「氷山の一角」の意味と語源
「氷山の一角」は、表に見えているのはものごと全体のほんの一部にすぎないという意味をもっています。特に、あまり好ましくない問題やトラブルを指して使われることが多い言葉です。言葉の成り立ちに関わっているのは、海面にちょっとだけ頭が見えている状態の氷山の様子です。
「氷山の一角」の詳しい意味と由来をご紹介します。
意味はものごとの一部だけが見えていること
目に見える部分は、全体像のほんの一部にすぎないという意味で使われるのが、「氷山の一角」です。読み方は「ひょうざんのいっかく」。
デジタル大辞泉での解説もご紹介します。
氷山(ひょうざん)の一角(いっかく)
表面に現れている事柄は好ましくない物事の全体のほんの一部分であることのたとえ。「今回摘発された事件は―にすぎない」
慣用句を構成している単語、「氷山」と「一角」の意味はそれぞれ次のとおりです。
・「氷山」:分離して漂っている大きな氷の塊
・「一角」:一部分
「一角」には一部分という意味の他に「片隅」や「一つの角」といった意味もあります。
ネガティブなニュアンスを含む
「氷山の一角」にネガティブなニュアンスが含まれている点は、しっかりと認識しておく必要があるでしょう。
「氷山の一角」は、主に好ましくない事柄を指して使われます。例えば、犯罪や不正行為、政治の汚職問題などに対して使われることが多いです。良い行いを指して「今回の鈴木さんの親切な行為は氷山の一角にすぎない」のように表現するのは不適切です。
由来は海面に出ている氷山
言葉の由来は、海面に少しだけ姿を出している氷山の様子です。実際に目で確認できる氷山の姿は、海中に隠れている部分を合わせた全体像の7分の1程度だとされています。つまり、氷山は目に見える部分よりも見えない部分のほうがはるかに大きいといえるでしょう。
そんな氷山の特徴から、明らかになっている事柄は全体のほんの一部で、より多くのことが隠されているという意味になりました。
「氷山の一角」の類義語と対義語
類似した表現や相反する表現を知ることで、その言葉に対する理解をより深めることができます。
「氷山の一角」の類義語と対義語は次のとおり。それぞれの表現の意味や含まれるニュアンスの微妙な違いを詳しくご紹介します。
類義語:片鱗を示す(へんりんをしめす)
「氷山の一角」の類義語として挙げられるのが、「片鱗を示す」です。才能や知識の全てではなく、ほんの一部だけを見せるさまを指して使われます。「片鱗を見せる」と表現されることも多いです。
「才能の片鱗」という言葉にもあるように、「片鱗を示す」は主に特別な力を持っている人物の様子を話したり、説明したりする際に用いられます。
「氷山の一角」と「片鱗」の違い
「氷山の一角」と「片鱗」は、どちらも全体の内の一部分を示す言葉です。しかし、「氷山の一角」はネガティブな意味で使われ、「片鱗」はポジティブな意味で使われるという点が大きな違いです。
好ましくないことに対して「今回の事件は片鱗にすぎない」と「片鱗」を使って表現することは正しくありません。
「氷山の一角」と「片鱗」は、意味が似ていても利用シーンが異なる点は押さえておきましょう。