後編となる今回は、原田さんのインスタグラムでも特に注目を集める「お料理」と「器」について伺います。その中でも、今日から実践出来る10のTipsをご紹介します。
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短大卒業後、ホテルにウェディングプランナーとして就職し、その後、広告代理店、家業の手伝い、2つのアパレルメーカーを経て、相方である山本麗子氏とともに独立。2011年に自身のブランド『Abel』を立ち上げる。現在は『Abel』のディレクター兼プレスとして活躍。プライベートでは、春に2人めの出産を控えた一児の母。 ▶︎Instagram
【目次】
Tips1:器には余白を、お料理には抜け感を
以前は、器の上もテーブルの上も、たっぷり盛り付けて迫力のある印象に仕上げていたそうですが、少しずつ“余白”を大切にするように。
「レストランへ行くと、大きな器にポツンとお料理がのってくることがありますよね。そういう“余白”があると、一皿をもっと大切に食べたくなるなと、ある時に気がついて。器に盛り付けるときは、盛りすぎないこと。あえて、お料理よりひとまわり大きな器を選んだりもします」(原田さん/以下同)
▲「唐揚げなど茶色のお惣菜は、白い華奢な器か絵付けの器が合います。ニンジンや紫キャベツなど、素材の色が鮮やかな場合は、縦に長い深めの小鉢など幅をきかせないものがおすすめ」。左上から時計回りに:小鉢/村上祐仁さん、平皿/瀬川辰馬さん、絵付けの器/須藤拓也さん。
「お料理の仕上げは、“抜け感”を大切にします。たとえば、唐揚げを器に盛りすぎない、茹でたブロッコリーを盛り付けるときは裏側も見せる、仕上げのハーブやオイルをかけすぎないなど。あざとくならないように(笑)、いかに自然に見せるかを模索しています」
Tips2:マヨネーズはバターナイフで素敵に添える
唐揚げや茹で野菜の横に、ちょっと添えるマヨネーズ。チューブから器に直接搾ったり、瓶からスプーンですくってのせたりしていませんか? でも、なんだか垢抜けません。
「バターナイフがあれば、簡単に雰囲気が出ますよ。方法は、バターナイフの上にマヨネーズを出して、お皿にピタッと添わせながらのせるだけです。フチが少しある器でもいいですし、あえて平皿にのせてもかわいいですよ。その上からドライハーブやブラックペッパーをかけると、いろいろな風味が楽しめて、動きも出ます」
▲サラダなどにマヨネーズを添える場合は、一度バターナイフにとってからがおすすめ。「チューブタイプなら、バターナイフに直接絞ります」。
▲「そのまま器のフチにピタッと置いて、バターナイフを押し付けるようにスライドさせてます。これを2度繰り返して、仕上げにドライハーブやブラックペッパーをかけるだけです」
Tips3:鮮やかな色は食材で加える
原田さんの持っている器は、基本的に白、グレー、木、ガラスといった、シックなものがほとんど。絵付けの器や豆皿に使われている色は青色が多く、どれを一緒に並べても喧嘩したり主張しすぎたりしません。
「器では色を加えるというよりも、食材で色味を加えます。緑、赤、黄色、オレンジ、紫色が入っていると華やかに見えますよ」と原田さん。とくに黄色はポイントで、中でも発色のよいトマト、レモン、食用菊はおすすめの食材なのだとか。
▲スーパーで手に入る食用菊を散らすだけで、白身のお刺身も華やかに。
▲山形産の食用菊。そのまま食べられ、お刺身などのよい臭み消しにもなる。「薄い色だと料理になじむので、鮮やかな色の食材がおすすめ。食用菊なら、1パックにたっぷり入っていて、散らすだけだから簡単です」
「プチトマトは、そのまま出せるので便利。私は、黄色の食用菊を活用することが多いですね。湯がくとしんなりするので、生で散らして使います。あとは、紫色のブロッコリースプラウトも、小ぶりでさりげなく使えておすすめです」
▲ブロッコリースプラウトは紫色を選ぶ。「根をカットしてのせるだけです。味に影響しすぎないので、いろいろなお料理の仕上げに使えますよ」。この日は、ポテトサラダの彩りに。
「散らす場合は、色味を足す、ぐらいの量がポイント。いっぱい飾るとあざとくなるので、散らすぐらいがちょうどいいです。食用菊もブロッコリースプラウトも、味に影響しすぎないですし、栄養価が高いのも嬉しいところ。食用菊は、使いきれない分は一度湯がいて小分けにして冷凍へ。お浸しなどに使えます」
