ファインディングとは“案件開拓”を意味する言葉
ビジネスにおいて、ファインディングという言葉は案件開拓の意味で用いられます。例えば別の企業を買収したいと考えている企業であれば、どのような企業が買収に適しているかを調査したり、ターゲットとなる企業を絞って具体的にアプローチしたりする活動は、案件開拓のひとつといえるでしょう。
また、反対に自社の売却を検討している場合であれば売却先を見つけること、取引先を探している場合であれば取引先を見つけることなどもファインディングです。
■M&A(企業の合併・買収)の相手企業を見つけることも指す
M&Aの場面では、相手企業を見つけることをファインディングといいます。例えば、企業売却を検討している場合は売却先、買収を検討している場合は買収相手、合併を検討している場合は合併相手を見つけることです。
ファインディングは自社で行うことも不可能ではありませんが、近年はM&A専門会社に任せるケースが少なくありません。いずれの場合でも、まずはM&Aの相手に求める条件を定め、条件に合う企業をリストアップし、より詳細な条件で絞り込んでいく方法が一般的です。
ビジネスにおける“ファクトファインディング”とは
ファクトファインディング(fact finding)とは、直訳すれば「ファクト(事実)を見つけること」です。しかし、ビジネスにおいては、特定の目的のために事実を探り、状況を分析し、目的達成の方法を調査していくことを指します。
例えば、人事制度の見直しを目的に定めたとしましょう。現状の人事制度にどのような問題があるのか探り、報酬制度について実態を分析し、組織が効率よく機能しているのか調査し、問題点を解決できる新たな人事制度を構築します。
このように、ファクトファインディングには調査から分析、実験などの幅広い作業が含まれることが一般的です。いずれも綿密かつ正確に実施することで、ファクトが見つかりやすくなるでしょう。
■マーケティングや営業で用いられることが多い
ファクトファインディングはビジネスで広く用いられる言葉ですが、特にマーケティングや営業において活用されます。マーケティングや営業における事実とは、顧客ニーズのことです。
データ分析や顧客とのコミュニケーションなどを通じて、顧客が本当に求めていることを探し出していきましょう。正しくファクトファインディングを実施することで、正しい方向に向かってマーケティング活動、営業活動を行えるようになります。
■傾聴力と質問力が求められる
ファクトファインディングにより顧客ニーズを探し出すためには、傾聴力が必要です。「顧客はこれを求めているだろう」と最初から結果を想定してファクトファインディングを実施すると、顧客の本当のニーズを聞き出すことができず、顧客が感じていることを察することができません。顧客の話を丁寧に聞き取り、なおかつ態度などから真意を測る傾聴力を発揮しましょう。
また、顧客に適切な質問をすることもファクトファインディングには不可欠です。本当に求めていることを引き出すような質問を作成し、顧客の真意に近づいていきましょう。
■主観に影響を受けずに事実をつかむ
顧客が話す事柄には真実が含まれていますが、真実以外も含まれている可能性があります。特にマーケティングや営業を担当する人に主観や思い込みがあると、真実を真実ではないように受け取ってしまうかもしれません。
顧客の話を客観的に理解するためにも、まずは担当者自身が思い込みを取り払い、顧客の話も一度疑って検証することが必要になります。
■クライアントの真のニーズを理解する
顧客の話と客観的な事実を統合することで、顧客の本当のニーズが見えてきます。また、営業担当者自身の思い込みをすべて取り去ることで、バイアスのかからない真実のニーズが理解できるようになるでしょう。
■ソリューション(解決・解答)の提供で完結する
ファクトファインディングの目的は顧客の真のニーズを把握することですが、ファクトファインディングの工程はソリューションの提供で完結します。顧客が抱える問題やニーズを把握した上で、顧客が納得できる解決策を提示していきましょう。
顧客がソリューションを納得して受け取るためにも、まずは顧客が求めている真のニーズを分かりやすく説明し、理解しやすい資料を作成してソリューションを解説します。説得力を高めるためにも、営業担当者にはプレゼンテーションスキルが求められるでしょう。
ビジネスに役立つ“ベネフィットファインディング”
ビジネスの場面において、ベネフィットファインディング(benefit finding)という考え方が用いられることもあります。ベネフィットファインディングとは直訳すれば「利益を見つけること」です。つらい現実や逆境においても何かの利益を探し、自分にとって得となるものがあったと考えます。
■逆境から利益を得られたと感じること
ベネフィットファインディングでは、一見、好ましくない状況において利益や肯定的な変化を見つけます。「利益を得られた」「肯定的な変化があった」ということを認識することで、逆境やつらい現実、自分にとって何の得もない状況でも無意味ではなかったと自分を納得させることができるのです。
似たような考え方として、経験に意味をつける「意味付け」などがあります。いずれも逆境が無駄ではなかったと自分自身を納得させる際に用いられることが多いです。
■ポジティブシンキングにつながる
どんなに逆境やつらい状況であっても、ベネフィットファインディングにより「この状況からこのような利益を得られた」と考えることができれば、すべての物事は肯定的に受け取れるようになるでしょう。つまり、ベネフィットファインディングはポジティブシンキングにもつながる考え方といえます。
すべての物事をポジティブに捉えることができれば、どの経験も自分自身を成長させる貴重な経験になるでしょう。
例えば営業先で理不尽な理由から詰め寄られたとしても「これはある意味良い経験になった。次に同じ状況を目の前にしても慣れているのでスムーズに対応できだろう」と利益として受け止めるならどうでしょうか。気持ちが落ち込むこともなく、前向きに営業を続けることができるでしょう。
■ダメージからの回復を早めることもできる
ベネフィットファインディングをすることで、精神的なダメージからより短時間で回復できるようになります。例えば取引先に出向くときに、隣を通った車が水たまりを猛スピードで通り過ぎ、スーツに泥がついたとしましょう。
通常であれば気分は滅入り、汚れたスーツのままでは営業に行きづらいので、どうしようかと悩むところです。しかし、ベネフィットファインディングで考えれば、そのまま営業に行ったとしても「取引先が笑ってくれた。笑顔を提供できて良かった」となり、スーツが汚れたときに感じたダメージは一瞬で霧消されます。
また、デパートなどでスーツを買い替えた場合も「思わぬ素敵なスーツが買えた。汚れて良かった」と気持ちを切り替えることができるでしょう。
■困難な状況に適用するためにも活かせる概念
営業などの取引先と接する部署では、日々困難な状況にぶつかります。思ったような結果が得られなくて落ち込んだり、取引先に真意を理解してもらえずに心無い言葉を投げかけられたりすることもあるかもしれません。
しかし、困難なことや自分では解決できないことだけを見つめていても、物事は好転しにくいでしょう。何か良いことはなかったのかベネフィットファインディングで探り、自分にとって良い経験だったという風に考え直すこともできます。
もちろん現実を直視し、直すべき点を直すことも必要です。ベネフィットファインディングとファクトファインディングの両方を活用し、営業やマーケティングなどに活かしていきましょう。
状況ごとにファインディングを使い分けよう
ファインディングはさまざまなシーンで活用することができます。特にビジネスシーンでは、案件を開拓するファインディングから顧客ニーズを見つけるファクトファインディング、自分にとっての利益を見つけるベネフィットファインディングなどを使うことが可能です。状況に応じて適したファインディングを用い、営業やマーケティングのスキルを磨いていきましょう。
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