連載第2回目は、フリーランスで活躍するディレクターの石岡真実さんです。シンプルかつ絶妙なバランスのファッションをはじめ、6歳の息子さんと旦那さまとの笑顔の絶えない日々を綴るインスタグラムは注目の的。また、お料理や器のセンスも、多くの女性から支持を集めています。
アパレル会社で10年、販売やプレスなどを経て、現在はフリーランスPRとしてさまざまなブランドとのコラボレーションを手がける。156cmと小柄ながら、バランス抜群なシンプルで着まわしやすいスタイルが話題で、著書『小柄な大人の春夏秋冬ベーシックスタイル手帖』(扶桑社)も発売。プライベートでは、一児の母。▶︎Instagram
今回、石岡さんのご自宅を訪ね、私たちが感じる「素敵」の理由を尋ねました。
LIFESTYLE
大切にしているのは〝時産(じさん)〟の発想
石岡さんを語るうえで、欠かせないのが「シンプルに暮らす」こと。
「若い頃はギャルで、時間をかけてメイクをしたり髪を盛ることに命をかけてました。買い物も大好きだったので、今振り返ると、たくさんのものに囲まれた生活をしていた気がします。でも、息子が生まれてから、もっと子どもと向き合いたい、限られた時間の中で自分のしたいことしたいと思うようになってゆき、自然と暮らしもシンプルになっていったんです」(石岡さん/以下同)
▲左:念願のマイホームの棟上げにて。右:石岡さんの地元である青森のねぶた祭りに家族で行った時のワンショット。
シンプルに暮らすうえで、大切にしているのが〝時産(じさん)〟の発想なのだそう。〝時短(じたん)〟は、家事などの手間を抜いたり省略してラクにする考えですが、〝時産〟は文字通り時間を産み、その分のゆとりでより豊かに暮らすというものです。
「息子が産まれてから〝今は、今しかない〟と感じることが多いです。息子の成長を見守る中でつぶさなことも見逃したくなくて、ネットサーフィンやネットショッピングなど、日常的にスマホを見るのを意図的にやめました。そこで生まれた時間は、家族や仕事、友人など、本当に大事にしたい物事にあてています。実はこれ、余計なものを買わなくなるので、節約にもなっているんですよ」
日々の食材は、一度で3日間くらい使いまわせるように、キャベツやひき肉など何通りも活用できるラインナップを中心にお買い物するそう。また、スペースを取るので基本的に買いだめはせず、「近所のスーパーは自分の冷蔵庫のような感覚」で、必要があれば買い足しにいきます。
▲石岡さんの後ろにある古家具の食器棚には、少しずつ大切に集めた日本の作家さんの器が並ぶ。「現在は食器棚をリビングに置いていますが、好きな器が並んでいれば、収納としてだけでなくインテリアとしても楽しめます。食卓に並べて『どれに何を盛り付けようかな』と考えることも多いんです」。
洋服やバッグなどの大きな買い物は、月に1〜2度のお楽しみに。基本的には増やしすぎず、あるものでいかに着こなすかをまずは考えるそう。
「お洋服やバッグ、靴などは、2〜3ヶ月前から『次はあれを買おう』と目標をたてることで、家事や仕事の原動力になっています。器や台所道具、調味料も、基本的にはファッションと同じ考え。どんどん引き算してシンプルにしていくことで、好きなものが明確になるし、選ぶ時間も速くなり、部屋にスペースも生まれて生活しやすくなっています。
シンプルな暮らしは、見通しがよくて気持ちいい。昔は詰め込みすぎて、ものが行方不明になったり、本当は持っているのに見つからなくて、同じものが2〜3個ストックされているということも(苦笑)。でも今は、クローゼットも台所も、家中が一目瞭然。どこに何があるか全て把握しています。
〝時産〟は、何にどれくらいの時間をかけるか、なのだと思います。たとえば、産後はつけまつ毛やまつ毛エクステをやめて、まつ毛パーマに。スタイリングしやすいように髪にもパーマをかけて、メイクの時間がより短くすむようリップアートも入れています。そのぶん、洗顔はしっかりして、化粧水など基礎美容には以前より時間をかけています。ベースが整っていれば、盛るメイクはどんどん減って、他に時間をかけられるゆとりが増えてゆくと思うから。それに、年齢を重ねてもベースがきれいな人は魅力的ですよね」
▲年々、素肌自体の輝きなど、ベースを大事にするように。「年齢を重ねて肌の質感が変わってきたこともあり、美容への考え方が変わりました。以前なら浮いてしまった鮮やかなリップが似合うようになったのもおもしろい」
FASHION
生地の厚み一つでもイメージが変わると気がつきました
石岡さんは、長く愛せるベーシックなカラーやアイテムを選びながら、トレンド感のある着こなしを楽しんでいます。
▲ワンピース/AURALEE、シルバーのネックレス/blanciris、シルバーのバングル/右手はmayumimurasawa、左手はTIFFANY&Co.。「友人をうちに招いての食事など、リラックスしたい日にもしっくりくるニットワンピース。深めのVネックも狭めなら、ほどよくカジュアルに、女性らしさが出せます」。ゴツめのシルバーアクセサリを合わせて、リラックス感にメリハリをプラス。