Tips4:マットな器はオイルやソースが映える
サラダやマリネなど、お料理の仕上げにオイルやソースを垂らす場合、合わせる器は、光沢がないマットなものを選びます。
「ツヤツヤした器だと、なじんでしまうんです。色味も、あまり主張しすぎないものがよいと思います。かけるタイミングは、食べる直前がおすすめ。お料理の上にドバッとかけるのではなく、細く線を描くようなイメージでかけると、レストランのような雰囲気が出ます」
▲瀬川辰馬さんのオーバルプレートに、ボイルした菜の花を盛りつけ、仕上げに食用菊、オリーブオイルをかけるだけ。マットな質感にオイルのグリーンが映える。
Tips5:土鍋ごはんは、楽でおいしく盛り上がる
原田さんのインスタグラムにもたびたび登場する土鍋ごはんは、ホームパーティーなどおもてなしの席でも、登場するだけで歓声の上がるお料理の一つです。
「私がおしゃべりを楽しみたいのと、来てくださる方にもゆったりしてほしいので、ホームパーティーでは基本的に『自分で好きな量を、好きな時にとる』というスタイルが多いです。土鍋ごはんは、子どもも大人も食べやすく、これだけでテーブルが華やかになる上に、おいしくて、洗い物も少なくてすみます。スキレットや鉄鍋、大ぶりなグラタン皿を活用したお料理も、土鍋ごはんのような迫力と存在感が出ておすすめです」
▲愛用している中田誠さんの土鍋。これまで2合サイズしかなかったが、直接中田さんにお願いして3合サイズを作ってもらった。2/16〜のポップアップストアでも扱う予定。
Tips6:お酒は2〜3種用意して、酒器も自分で選ぶセルフサービス
土鍋ごはんと同じく、お酒は2〜3種類、酒器もゲストに選んでもらえるように用意。いざ食事が始まったらセルフサービスで楽しんでもらえるようセッティングすることが、ゲストもホストも寛げるひと時の秘訣です。
「お酒も酒器も、ゲストに好きなもので自由に楽しんでもらいたい。だから、お酒はテーマを決めたら2〜3種類、用意します。今回はワインなので、グラスを背の低いワイングラスで統一。人数分、違うメーカーで用意しました。以前は背の高いグラスが好きでしたが、最近はお料理の全体のバランスがよく見える低いグラスが増えてきました。あとは、繊細な口触りの薄いタイプもが気分が上がるのでよく選びます」
▲左から時計回りに:スペインで買ったロックグラス、バカラのグラス、薄張りの葡萄酒用グラス、松岡洋二さんのグラスは娘のアマネちゃん専用。ワインクーラーはSAPPORO CRAFTのもの。「ワイングラスは、まとめて同じものを揃えず、一脚ずつ気に入ったものを買い集めます。バラバラでも、サイズ感や色味が近いもので揃えれば、違和感はありません」。
▲中でもお気に入りは、小林裕之さん、希さん夫婦が手がけるお猪口(写真右)。アマネちゃんの節句で桜湯も楽しんだ。「お猪口の場合は、お店のように木の箱に並べて、ゲストに好きなものを選んでもらいます。普段もこのまましまっておけば、出し入れも楽ですよ」
Tips7:お料理のテーマは、器とお酒のペアから決める
現在は妊娠中のため飲めませんが、本来お酒が大好きな原田さん。その日に飲みたいお酒から、器やお料理を発想することも多いそうです。
「日本酒なら和食、ナチュラルワインならスペイン、イタリアン、フレンチ、中華なら紹興酒など、飲みたいもので、どういうテーマのお料理にするか決めることが多いです。そうしてテーマが決まったら、大人数のゲストがいる場合は、一度テーブルに器を置いて、これに何をのせるかなどをイメージ。料理名を書いたポストイットを置いたりもします。ああでもない、こうでもないと考える時間も楽しいですよ」
▲個展があるごとに駆けつける村上祐仁さんの器を始め、中田誠さんの土鍋、須藤拓也さんの絵付け皿、瀬川辰馬さんのオーバルプレート、喜八工房のお椀、下本一歩さんの竹箸、そして取皿は遠藤岳さんや森雅志さん。原田さんの「好き」が集まったテーブル。不思議と統一感がある。
Tips8:豆皿は、食卓のポイントや子どもの器、ギフトにも
手のひらにおさまる愛らしい豆皿は、30枚ほど持っているそう。
