「退社」の意味は?
オフィスで電話を受けた時に、その電話が既に帰宅した社員宛だった場合、あなたはどのように伝えますか?「〇〇は退社しました」と伝えるのは正しいのですが、実は誤解を招く恐れがあります。以下で「退社」の意味と、オフィスで使う際の注意点を解説します。
意味
「退社」には二つの意味があります。一つは、既に業務を終えて会社から出たという意味。先に仕事を終えて帰った社員宛の電話対応などでよく使われる、「〇〇は退社しました」の「退社」です。もう一つは、会社を辞めたという意味で使われる「退社」です。
「退社」は、「退く(しりぞく)」と会社の「社」という言葉で成り立っています。そのために、会社での業務を終えて退いた(帰った)という意味の「退社」と、在籍していた会社を退いた(辞めた)という意味の「退社」が存在するのです。
たい‐しゃ【退社】
[名](スル)
1 勤務している会社を辞めること。「一身上の都合で退社する」「定年退社」⇔入社。
2 その日の勤めを終えて会社から退出すること。「五時半に退社する」⇔出社。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
ビジネス等で使う時の注意点
二つの意味がある「退社」という言葉。ビジネスで使用する場合は注意が必要です。「業務を終えて帰った」という意味で「退社」という言葉を使った場合でも、相手が「退職した」という意味で受け取られることも。
一般的には会社を辞めた場合は「退職」という言葉が使われますが、「退社」という言葉を使う人もいるので、相手の立場に立って、誰に対しても明確に伝わるように心がけましょう。
例えば、既に業務を終えて会社を出た社員宛に電話がかかってきた場合。「〇〇は退社しました」だけでは、業務を終えて帰ったのか、退職したのか判断がつきません。相手が聞き返してくれたらその場で誤解が解けますが、もし相手が疑問を持たず「退職」という意味に受け取ってしまったら、誤解を与えたままになってしまいます。
その日の業務を終えて会社を出たという意味で「退社」という言葉を使うなら、「〇〇は本日は退社いたしました」や、「〇〇は本日は失礼させていただきました」などと伝えると、退職の意味を持つ「退社」との違いが明確になり、誤解が生じることもないでしょう。
また、退職した意味で「退社」という言葉を使いたい場合は、「〇〇は△月△日付けで退社いたしました」というように、日付などを付け加えて、退職したということを明確ですね。
使い⽅を例⽂でチェック
上記で説明した例も含め、もう少し詳しく例文を見ていきましょう。
〇〇は本日は「退社」いたしましたので、明日の対応でよろしければ伝言をお預かりします
この「退社」は、業務を終えてもう会社を出たという意味の「退社」です。「〇〇は退社しました」では退職したと誤解を招く恐れがあるので、「本日は」と付け加えるといいでしょう。更に、「明日の対応でよろしければ」と前置きをして、伝言を預かる姿勢を見せると親切ですね。
「退社」するにあたり、引継ぎ資料を作成します
ここでの「退社」は、退職という意味で使われています。一般的に、会社を辞める場合は「退職」という言葉が使われますが、「退社」もよく使われる言葉です。
〇月〇日をもちまして、「退社」することとなりました
取引先の担当者などに、会社を辞めることをメールで知らせる場合のフレーズです。「〇〇様にはお世話になり~」、「これまで何かとお力添えをいただき~」などと、感謝の言葉を続けるといいでしょう。また、相手に安心感を与えるために、後任に関しても明記しておきましょう。
「退社」挨拶の返答の仕方
もし「退社」の挨拶のメールを受け取った場合は、どのように返答すればいいのかも知りたいところですよね。
もし取引先の担当者から「退社」の挨拶メールを受け取ったなら、これまでのお礼を述べ、今後の会社の発展と、その担当者の新しい環境での活躍を祈る内容を添えるのがマナーです。「退社」の挨拶のメールの返信で、興味本位にあれこれとプライベートなことを聞かないように注意しましょう。最後のやり取りでその人の印象が決まることもあります。転職先の会社で新たな担当者として顔を合わせる可能性もありますので、スマートな挨拶を心がけて、好印象を残すようにしましょう。
履歴書に「退社」と書いても良い?
「退社」履歴書に「退社」と書いても間違いではありませんが、「退社」には会社を辞める以外にも「業務を終えて会社から出た」という意味もあるため「退職」の方がふさわしいでしょう。
パートやアルバイトの場合は、「退社」や「勤務終了」という言葉を使用しても問題ありません。
また、病院や役所、学校など、「会社」ではない職場を辞める場合は「入職」「退職」という書き方がふさわしいため「退社」という表現は使わないようにしましょう。
類語や⾔い換え表現にはどのようなものがある?
「退社」の類語についてもチェックしておきましょう。
「退職」
「退職」は、会社を辞めたという意味で使われる「退社」の類語です。会社を辞めたという意味で履歴書に書くなら、「退社」ではなく「退職」を使いましょう。