「まず、自分に似合っているかどうかをしっかり見極めることを大切にしています。とくに産後、体型が変わってからは、試着が欠かせません。体に丸みが出たり、体重が落ちにくくなったりする中で、生地の厚み一つでもイメージが変わると気がつきました。シルエットも、出すところは出す、隠すところは隠すなど、メリハリを大切にしています」
▲トップス/UNIQLO、デニム/Upper hights、メガネ/Zoff、シルバーのバングル/TIFFANY&Co.。「普段の私らしいスタイル。ぺたんこシューズなら自宅からワンマイル、5〜7cmのヒールを合わせれば表参道へのお買い物にと、場面に応じて足もとで変化をつけられます。ワイドデニムは、ピタッとしたトップスを選ぶことで女性らしく。丸首の場合は、詰まったものがしっくりきます」。
「一番好きなのは、今も昔もカジュアルスタイルですね。モード×カジュアルとか、コンサバ×カジュアルとか、ミックスで見せるのが得意です。
カジュアルな中にも、ニットやカットソーなら毛玉が出来づらい素材を選ぶとか、より上質な素材を選ぶなど、年齢を重ねる中でお洋服そのものの素材も重視するようになりました。たとえば、ダメージデニムを履くにしても、ニットならカシミヤ素材を合わせるといったふうに。一点一点、納得のいくものを選ぶように心掛けています。
もちろん、全てに高いお金を出す必要はありません。足もとをきれいにまとめるだけでも、印象はかなり変わります。スニーカーならきれいな状態をたもつ。サンダルを履くなら爪を塗る。細部に宿る清潔感が大事なのだと思います」
▲左:夏の黒コーデ。潔く肌見せできるアメスリはh beauty and youthのもので、よく着るアイテムの一つ。右:ワンピース/rita jeans tokyo、ブーツ/Dhyana.、ストール/haunt daikanyama、メガネ/NOCHINO OPTICAL。「柄物はあまり着なくなった」という石岡さん。ストールや傘など、小物でポイントに取り入れる。
「色は、最近、黒がしっくりきます。ただ、似たような色みや素材感の黒を重ねると、ほっこりしたりモードに偏ったりするので、異素材ミックスを楽しんでいます。ニットならツルッとした素材のものと組み合わせるとか、少しずつ違う黒を重ねるとか。そうすることでバランスに抜け感が生まれるんです」
EAT
家族の健康を考えていく中で、自ずと調味料や調理方法、器選びにもこだわるように
育ち盛りの息子さん、食べるのが大好きな旦那さま、そして気のおけない友人などとの時間に、笑顔を生む石岡さんのお料理。インスタグラムのハッシュタグ「#マミノメシ」も話題です。旬の野菜や新鮮なお魚、昔ながらの調味料などを使ったお料理の腕前は、どのように上げていったのですか?
▲大好きな小林徹也さんの器を中心に、お気に入りの器に盛り付けられた「#マミノメシ」。この日は韓国風がテーマ。
「祖母が料理上手だったので、物心ついた頃からお手伝いもしていましたね。
ひとり暮らし、夫とのふたり暮らし、そして息子が産まれてからと、引越しして少しずつ台所が広くなるにつれ、自炊する頻度が上がっていきました。家族の健康を考えていく中で、自ずと調味料や調理方法、器選びにもこだわるようになっていったんです」
▲間もなく新居へお引越し。新しい台所はアイランド型で、ストックルームもたっぷり。お料理好きな石岡さんのこだわりにあふれている。
「ただ、家族みんな外食も大好きなので、今は自炊と半々くらいです。自分で作ってばかりだとマンネリ化もしますし、外食することで食材の使い方や盛りつけなどの勉強になるんですよ。『この一皿には、何がどういうふうに使われているんだろう?』と、一つひとつ食材を分析しながら食べることも(笑)。旦那さんに息子を預けて、新しいご飯の味をインプットしに一人飲みに出歩くこともよくあります。
『#マミノメシ』で作っているお料理にも、外食でヒントをもらったものもあります。仲良しのお店の方には、お料理のポイントを聞いたりもしますね。そこで得たエッセンスを、日々のお料理でいろいろ試して自分なりのレシピにしていきます」
▲石岡さんの、等身大で、夏の太陽のような雰囲気に、グッと引き込まれる。
石岡さんを取り巻く、思わず「素敵」と憧れてしまう物事や雰囲気。それは、ライフスタイルの変化に合わせ、今の自分にとって何が大切かを取捨選択し、磨き上げていく中で培われてきたものでした。
そんな石岡さんが主宰する、自身初のPOP-UP STOREが3/3〜4/6までから開催されます。石岡さんが、日頃から愛用する作家さんの器を中心にエプロンや調味料、台所道具などが一堂に。
「食は、心が豊かになります。ものすごく手抜きする時でも、あれまあ! と驚くほど引き立ててくれる器や、ちょっとしたひと手間で贅沢な気持ちにさせてくれる調味料の存在に魅了され、こつこつと集めてきました。作り手さんの想い、日々の食に与えてくれる付加価値を、手にとっていただき、豊かな気持ちになれるPOP-UPイベントにできたらなと思っています。皆様のご来店を、心よりお待ちしております!!」
「実」minori展
期間 3月3日(金)~4月6日(木)
時間 9~22時(最終日は19時終了)
※営業日・時間は変更になる場合がございます。
場所 代官山 蔦屋書店・3号館1階 料理フロア
ディレクション/山本有紀(itoto inc.) 写真/石野千尋 取材・文/ニイミユカ