伊藤忠商事の人事・総務部長 垣見俊之氏とDomani編集長・井亀真紀とのスペシャル対談。『脱スーツ・デー』施策の狙いから、これからのダイバーシティ社会に向けた展望まで、話が広がりました!
前回のお話:伊藤忠商事人事・総務部長×Domani編集長のスペシャル対談!~ファッションから変える、新しい働き方改革~
服装が自由になったからこそ、周囲や仕事相手への配慮がさらに必要に
井亀 『脱スーツ・デー』を実行するに当たり、気をつけたことなどありますか?
垣見人事・総務部長(以下、垣見) 一言にカジュアルといっても、その解釈の幅は広いですよね。そこで、まずは敢えて規則でがんじがらめにせず、自由度をかなり高めてスタートしました。自分で選んだカジュアルな服が、同僚をはじめ、仕事相手に失礼にならないかどうか、各個人で気を配ってくれたらな、と。
井亀 余白を残すことで主体性を促すということですね。とはいえ、この色のスニーカーはどうなの? この形のデニムはいいのかな?といったように、細かいジャッジに迷うシーンが多いのではと感じます。特に女性は、男性よりもファッションの幅が広いぶん、「いざ会社に着ていったら浮いてしまった!」というトラップがたくさんある。女性のファッション誌を長くやっていると、「周囲から浮きたくない」「今日どうしたの?って言われたくない」という声が少なからず聞こえてきます。どんなに自由でも「どこまでがOKで、どこからがNGなのか」といった、手探りをする空気というのが自然とできてしまうのでないでしょうか。これはきっと、真面目な日本人ならではの国民性とも言えると思いますが。
垣見 そうですね。それに女性は、男性以上にファッションに対する意識が高いという面も影響しているのかもしれませんね。
井亀 その中でも酸いも甘いも知り尽くしたDomani世代の女性は、「この色は難しいけれどこの形ならOK」といったように、ニッチなところを攻めていっているというか。前向きにファッションを楽しんでいきたいという気持ちを感じました。
「働く服」の改革で、よりダイバーシティ化に対応できる人材を!
井亀 30代~40代が中心のDomaniの読者は、有職率ほぼ100%。子供がいる方も多く、みなさん毎日とても忙しく過ごしています。どんなに仕事が大変でも、経済的に余裕があるとしても、それでも仕事を持って社会と関わっていたいという、そういう気持ちが強いんです。ひと昔前、仕事で活躍する女性が”バリキャリ”と呼ばれていた時代なら、「子供を産むこと=一線を退く」という概念がまだまだ強かったんですね。それがこの10年ですごく変わってきたなと感じています。
垣見 そうですね。女性に限りませんが、弊社の若い世代と話をすると、人生100年時代を迎えて、人生の中での働くという意味が変わってきているのではないかと思います。たとえば今のシニア層は、会社のために一生懸命働き続けてきた世代ですよね。働くという価値観も画一的とも言えます。それは日本の置かれている社会環境がそうだったので当然のことなのですが。それに比べて、今は自分自身のキャリアも自分で作っていくんだという意識が、若い世代を中心にどんどん強くなっている。これからの10年、20年を考えると、キャリアのオーナーシップは間違いなく自分自身にある時代になると思います。
井亀 本当にそうですね。女性にとっても「働く=自立したポジションを手に入れる」ということは、人生を豊にするためのひとつの選択。「子育てのためにも働き続けることはいいことだ」という考え方も増えています。
垣見 商社という業界の話をすると、ずっと男性社会だったんです。それがこの10年ほどで総合職にも女性がぐっと増えました。男性と一緒にスーツに身を包んで頑張っている女性たちに、服装の面からも、自分らしさをもっと出して、活躍してもらいたいなと思います。
井亀 着る服によって、表情が変わりますからね。特に女性はそうですよね。色合いや素材ひとつ取っても、それが自分を表すスタイルになる。確かに、画一的な服装ではなく、自分らしい装いで働くというのは、新しい時代の自然な流れに沿っていますね。
垣見 ダイバーシティ化がどんどん進んでいる時代です。働き方だけではなく、考え方も、生活スタイルも、常に多様化が求められる。そして服装もそのひとつだと思うんです。自身の置かれた状況に合わせた、自分の個性を出す装いを推奨したい、それも『脱スーツ・デー』のアプローチのひとつです。
伊藤忠人事・総務部長
垣見俊之
1990年慶大経済卒、伊藤忠商事入社。東京本社人事部、米ニューヨークの伊藤忠インターナショナル勤務を経て、帰国。2008年4月より、伊藤忠におけるグローバル人材戦略全般の構築・推進に尽力。また、2011年4月からは本社のダイバーシティ推進も兼任。2016年4月から現職に就任し、伊藤忠商事の人事・総務全般の戦略・企画立案の責任者。
Domaniブランド室 室長
井亀真紀
DomaniやCanCamの編集長を歴任してきた敏腕編集長。Domani編集長就任中の2012年に考案したバックサイズ版Domaniで、第4回 BestMagazineAward「雑誌大賞」受賞。2017年、Web Domani編集長に就任。2018年、Domaniブランド室 室長に就任し、本誌・Webともに、ブランドメディア『Domani』を統轄。