用という言葉は柔軟な対応を示しています。
【例文】
・彼女の立ち回りは器用で、誰もが満足できた。
・揉め事が起こりかけたが、彼の器用な対応でトラブルにならずに済んだ。
・とにかく有難く受け取っておくほうが良いよ。そのほうが器用に立ち回れるよ。
優れた才能があること
優れた才能があることを器用と表現することがあります。ただし、あまり現代語で用いられることは少なく、古典の中に見られることが多いです。現代語では優れた才能があることを「不世出の才能がある」「卓越した才能がある」「抜きん出た才能がある」というように表現します。
【例文】
・彼女の頭の良さには舌を巻いた。まさに不世出の才能の持ち主といえるだろう。
・彼は数学に関して卓越した才能がある。
・あなたのお子さんに抜きん出た才能があることは明らかです。せっかくの才能を活かすためにも、もっとさまざまな経験をさせてあげてください。
要領が良いこと
要領が良いことを器用と表現することがあります。世渡りが上手で、失敗やトラブルを上手にくぐり抜けて生きている様子です。器用という言葉を要領が良いという意味で使うときの例文を紹介します。
【例文】
・彼女の生き方は器用だ。状況が変わっても何事もなく過ごしている。
・もう少し器用に生きられないの？いつも失敗ばかりで見ているだけでヒヤヒヤしてしまう。
・彼は器用に学業と仕事を両立している。
不器用には2つの漢字がある
一般的に「ぶきよう」は「不器用」と書きますが、「無器用」と書くこともあります。読み方も意味もまったく同じなので、使い分ける必要はありません。ただし、無を使った表現は、あまり現代では用いられることがないようです。しかし、明治時代や大正時代には一般的な用法であったことは文学作品からうかがえます。著名な作品の中から、無器用を使った例文をいくつか見ていきましょう。
・細帯一つになった母は無器用に金槌を使っていた。（芥川龍之介「子供の病気」）
・大抵な無器用なものでも清元や常磐津の一とくさり位は唄ったもんだ。（内田魯庵「二葉亭余談」）
恋愛において不器用とはどんな意味？
不器用な性格は、恋愛において影響することもあります。不器用なところが初々しいとプラスに評価されることがある一方で、あまりにも不器用な場合は本人も相手もつらい思いをすることがあるでしょう。恋愛において不器用とは、主に次の4つの状態を指します。
・素直な気持ちを表現できない
・自分に自信がなく積極的になれない
・愛情を言葉や態度として示すのが苦手
・相手への気遣いができない
