類語は「オープニング」「初興行」など
「オープニング」は開幕や開演、開場のことを意味します。サッカーや野球などにおいては、シーズンの開幕という意味でも使われます。
公演や試合が始まるという意味であり、新しくできた劇場やイベントホールでの初公演をあらわす「こけら落とし」とは若干語義が異なりますが、類語の一つと考えて良いでしょう。「野球のオープニングゲームを楽しみにしている」などのように使います。
「初興行」は「はつこうぎょう」と読み、意味は初めての興行です。「こけら落とし」と同じ意味であり、言い換え表現として使うことができます。「興行」とは、観客を集め料金を取って、演劇や音楽、映画などの催し物を公演することです。「芝居の初興行を観に行く」などと使います。
対義語は「千秋楽」
「千秋楽」は芝居や相撲などの最後の興行の日をあらわす言葉です。そのほか物事の最後、終わりという意味をもち、「人生の千秋楽」という使い方もします。新しくできた劇場などの初興行である「こけら落とし」とは、まさしく反対の意味であることがわかるでしょう。
縁起を担ぎ「千穐楽」という書き方をすることもあります。また、同じ意味ですが「千歳楽(せんざいらく)」「楽日(らくび)」「楽(らく)」など異なる呼び方もあるようです。
「こけら落とし」の由来は屋根に出る木のくずを払い落とすことでしたが、「千秋楽」の由来には複数の説があります。なかでも有力なのは、法要などで最後に演奏するものが雅楽の「千秋楽」という曲であったからとする説です。また、婚礼などでも歌われる「高砂」という謡曲の歌詞の最後に由来するともいわれています。
「千秋楽」は「こけら落とし」と同様に、日本文化の趣を感じさせる表現です。「千秋楽公演が今から話題になっている」などのように使います。
もう一度おさらい! 「こけら落とし」の意味や由来を理解しよう
「こけら落とし」とは、新しくできた劇場などの初めての興行をあらわす言葉です。
昔は表面を覆うものを削ぐことを「こく」と表現しており、木材から出る薄い木の削りかすのことを「こけら」と呼んでいたといわれています。
木造の劇場などの建築における最後の工程が、屋根の「こけら」を落とすことであったため、建物が完成した後のはじめての興行を「こけら落とし」と表現するようになりました。現在は木造建築の劇場だけでなく、鉄筋のコンサートホールやスタジアムの初興行にも使われています。
「こけら落とし」の類語は「オープニング」や「初興行」などで、対義語は「千秋楽」です。「こけら落とし」は耳にする機会が多いものの、その由来はあまり知られていない言葉の一つです。この機会に意味や由来を正しく理解して、趣ある日本語への造詣を深めましょう。
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