いい印象にしろ、悪い印象にしろ、この2つでその90パーセントが決まってしまうからだ。あなたが誰かに「温かい」「有能」という印象を与えることができれば、その人はあなたを信頼する可能性が高い。あなたを信頼してくれた人とは良好な人間関係を築くことができる。その人はあなたが何かをするときに、おそらくそれを支持し、応援してくれる。
ただ、ひとつ注意しなくてはいけないことがある。「温かさ」と「有能さ」は相反する特性と思われがちだということだ。
例えば、「あの人は確かに優秀だけれども、あの人のために働きたいとは思わない」あるいは「彼女はとても親切で優しいけれど、さほど頭がいいとは思えない」などと言われがちだということである。
シャシェフスキーも、マイケル・ジョーダンに対して最初はそういう印象を持っていた。マイケル・ジョーダンは確かにスーパースターだが、だからきっと自己中心的で気難しいに違いない、と思った。これは言い換えれば、「有能だが、温かくはないだろう」と思っていたということである。
だが、「この人は実は、有能なうえに温かい」と思ってもらうことは可能である。そのためにできることはひとつしかない。「礼儀正しくふるまうこと」である。
スポーツだけでなくビジネスでも同じ
これはなにもスポーツに限った話ではなく、ビジネスの現場でも同じだ。
あなたが会社で管理職やチームリーダーを務めているのなら、部下やメンバーと良好な関係を築くには、まず温かい人になるべきだ。そういう場合、どうしても自分が有能であることを早く証明したいという気持ちに駆られる人が多い。
しかし、一度、温かい人だと感じると、その人に対する評価は上がりやすくなる。温かい人になることは、自分の影響力を高めるための早道ということだ。温かい人は信頼を得やすい。
信頼が得られると、自然に周囲から情報やアイデアが多く集まってくる。温かいと思われるためには、ささいな非言語コミュニケーション(例えば、ほほ笑みかけること、人の話にうなずくことなど)も有効だ。相手を受け入れようとしていることを態度で示す。また、周囲の人たちにも、その気持ちにもつねに気を配っているのだということが伝わるようにする。
マイケル・ジョーダンはコーチに対して丁寧にものを頼み、きちんと礼を言った。それによって単に温かい人間だと証明しただけではなく、彼の有能さをより強く感じさせることができた。礼儀正しい態度を取ることで、思いやりがあって、他人を尊重する人間であり、自分を律して集団に合わせることができる人間であるということを示せたのだ。
『Think CIVILITY(シンク シビリティ) 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である』(東洋経済新報社)
ジョージタウン大学マクドノー・スクール・オブ・ビジネス准教授
クリスティーン・ポラス
活気ある職場を作ることを目的とし、グーグル、ピクサー、国際連合、世界銀行、国際通貨基金、アメリカ労働省・財務省・司法省・国家安全保障局などで講演やコンサルティング活動を行う。 その仕事は、CNN、BBC、『タイム』『ウォール・ストリート・ジャーナル』『フィナンシャル・タイムズ』『フォーブス』など、世界中の1500を超えるテレビ、ラジオ、紙メディアで取り上げられている。 ノースカロライナ大学チャペルヒル校ケナン=フラグラー・ビジネス・スクールにて博士号取得。博士号を取得する以前は、スポーツ・マネジメントとマーケティングを行う大手企業IMGに勤務。 共著に『The Cost of Bad Behavior』がある。
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