「大きな器は、あまり色を使わないことが多いので、食卓のちょっとしたポイントになるようなものを選びます。鮮やかなやちむんの豆皿は、食卓に並べてもバランスが取りやすく、よく登場します。
娘が小さな頃は、離乳食を入れたりしていたこともあります。今は、お酒のおつまみを置いていくつか並べたり、おかずやおにぎりを一皿ずつのせておばんざいのようにして楽しんだりも。賑やかになって、テンションも上がりますよ。豆皿のよいところは、自分で集める楽しみはもちろん、プレゼントにちょうどよいところ。手ごろなものも多いので、差し上げるのにもいただくのにも、気負わずに嬉しい器だと思います」
▲左上:旅先で出会った明治時代の骨董品、上:やちむん、右上・右下:いただきもの、中央:バリで3つセットで買ったもの、左下:箱根ハイアットリージェンシーのお土産コーナーで発見。「ちょっと深いものには汁気のあるお料理を入れたり、大ぶりなプレートにいくつか並べて使っても」
▲豆皿に、おかずやおにぎりをちょこちょこ盛り付ける「おばんざいスタイル」は、一人のランチや朝食、子どもとの食事にもちょうどいい。(原田さんのインスタグラムより)
Tips9:お重が便利
重箱といえば、おせちやお花見など、特別な機会に使うという方も多いかもしれません。原田さんの場合は、日常のハレの日に器として使うことで、テーブルに華を添えています。中でも、よくインスタグラムにも登場するのが『IKEA』のお重。
「少し浅く、仕切りがある段とない段の2段重ねの『IKEA』のお重は、普段使いはもちろん、ホームパーティーや節句のお祝いなどにも活躍しています。買ってきたお刺身も、これに詰めたら雰囲気が出るので重宝しています。
素材は、表面がコーティングされている竹だから、お手入れも楽。シミなどの心配や、洗った後のにおいもあまり気になりません」
▲原田さんのインスタグラムにたびたび登場する『IKEA』のお重は、手ごろで使い勝手もよい。「(写真左)この時は、手巻き寿司の具を盛り付けました。(写真右)押し寿司をのせればハレの日にも」。(原田さんのインスタグラムより)
Tips10:まず一枚買うなら20cmくらいのマットな平皿
原田さんが器を買う時に大切にしていることが、“テーブル全体”をイメージすること。以前は「好き」の直感で集めていたそうですが、それだけでは抜け感がなく、ガチャガチャしてしまうそうです。
(原田さんのインスタグラムより)
「器は、朝食やワンプレート料理のように一枚で使うシーンもありますが、いろいろなものが一緒に並ぶことのほうが多いですよね。だからこそ、自分の持っているものをイメージして、なじみそうか考えます。もし、これから一つひとつ器を揃えていきたいと思っているなら、まずは20cmくらいのマットな平皿がおすすめです。私自身、器を集め始めたときに驚いたのですが、一見シンプルだけど、どんな料理にも合って、すごく使えるんです」
器を好きになったことで、毎日の「食べる」ということへの意識が変わり、お料理もますます楽しくなったそう。
最後に、原田さんに、好きな器に囲まれた日々について伺いました。
「私は、一つ好きな器に出会ったことで、世界が広がりました。気の知れた友人と集まる時間、そして一緒に食べるひと時が、ますます充実するようになったと感じています。
お料理は、毎日健やかに過ごすためにも欠かせません。だからこそ、味だけでなく見た目も大事だと思うんです。よい器は、お料理の満足感を高めてくれますし、ちょっとした選び方、使い方で、何気ない食材やお料理も輝いて見えます。頑張ってお料理をする日も、お惣菜を買って並べて済ませる日も、好きな器があることで、充実した時間が過ごせているように思います」
2月16日から1週間、原田さんがセレクトした器が手に取れるPOP-UPイベントが開催されます。
「お気に入りの器が見つかればと、私の大好きな作家さんやメーカーさんから厳選しました。お気に入りの器が見つかったら嬉しいです。どうぞ、一人でふらっとはもちろん、ご家族やお友達を誘って遊びにきてください」
ぱぱままぼくわたし
期間 2月16日(木)〜21日(火)
時間 10〜20時(最終日は18時終了)
※営業日・時間は変更になる場合がございます。
場所 伊勢丹新宿店・本館6階催物場 Abelブース
写真/石野千尋 取材・文/ニイミユカ