気が置けないとは
気が置けないという言葉は、ドラマや映画、本など、日常生活でもよく見聞きすると思いますが、正しい意味を知っていますか? 遠慮なく自然体でいられる関係性を指します。心を開いて、何でも話せる親しい関係を意味することが多いですね。気が許せない、油断がならないという意味に使うのは誤りですので気をつけましょう。
気が置けないの語源
もともとは、「気が置ける」という言葉に否定語の「ない」がついた言葉です。気が置けるとは、遠慮したくなる感じで、なんとなく打ち解けられないという意味で、それに「ない」がつく「気が置けない」は、遠慮がいらない、気遣いの必要がない、という意味になります。
正しい使い方
では、気が置けないという言葉はどのような場面で使うのか、例をあげて見ていきましょう。
1:彼女とは何年もの付き合いだから、気が置けない関係で何でも話せるんだよ。
2:このチームは本当に気が置けない仲間ばかりで、仕事がとてもスムーズに進む。
3:あのレストランの雰囲気は気が置けないから、リラックスして食事ができるのがいいね。
これらの例文は、親密さやリラックスできる環境を反映しています。
間違った使い方
とはいえ、「あの人は気が置けない人だから注意が必要だ」などと間違った使い方をする人も多いようです。平成24年度の「国語に関する世論調査」では次のように出ています。
全ての年代で,本来の意味ではない(イ)「相手に気配りや遠慮をしなくてはならない」を選んだ人の割合が,本来の意味である(ア)「相手に気配りや遠慮をしなくてよい」を上回っている。16~19歳と30代では,(イ)と(ア)の差が18ポイントとなっている。一方,40代以上では,その差が2~3ポイントと小さい。
このように、多くの人が間違った解釈をしている実態が明らかになっています。
気が置けないの類義語
気が置けないと似たような意味の言葉にはどんなものがあるのか、紹介します。
肝胆相照らす(かんたんあいてらす)
お互いに心の底まで打ち明けて親しくつきあうことです。「肝胆」は、肝臓と胆のうのこと。いずれも生命を支える大事な器官であることから、心の奥深くまで互いを理解し合い、何も隠すことなくお互いに心を開いている状態を象徴しています。以下に例文をあげます。
1:大学時代からの友人とは肝胆相照らす仲で、何でも話し合える。
2:彼とは新しいビジネスを立ち上げて以来、肝胆相照らす関係が築けている。
3:このチームは肝胆相照らすほど信頼関係があり、困難も一致団結して乗り越えてきた。
気心が知れた(きごころがしれた)
気心とはその人が本来持っている気質のことで、「気心が知れた」とは、相手の性質や気持ちを深く理解していることを意味します。この表現は、時間をかけて築かれた信頼や親密さがある人間関係を表すときに使います。以下に例文をあげましょう。
1:彼女とは10年以上の付き合いで、気心が知れた仲だから、何でも話せる。
2:私たちのチームは気心が知れたメンバーばかりなので、無言でも意思疎通ができる。
3:彼は私の古い友人で、気心が知れているから、苦しい時も支えてくれる。
懇意(こんい)
懇意とは親しく交際していることを意味し、相手に対して深い愛情や親密さを感じている状態を表すのに使われます。ビジネスシーンでは、親しくしているといったニュアンスで使われることが多いです。以下に例文をあげましょう。
1:彼女は会社の先輩であり、私の悩みにいつも耳を傾けてくれる懇意な人です。
2:この地域の住民とは長年の付き合いがあり、彼らとは懇意な関係を築いています。
3:この度はありがとうございました。今後ともご懇意にお願いいたします。
気が置けないの対義語
では気が置けないの反対の意味をもつ言葉には、どのようなものがあるのか見ていきましょう。
気が抜けない(きがぬけない)
気が抜けるとは、何かを積極的にやろうと思う気持ちの張りがなくなることです。それに否定語の「ない」がついた言葉ですので、緊張感や気を張る状態を表す表現です。この言葉は、リラックスできない、常に警戒している、または気を配らなければならない状況を指します。以下に例文をあげます。
1:新製品の発表会では、細部に至るまで気が抜けない状態だった。
2:重要なプレゼンテーションの前はいつも気が抜けない。
3:子供たちが遊ぶ時は、ちょっとした怪我にも気が抜けない。
気を許さない(きをゆるさない)
気を許すとは、相手を信用して警戒心をゆるめることです。それに否定語の「ない」がついた言葉ですから、相手に対して警戒心を持ち、心を開かない態度や状態を表します。以下に例文をあげます。
1:彼は新しいチームメンバーに対して最初は気を許さない態度を取っていた。
2:ビジネスでは、競合他社の代表者とは常に気を許さない関係を保っている。
3:彼女はプライベートな話題になると、すぐに気を許さない姿勢に切り替える。
気兼ねする(きがねする)
気兼ねとは他人に対して気をつかうことです。遠慮したり、他人の目を意識し過ぎたりすることで、自然な行動が取りにくい状態を表します。以下に例文をあげましょう。
1:上司が同席していると、スタッフは意見を言うのに気兼ねする。
2:友人の家に招かれたが、高価そうな家具に気兼ねして、リラックスできなかった。
3:彼女は会議で自分の意見を共有する際、他のメンバーの反応を気兼ねしてためらった。
まとめ
気が置けないという言葉は、日常の様々なシーンで私たちの感情や関係性を表現するのに有効です。しかし、多くの人が間違った解釈をしていますので、これを機会に正しい意味と使い方を知り、気軽に使って豊かな人間関係を築いてくださいね。
執筆
武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
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