「一辺倒」とは?
日常的によく使う言葉ではないけれど、ビジネスシーンなどで使われるため、意味や使い方を正しく理解しておきたい言葉ってありますよね。「一辺倒」もそんな言葉の1つではないでしょうか? まずは読み方や意味などをチェックしていきましょう。
「一辺倒」の読み方や意味は?
「一辺倒」は「いっぺんとう」と読みます。まずは、辞書で意味を確認しましょう。
特定の対象だけに心を傾けて、他は顧みないこと。「アメリカ―の政策」「夏はもっぱらビール―だ」
[補説]第二次大戦後、毛沢東の論文で使われ流行した語。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
意味は「特定のことだけにかたよること」だとわかりました。主に、一つの物事に集中して、その他を顧みないということに使われる表現です。
「一辺倒」は毛沢東が流行らせた?
「一辺倒」が日本で使われるようになったのは、第二次世界大戦後。毛沢東が1949年7月に発表した論文に「要向社会主義一辺倒」と記しました。それがきっかけとなり、日本でも流行したそうです。
「通り一辺倒」は正しい表現?
「通り一辺倒」という表現を見聞きしたことはありませんか? 「あの人は、通り一辺倒な考えしかしない」というように使われたりしますが、実は「通り一辺倒」という表現は辞書で探してもないようです。ではなぜ、そのような言い方をするような人がいるのかというと、それは「通り一遍」という言葉と「一辺倒」が混ざったからだと考えられます。
確かにこれらは似ている言葉ですが、意味はまったく異なるのです。「通り一遍」とは、「うわべだけで誠意がない」ことを表します。「通り一遍の挨拶」は、「表面上だけの挨拶」という意味合いになります。
もとは「通りがかりで立ち寄っただけで、普段は馴染みのない客」という意味の言葉でした。それが「儀礼的」や「うわべだけ」という意味合いで使われるようになったとされています。
「一辺倒」を使う際の注意点は?
「一辺倒」を使う際の注意点としてあげられるのは、以下の2点です。
複数の物事に対して使わない
例えば「音楽はクラッシックとジャズに一辺倒だ」など、複数の物事に対しては使いません。「一辺」とは、「一方向」を指すため、一つの物事にかたよっている場合のみに使います。
ネガティブな表現になりがち
そして二つ目は、ネガティブな表現になりがちだということです。「一つのことに集中して、周囲が見えていない」などのニュアンスを含む表現であるため、相手に批判的な言葉として受け取られる可能性も。十分に配慮して使う必要があるでしょう。
「一辺倒」の使い方を例文でチェック
「一辺倒」の意味や読み方、使う際の注意点などを見てきました。では実際にどのように使うのか、例文でチェックしていきましょう。
1:「父は仕事一辺倒な人間だったが、退職後は家族と過ごす時間を大切にしている」
「仕事一辺倒な人間」とは「仕事ばかりしている人」という意味合いです。「〇〇一辺倒な人」ということで、その人が何に一生懸命になっているのかを、伝えることができます。
2:「私の旅は、食一辺倒になりがちだ」
何かに夢中になっていることを表す際も「一辺倒」を使うことが可能です。「食一辺倒」と表すことで、「食べることに夢中になる」「観光よりも食事を楽しむ」ということを伝えることができます。
3:「私は日本酒一辺倒です」
「日本酒一辺倒」とは、日本酒ばかりを好んで飲むこと。「〇〇一辺倒」ということで、特定のものばかりを好んで選択することや、行なうことを表すことができます。
4:「アメリカ一辺倒な政策では国民から支持されない」
「一辺倒」は、政治や外交においてよく使われる言葉です。「金融緩和一辺倒」や「軍事力一辺倒」など、かたよった政策をいうときなどに使われます。
「一辺倒」の類語・言い換え表現は?
「一辺倒」の類語・言い換え表現には「偏重」・「のみ」・「オンリー」・「脇目も振らず」・「遮二無二」があげられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
1:「偏重」
「偏重」は「へんちょう」と読み、意味は「物事の一面ばかりを重要視すること」。「偏」は「かたよる」という意味で、「重」には「重んじる」という意味が含まれます。かたよっていることをいう表現で、例えば、学歴を重要視する考えを「学歴偏重主義」などのように使うことが可能です。
2:「のみ」
「のみ」は、ある一つに限定していることをいいます。「毎朝パンのみ食べる」「アルコールはビールのみと決めています」など、限定するものの後に置いて表します。
3:「オンリー」
「オンリー」は英語で「only」、「唯一の」や「~だけ」という意味。「聞く音楽はジャズオンリー」、「昔から彼オンリー」など、普段の会話にもよく出てくる言い回しですよね。
4:脇目も振らず
「脇目も振らず」は「一方の方ばかり見て、そのほかのことには心が奪われないこと」。「脇目も振らずに真っ直ぐ進む」などのように、一心不乱に突き進むことを表します。
5:遮二無二
「遮二無二」は「しゃにむに」と読み、意味は「一つの物事に集中して、そのほかのことには目もくれず、夢中になること」です。「遮二無二走り続ける」などのように使います。
「一辺倒」の対義語は「均衝」
かたよっていることをいう「一辺倒」に対して、「均衝」は「程よくバランスが取れていること」をいいます。「均」は「等しいこと」をいい、「衡」には「つりあいがとれている」ことを表し、「均衡を保つ」や「均衡が崩れる」などのように用いられます。
最後に
かたよった物事や、何かに夢中になることをいう言葉、「一辺倒」について解説しました。ビジネスシーンなどでも使われることがある言葉です。誤った解釈や使い方をしないためにも、正しく言葉の意味などを理解しておきたいものですね。
類語や言い換え表現も併せて理解しておくと、場面場面でふさわしい表現をすることができるのではないでしょうか。
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