そもそも「お食い初め」とは?
子どもが生まれた家庭で行われる「お食い初め」という行事がどんなものか知っていますか?誰とどこでお祝いするものなのかなど、「お食い初め」の内容を理解して、子どもにとって一生に一度の大切なイベントを盛り上げましょう。
生後100日目にするお祝い
お食い初めとは、生後100日目にするお祝いのことです。生まれてきた子どもが「食べることに一生困らず、健やかに成長しますように」という願いを込めて、祝い膳を子どもに食べさせるふりをし、「丈夫な歯になりますように」と願い歯固めの儀式を行います。
お食い初めの歴史は長く、平安時代の「百日(ももか)」という行事が始まりだといわれています。はるか昔から受け継がれてきた「お食い初め」は、日本人にとってかかせない行事の一つ。地域によっては「100日祝い」「百日(ももか)祝い」「歯固め」「箸祝い」「箸揃え」「真魚(まな)始め」などと呼ばれることもあります。
また、一般的には生後100日目にお祝いしますが、110日目や120日目に行う地域もあるようです。生後100日を過ぎた週末や吉日を選んでお祝いするケースも多く、形式にこだわり過ぎる必要はありません。
誰とどこでお祝いする?
お食い初めといえば、昔は両家の祖父母をはじめとする親戚を自宅に招くケースが多く見られました。
しかし近年、家族の形や親戚付き合いは多様化しているため「誰とお祝いするか」は、各家庭によってさまざまです。祖父母だけ招いたり、誰も招かず家族だけで行ったりするケースもあります。
場所についても、昔は自宅でお祝いするパターンが主流でしたが、近年では料亭やレストランが提供する「お食い初めプラン」を利用するパターンも増えています。
自宅の場合、赤ちゃんが慣れている環境のため安心感があり、飾り付けなども好きなように行えます。ただし料理など準備すべきものがあるため、その分時間と労力が必要です。一方、料亭やレストランの場合、費用はかかるものの予約さえしておけば手間がかかりません。ただし、赤ちゃんにとっては不慣れな環境であることも考慮して選択しましょう。
お食い初め料理の順番と食べさせ方
お食い初めでは、ごはん(赤飯)・焼き魚(鯛)・お吸い物・煮物・香の物など「祝い膳」と呼ばれる料理と、歯固めの儀式で使う「歯固め石」を準備します。どのような順番で、どうやって食べさせればよいのでしょうか。基本的な方法を見ていきましょう。
料理を口に運ぶ順番
赤ちゃんはまだ食べられないので、食べさせるまねをしますが、口に運ぶ順番が決まっています。基本的には「ごはん→お吸い物→ごはん→焼き魚など→ごはん→お吸い物」を3回繰り返してから、歯固めの儀式を行います。
1回目:ごはん→お吸い物→ごはん→焼き魚→ごはん→お吸い物
2回目:ごはん→お吸い物→ごはん→焼き魚(または煮物)→ごはん→お吸い物
3回目:ごはん→お吸い物→ごはん→焼き魚(または香の物など)→ごはん→お吸い物
4回目:歯固めの儀式
ただし、これはあくまでも一般的な順番であり、絶対に守らなければならないルールではありません。地域や家庭によって異なるケースも多々あるため、地域の年配者や祖父母などに確認してみることをおすすめします。
もし途中で赤ちゃんが嫌がったり泣き出したりした場合は、無理に進めず中断して問題ありません。
順番を間違えたら?
初めてお食い初めを行う際は、親も子どもも慣れていないため、食べさせる順番を間違えてしまうこともあるでしょう。その場合は、焦らず分かるところからやり直せばOKです。
「正しい順番でやらなきゃ」「絶対間違えないようにしなきゃ」など、堅苦しく考える必要はありません。大切なのは、我が子の成長を思う気持ちです。
食べさせるまねをするのは「養い親」
食べさせるまねをするのは「養い親(やしないおや)」です。養い親は、子どもが長寿にあやかれるよう同性の身内の最年長者にお願いする習わしがあります。
しかし近年は、子どもと同性の祖父母が養い親を務めるケースが多くなりました。男の子なら祖父、女の子なら祖母にお願いするとよいでしょう。最近はあまりしきたりにこだわらず、みんなで交代に行うことも。祖父母にお願いできない場合には、両親のどちらかもしくは2人で行います。
家でお祝いする場合に準備するものは?
