「なんだか疲れやすい」「集中できない」「億劫になりがち」これが更年期のSOSと気づいていれば…
▶︎〈第1回〉美容家・山本未奈子さんを襲った過酷な更年期障害 ←今ココ
▶︎〈第2回〉山本未奈子さんが“私”を取り戻すために始めたこと・やめたこと
▶︎〈第3回〉山本未奈子さんが考える“更年期対策”とは…
美容誌や女性誌など様々なメディアで美容家として活躍する傍ら、自らプロデュースするウェルネスブランド「SIMPLISSE/シンプリス」や超吸収型サニタリーショーツブランド「Bé-A〈ベア〉」などを手がけている山本未奈子さん。ある日突然、無気力になり、約2ヵ月の寝たきり生活になるほどのひどい更年期障害を乗り越えて気づいたのが「体からのSOSの見逃し」だったと言います。
“更年期”と意識されたのはいつ頃でしたか?
「今から6年前、42歳の頃でした。今まで乱れることがなかった生理周期が乱れ始めて、生理が来ないこともあったので婦人科を受診しました。そうしたら先生から『更年期が始まってますね』と言われて。ただ42歳で更年期が始まることは特別なことではないそうで、私自身も生理不順以外の不調はなかったのでいつも通りの日常を過ごしていました。
実際に体調の変化を感じ始めたのが44歳頃で、ホットフラッシュが起きました。もう居ても立ってもいられないくらい暑いんです。気温や季節に関係なくて、冬でもちょっと厚着して買い物していたりすると、突然暑くなって汗がとまらなくて…着ているものを脱ぎたくなるほど。それを経験してから『コートの中は半袖にする』など、脱ぎ着できる服装を選ぶようになりましたし、ホルモン治療を始めたらホットフラッシュは治ってきました。ただ、ホットフラッシュが出始めた頃から、疲れやすさや睡眠不足も感じていたんです。それまで深夜0時頃〜6時頃まで眠っていたのが、朝3時や4時に目が覚めてしまう。そこからもう眠れないので起きるんですが、そうすると夕方には睡魔に襲われて…。仕方ないので22時就寝に切り替えましたが、3時4時に目が覚めてしまうと日中の集中力がなくなったり、疲れやすくなるのは変わらないんです。だけど当時は「頑張ればまだ大丈夫」って思ってしまったんですよね。それでさらにひどくなってうつ状態になるとは知らずに」
たしかに、眠りの浅さや疲れやすさ、集中力の低下は“年齢のせい”と思いがちで、更年期のサインとは気づかないかもしれませんね。
「そう…更年期って誰にでも訪れるものなのにネガティブな印象が強くて『私はまだ』って思いたくなるんですが、眠りの浅さ、疲れやすさ、寝ても疲れがとれないというのも更年期症状なんだと思います。当時はそう思わず、不調を感じながらもやり過ごして仕事や育児、家事のほうに集中していました。それで46歳の時、突然起き上がれなくなってしまって…。その予兆だったのかな、もともとポジティブな性格なのにネガティブに考えることが増えたり、友人と出かけるのに気分がのらなかったり、ミーティングの内容が全く頭に入ってこなかったり…。今までは約束の時間の5〜10分前には必ず到着していたのに、メイクや着替えが面倒で時間に遅れてしまって、それで自分が嫌になるという繰り返し。自分の限界を超えてうつ状態が始まっていたのにそれでもアクセルを踏み続けた結果、動けなくなってしまったんです」
それが“更年期うつ”なんですね。実際にどのような症状がありましたか?
「美容にも、仕事にも、子育てにも、興味が持てない無関心の状態です。社員や友人もうすうす私の変化に気づいていて『病院にいってみたら?』と言ってくれて。私自身も『もう無理だな、こんな状態だと仕事も続けられないし、なにもかも諦めたほうがいいのかも』と思い詰めることが増えて、ようやく『今の私は病気なんだ』と気づいて休職することにしました。休職から最初の2ヵ月くらいはもう寝たきり状態。音楽を聴いたり、映画を観たりすることもなく1日のほとんどをベッドで過ごしていました。同時に心療内科にも通っていて抗うつ剤などを処方されましたが、効き始めるのに少し時間がかかるんですよね。ようやく効き始めたころから自分の生活も見直そうという気持ちも起きるように。復職するまでに半年かかりましたが、治療したり、生活を見直したおかげで“私”に戻れることができました」
次回は、休職中に行った生活の見直しなどについてを伺います。
撮影/田中麻以 ヘア&メイク/堀 絋輔(+nine) 構成/片山幸代
※衣装は山本さんの私物