【目次】
「譲葉(ゆずりは)」の意味とは?
皆さんは「譲葉(ゆずりは)」という樹木を知っていますか? 名前は聞いたことがあるけど、どんな植物なのかはっきりイメージできないという方も多いかもしれませんね。「譲葉」は、庭木としても使われているので、意外と身近なところにあるかもしれませんよ。今回はそんな「譲葉」の特徴や育て方、ヒメユズリハとの違いなどを紹介します。
ゆずり‐は〔ゆづり‐〕【譲葉/交=譲葉/×楪】
ユズリハ科の常緑高木。本州中部以西の山林に自生。葉は長楕円形でつやがあり、裏面は白緑色で、柄は赤く、枝先に集まって互生する。雌雄異株。初夏、黄緑色の小花をつけ、実はやや丸くて藍色。庭木とし栽培される。新葉が出てから古い葉が落ちるので、新旧相ゆずるという縁起を祝って新年の飾り物に使う。交譲木。《季 新年》「―や口にふくみて筆はじめ/其角」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
特徴
「譲葉」は、ユズリハ科の常緑高木。高さは10mほどのやや大型の樹木です。5月〜6月に小さな黄緑色の花を咲かせます。葉は長楕円形で、長さは15cm〜25cm、先の方が尖っていて、光沢感があることが特徴ですね。
日本では、福島県より南の山や林の中に生えており、中国や朝鮮半島にも分布します。成長するスピードがゆっくりで、庭木として観賞できるまで約10年ほどかかるそう。昔は、木の皮を煎じた汁を害虫駆除のために使用したといわれています。
「譲葉」の名前の由来はふたつあります。一つ目は、「譲葉」は、春に若葉が芽吹くと、古い葉が一斉に落ちてしまうことから、新旧交代がはっきりとしているとされ、「譲る葉(ゆずるは)」から「譲葉(ゆずりは)」という名前がついたそう。
二つ目は、葉の主脈が太く、弓の弦に似ていることから「弓弦葉(ゆづるは)」 と呼ばれるようになったという説もあります。
父から子供に財産を譲るという意味から、新年や祝い事の飾りとして使われます。葉の軸の部分が赤く、葉の裏側が白いことから「紅白」をイメージさせ、おめでたい縁起物でもあります。このことから「正月の木」と呼ぶ地域もあるそうですよ。気持ちを新たにさせてくれる植物ですね。
また、日本最古の和歌集『万葉集』にも「あど思(も)へか阿自久麻山(あじくまやま)の譲葉の含(ふふ)まる時に風吹かずかも」という歌が詠まれています。ここでは、「譲葉」は、少女にたとえられています。葉柄だけがほんのりと赤く色づく姿を、まだあどけなさが残る少女の姿に重ね合わせたのかもしれません。
『枕草子』にも「ゆつるはの、いみじうふさやかにつやめきたるは、いと青う清げなるに」と記されています。「譲葉」のふさふさ生い茂った葉や、葉が艶々としている様子などを書き綴っています。食べ物敷き、今でいうお皿代わりとして使ったり、木の部分を歯固めに使ったことなども載っているようです。
ゆずる‐は〔ゆづる‐〕【譲葉】
ユズリハの古名。
「あど思もへか阿自久麻山あじくまやまの―の含ふふまる時に風吹かずかも」〈万・三五七二〉
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用