うるさく言わなかった夫がコロナ禍を機に変化
由香子さん(仮名)は45歳で結婚14年目。結婚後はずっと共働きを続け、一男一女にも恵まれて安定した家庭を築いてきました。しかしコロナ禍をきっかけに夫の仕事の業績が悪化。ついには世帯収入が減ってしまい、先が不安な状況に陥っているそうです。
「ずっと共働きだったので、お互いの稼ぎの使い道には口を出さないやり方でやってきました。生活費はあらかじめ決めた額を生活費用の口座にそれぞれが振り込み、あとは好きにやるスタイルだったんですよね。
ところが夫の収入が下がってからは、私が趣味の美容に使うお金について夫が口出ししてくるようになって…。私は自分へのご褒美として、デパコスやエステにお金を使うほうなのですが、それが夫には気に入らないみたい。『美容にかけるお金を減らして、貯蓄に回せないのか?』とハッキリ言われてしまいました」
聞き流そうにもうるさくて仕方ない
「フリーランスに近い働き方をしている夫は、仕事が減っているので家にいる時間が増えました。だから私が出かけているのが気になりやすいのと、デパートで買い物をして帰ってくると気付きやすくなった、というのもあるかもしれません。
友人に相談したら『そんなの聞き流しておけばいいのよ』って言われちゃったのですが、聞き流そうにもうるさくて仕方ないんですよ。最近ではコソコソと買い物をして、夫が在宅しているときにはマンションの宅配ボックスにいったん買ったものを隠して、夫が不在のときにまとめて家の中に入れたこともあります。そんなことをしている自分が嫌で、夫に対して怒りの感情も湧いています」
夫の収入が減ったことは知っていても、細かい経済状況を詳しくは知らないだけに、今の状況が、どの程度深刻なのか見当がつかないと話す由香子さん。
「でも深刻なら深刻で、妻である私には細かい部分まで打ち明けるべきだし、それすらもないままに一方的に“美容費を削れ”って言われても納得できません。私はコロナ禍でも収入が下がっていないし、これまで通りの生活を続けたい。仕事を頑張れるのは、趣味の美容のためというのもあるから、そこまで夫に邪魔されたくないんです」
由香子さんは、これまでと夫婦のバランスが変わってきていることに不満で「今の夫のことは好きじゃない」とのこと。「もっとおおらかな人だったはずなのに、まるで別人です」とため息をつきます。
「お金のことで離婚する夫婦って多いですよね?今までは“お金のことが原因なら、夫婦で話し合って改善すればいいのに”って思っていましたが、自分がこの立場になって、どれほどうっとうしいことなのかがよくわかりました。このままだと夫への愛情は薄れるばかり。離婚はなるべくなら避けたいけれど、夫が態度を改善してくれない限りは難しいかもしれないですね」
コロナ禍を通じて夫婦関係に変化が生じている話は少なくありません。由香子さんの夫のように、金銭的な不安から配偶者への態度が変わる男性もいるのでしょう。コロナ禍が明けても、すぐに以前のような安定した状況に戻れるとは限らないことから、離婚を避けるのを最優先にするのであれば、ある程度の長期戦を覚悟する必要があります。ただし、コロナ禍という特殊な環境下で”本性があぶり出された結果”として破綻した夫婦の話も少なくないだけに、長期戦の覚悟を決める価値がある関係なのかは、客観的かつ冷静に見極めていきたいところです。
取材・文/並木まき
※個人が特定されないよう、エピソードには一部の脚色を加えています。
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