自宅でお食い初めを行う場合、どのようなものを用意すればよいのでしょうか。日程や人数が決まったら、必要なものをリストアップして準備に取りかかりましょう。
「祝い膳」と「祝い箸」
まず準備すべきは、ごはん(赤飯)・焼き魚(鯛)・お吸い物・煮物・香の物などの「祝い膳」です。
赤飯は魔除け、尾頭つきの鯛は人生を全うすることに通じて縁起がよく「めでたい」ことから、お食い初めのような祝いの席に欠かせないメニューです。そのほか、お吸い物には良縁を願う蛤を使うなど、それぞれに意味や赤ちゃんへの願いが込められています。
「祝い箸」も準備しましょう。祝い箸とは、お食い初めだけでなく結婚式やお正月など祝いの席でよく用いられる、柳などでできた両端が細く削られた箸のこと。一方を神様用と考え「神様と共に食事をすること」を表します。普通の割り箸とは、素材も見た目も異なります。
「歯固め石」、地域によっては「梅干し」など
歯固めの儀式で使う「歯固め石」も用意します。歯固め石には「石のように、しっかりと丈夫な歯が生えてきますように」という意味があります。
一般的には、神社の境内や河原などで直径2~3cmほどの小石を拾ってきて、熱湯消毒して乾かしたものを使います。神社で石を拾う場合は、勝手にではなく一声かけるようにしましょう。お食い初めが終わったら、元の場所に返すのがマナーです。
地域によっては、小石ではなく「しわができるまで長生きできるように」との願いを込めた「梅干し」、栗の実を干した勝利祈願の「勝ち栗」、多幸に通じる「たこ」を使うこともあります。
赤ちゃんの衣装
お食い初めの日に、「色直し式」という儀式をすることもあります。それまで白い産着を着せていた赤ちゃんに、色付きの衣服を着せる儀式です。
昔は、昼間に白い産着でお食い初めをして、夜に色付きの小袖に着替えていましたが、現代はお食い初めと色直し式を一緒に行うようになりました。小袖ではなく色付きのベビー服を着せる家庭が多いのですが、最近はインターネットでも赤ちゃん用の小袖や祝い着が購入できるので、チェックしてみるのもおすすめです。
また、赤ちゃんに食べさせるまねをするときにこぼしてしまうケースも多いため、衣装のほかにスタイも準備しておくと安心です。
お食い初めについてのQ&A
お食い初めの中で行われる「歯固めの儀式」とは、どのような儀式なのでしょうか。また、赤ちゃんのために用意した祝い膳は、お食い初めが終わったらどうすべきなのでしょうか。2つの疑問について紹介します。
歯固めの儀式のやり方は?
歯固めの儀式とは、「石のように丈夫な歯が生えてきますように」という願いを込めて行います。丈夫な歯で何でも食べられることが長寿につながるからです。
あらかじめ用意した歯固め石に箸で触れてから、その箸先を赤ちゃんの歯茎に優しく当てます。万が一の誤飲を防ぐため、歯固め石は直接赤ちゃんの歯茎に当てず、箸を使って触れるようにしましょう。
神社や河原などで拾ってきた小石を使う場合は、お食い初めの後に元の場所に返すことも忘れないようにしましょう。
お食い初めが終わったら祝い膳はどうするの?
赤ちゃん用の祝い膳は、あくまでも食べさせるまねをするだけなので、実際に赤ちゃんが食べるわけではありません。
お食い初めと歯固めの儀式が終わったら、赤ちゃんの料理は参加した人たちでおいしくいただきましょう。お食い初めは、みんなでお祝いの食事をすることまでが行事です。参加した人たちにも祝い膳を用意し、みんなで赤ちゃんの健やかな成長を願いましょう。
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赤ちゃんが生まれてから小学校入学までのお祝いごとや、子どもが楽しむ年中行事を、わかりやすいイラストと料理写真とともに解説。お祝い・行事ごはんを作るのがはじめての人でも、カンタンにできるおいしいレシピが満載です。
監修/和文化研究家
三浦康子
古を紐解きながら今の暮らしを楽しむ方法をテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、Web、講演などで提案しており、「行事育」提唱者としても注目されている。連載、レギュラー多数。All About「暮らしの歳時記」、私の根っこプロジェクト「暮らし歳時記」などを立ち上げ、大学で教鞭もとっている。著書『子どもに伝えたい 春夏秋冬 和の行事を楽しむ絵本』(永岡書店)ほか多数。