「こけら落とし」とは、どういう意味?
「こけら落とし」とは新しく建設、もしくは改築した劇場や映画館などの初興行をあらわす言葉です。様々なメディアでよく耳にする表現ですが、劇場の初興行のことを「こけら落とし」という理由まで知る人は少ないかもしれません。
「こけら落とし」の意味を辞書でも確認しておきましょう。
【杮落(と)し:こけら落とし】新築または改築した劇場の初興行。また、開場行事。〔補説〕本来は劇場の初興行をいう語だが、運動施設などの開場行事に使われることもある。〔類語〕上演、公演、実演、上場、初演、再演、顔合わせ
出典:小学館 デジタル大辞泉
「こけら落とし」の演目は、それぞれの劇場の特性に合わせたものが選ばれ、特にこれといった基準はありません。しかし、一般的には慶事の内容が上演される傾向にあります。
歌舞伎からうまれた言葉に「こけら落としを見ると寿命が延びる」というものがあることからも、おめでたい出来事なのがわかるでしょう。
由来は「木の削りくずを払い落とすこと」
「こけら落とし」という言葉は、「木の削りくずを払い落とすこと」が由来です。そもそも「こけら」とは、薄く削がれた材木のくずのこと。さらにこれには昔、表面を覆っているものを削ぐことを「こく」と呼んでいたことが関係しています。
劇場を新築したり改築したりする最後の工程で、屋根の削りくずを落とすことを「こけら落とし」といい、転じて劇場などの完成後はじめての興行に用いられるようになりました。
漢字では「柿」と書いて「こけら」と読む
「こけら落とし」は漢字では「杮落とし」と書きます。こけらをあらわす「杮」は一見、果物の〝柿〟と同じ字のように見えますが、違う漢字です。目を凝らさないと違いがわからないほど似ているため、間違えないように注意しましょう。
「こけら」の杮の右側の部分、すなわち旁(つくり)は縦棒が貫かれているのに対して、果物の柿の旁はなべぶたの下が「巾」で構成されています。「柿」は9画、「こけら」は8画の漢字。「柿」はなべぶたを書いてから「巾」、「こけら」は横棒を書いてから「巾」と、筆順も異なります。
劇場だけでなくスタジアムやホールの公演にも
「こけら落とし」の由来が、劇場などを新しく作った際に屋根から出る木くずを払い落とす様子であることは既にお伝えしました。そのため本来の意味を考えると、当てはまるのは木造建築に限るように思えますが、実際には鉄筋の建造物について使っても問題ないとされています。また、劇場だけでなくイベントホールやスタジアムなどの初興行でも使用されます。「こけら落とし試合」や「こけら落としコンサート」といった言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。
ただし、厳密には屋根のない屋外施設の催し物に対して「こけら落とし」という表現を用いるのは誤りとされるため、注意が必要です。
【例文付き】「こけら落とし」の使い方
ここでは、「こけら落とし」を使った具体的な例文を確認しましょう。比喩的な使い方をすることはなく、そのままこけら落としの公演などに対して使用します。
・近所に新しくできたイベントホールの【こけら落とし】コンサートは大盛況だったと聞く。
・【こけら落とし】公演の評価が、その劇場の今後を左右するといっても過言ではない。
・新スタジアムの【こけら落とし】試合のチケットを手に入れられなかったのが悔やまれる。
・【こけら落とし】公演を見ると寿命が延びると、昔祖母が言っていた。
「こけら落とし」の類語・対義語
「こけら落とし」には似たような意味で使われる類語や、反対の意味をもつ対義語がいくつかあります。類語は「オープニング」「初興行」などで、対義語は「千秋楽」。いずれも劇場やスタジアムの公演に関連するもので、よく使われる言葉です。
ここからは、「こけら落とし」の類語と対義語の意味や使い方を詳しく解説していきます。