抽象的とは?意味を簡単にご紹介
抽象的(ちゅうしょうてき)とは、いくつかの事物に共通なものを抜き出して、それを一般化して考える様子を意味する言葉です。また、頭の中だけで考えていて、具体性に欠ける様子を指すこともあります。
【抽象的】ちゅうしょうてき
1.いくつかの事物に共通なものを抜き出して、それを一般化して考えるさま。
2.頭の中だけで考えていて、具体性に欠けるさま。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
抽象的な表現の例
抽象的な表現をいくつか見ていきましょう。
〈抽象的〉
・空き時間があったので、友人と運動をした。
・彼は楽器の演奏を趣味としている。
いずれも意味はわかっても、実際に何をしたのか、何を伝えたい文章なのかわかりにくいのではないでしょうか。上記の文章を具体的な表現に書き換えてみました。
〈具体的〉
・休講になったので、2時間ほど暇になった。同じ学科の春子さんとバドミントンをして、時間をつぶした。
・わたしの兄はギターを弾くのを趣味としている。
たとえば、「食べ物」や「乗り物」「生き物」などは抽象的な表現です。状況によっては適切な表現となりますが、抽象的な表現ばかり続くと相手に意味が伝わりにくくなるだけでなく、印象に残りにくい文章になります。
抽象的を使った例文
「抽象的」は次のように使います。
・彼の説明は抽象的すぎて、何を伝えたいのかよくわからなかった。
・抽象的な話ばかり続いたからか、急に眠くなった。
抽象的と類似する表現を例文でご紹介
抽象的と類似した意味で使われる表現には、次のものが挙げられます。
それぞれの意味や、抽象的とのニュアンスの違いについて解説します。
観念的
「観念的(かんねんてき)」とは、具体的事実に基づかずに頭の中で組み立てられただけで、現実に即していない様子を指す言葉です。
・評価は高いらしいが、わたしにとっては観念的でわかりにくい映画だ。
・彼の話は観念的で、現実的ではない。
具体性を欠くという点では、観念的も抽象的も同じです。しかし、観念的は現実に即していない様子を指すのに対し、抽象的は現実に即しているときもある点が異なります。
空想的
「空想的(くうそうてき)」とは、考えが現実からかけ離れている様子を指す言葉です。
・彼女は空想的な物語を書くのが得意だ。
・姉はいつでも空想的なことばかり話している。
空想的は現実からかけ離れている様子を指しますが、必ずしも表現が抽象的とは限りません。「黄色い車が空を飛んでいる」や「わたしのお母さんが妖精になった」のように、具体的ではあるけれども現実的ではない話もあります。
非論理的
「非論理的(ひろんりてき)」とは、論理に合っていない様子や、筋道が通っていない様子を指す言葉です。
・彼の話は非論理的で、感情に流されているのは明らかだった。
・彼女の論文を読んだが、非論理的で学術論文とはいえない代物だった。
非論理的は論理に合っていないことを指しますが、抽象的は具体的ではないことを指します。「彼が青い服を着ているから、明日は雨だろう」「犬に吠えられたから、夕食はステーキのはずだ」のように、非論理的かつ具体的な文章も存在します。
机上の空論
「机上の空論(きじょうのくうろん)」とは、頭の中だけで考え出した、実際には役に立たない理論や考えのことです。
・彼の言う「絶対に儲かる投資方法」は、机上の空論だ。
・兄の話は机上の空論で、まったく現実的ではない。
なお、混同しがちな言葉として、「砂上の楼閣(さじょうのろうかく)」があります。砂上の楼閣とは、見かけは立派であるが基礎がしっかりしていないために長く維持できない物事のたとえ、また、実現不可能なことのたとえとして使われます。
・勢いで会社を作ったが、砂上の楼閣と言わざるを得ない。早ければ年内に倒産しそうだ。
・彼女の話は面白いが、砂上の楼閣だ。
いずれも現実的ではないことを意味しますが、抽象的とは限りません。「馬が象を背負う」「逆立ちで海の上を歩く」のように、具体的かつ非現実的な言葉もあります。
抽象的と反対の意味を持つ言葉をご紹介
抽象的とは反対の意味で使われる言葉としては、次のものが挙げられます。
それぞれの使い方について、例文を通してご紹介します。
具体的
「具体的(ぐたいてき)」とは、はっきりとした実体を備えている様子や、個々の事物に即している様子を指す言葉です。
・彼はトラブルを解決するための具体的な方法を教えてくれた。
・先生が具体的に指示してくれたため、時間内に課題を仕上げられた。
たとえば、「食べ物」や「乗り物」「生き物」などはいずれも抽象的な表現ですが、「りんご」「自転車」「ラッコ」はいずれも具体的な表現です。具体的な言葉は相手に伝わりやすく、印象に残りやすくなる傾向にあります。
具象的
「具象的(ぐしょうてき)」とは、直接それとわかるようなはっきりした形を持っている様子のことです。
・具象的な絵画はわかりやすいという長所はあるものの、現実的で想像力を刺激されない点が短所といえる。
・もう少し具象的に説明してくださいますか?
「具象的」は、はっきりとわかりやすく表現するときに使われる言葉です。「象(しょう)」には、目に見える姿や、物の形という意味があります。
写実的
「写実的(しゃじつてき)」とは、主観を交えずありのままに表現しようとする様子です。
・彼の状況説明は写実的で、実際の様子を見なくとも容易にイメージできた。
・写実的な筆致で、まるで写真のような絵画だった。
「写実的」は、見たままの様子を正確に表現するときに使われる言葉です。具体的でありつつ現実的でもあります。
抽象的・具体的表現を場面に応じて使い分けよう
抽象的な表現は幅広い意味を含められるため、汎用性が高い文章に仕上がります。しかし、あまりにも抽象的な言葉が続くと、何を指している文章かがわからず、相手の記憶に残りにくくなってしまうのも事実です。必要に応じて具体的な表現も含め、伝わりやすい言葉・文章に仕上げるようにしましょう。
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