「具体的」の対義語は「抽象的」
「具体的」(ぐたいてき)とは、はっきりとした実体があることです。反対の意味をもつ対義語は「抽象的」(ちゅうしょうてき)になります。
ぐたい‐てき【具体的】
[形動]はっきりとした実体を備えているさま。個々の事物に即しているさま。「具体的な方法」「具体的に指示する」⇔抽象的。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用

(c)AdobeStock
まずは「抽象的」の意味や使い方を、例文とともに確認していきましょう。
「抽象的」の意味とは
「抽象的」とは、具体性に欠けることです。頭のなかだけで考えていて、他者には伝わりにくい物事を表します。
例えば、「何が食べたい?」という問いかけに対し、「何か温かいものが食べたい」という回答は具体性に欠け、抽象的だといえます。問いかけた側は、相手がどのようなメニューを求めているのか、具体的なイメージをつかめません。
また、「抽象的」には「物事の共通点を抜き出し、一般化して考える」という意味もあります。この考え方は「抽象的思考」と呼ばれるものです。
例えば、「リンゴ」を「紅玉やジョナゴールド、青森の名産品、ジュースの原料」などと表現することは、具体的といえます。一方で、「木になる果実、フルーツ」のように大まかにまとめる表現は、抽象的思考によるものです。
抽象的思考には、物事の本質を捉える力が求められます。具体的な思考と共に、ビジネスで重視される考え方のひとつです。
ちゅうしょう‐てき〔チウシヤウ‐〕【抽象的】
[形動]
1 いくつかの事物に共通なものを抜き出して、それを一般化して考えるさま。「本質を抽象的にとらえる」
2 頭の中だけで考えていて、具体性に欠けるさま。「抽象的で、わかりにくい文章」⇔具象的/具体的。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「抽象的」の使い方と例文
「抽象的」という言葉は、日常生活やビジネスシーンで以下のように活用できます。前述した正しい意味をふまえ、例文とともに使い方を確認していきましょう。
- 問題解決のために話し合いの場を設けたが、相手の話はどれも抽象的で、具体的な解決策は見出せなかった。
- 彼女の説明はどうも抽象的で、内容がわかりにくい。
- ビジネスの本質を捉えるためには、抽象的思考が求められる。
- 彼の言葉はいつも抽象的で、本心が掴み切れない。
- その絵画はあえて具体的な描写を避け、多彩な色と形で抽象的に描かれている。
「抽象」の熟語や慣用句
「抽象」は「抽象的」だけでなく、以下のような熟語や慣用句として活用できる言葉です。

(c)AdobeStock
いずれも具体性に欠けることや、物事を一般化して考えることを表します。言葉の幅を広げるため、それぞれの意味や使い方をみていきましょう。
「抽象化」
「抽象化」とは、物事を抽象的にすることです。「具体化」の対義語であり、多くのものが共通してもつ要素や性質を抜き出し、一般化することを表します。
他者に物事を伝える際は、「具体化」することで詳細を明確に伝えられます。「抽象化」は、共通する内容を端的に伝えたいときに便利です。
会話やメール文などでは、それぞれ「具体化する」、「抽象化する」のように活用できます。
- 具体化と抽象化、両方を使いこなすことで物事の全体像をより的確に把握できる。
- 物事を抽象化するスキルを身に付け、仕事に役立てていきたい。
「抽象画」
「抽象画」とは、点や線、色彩などを中心に描かれた絵画のことです。反対に、人や風景をありのままに描いたものは「写実絵画」、人や静物などを描いたものは「具象画」などと呼ばれます。
「抽象画」は、20世紀初めごろに誕生した絵画様式です。種類はひとつに限らず、パブロ・ピカソの『ゲルニカ』を代表する「キュピズム」や、色彩豊かに心象風景を描く「純粋抽象絵画」など、さまざまに分類されます。
- 週末は抽象画を集めた展覧会に出かける予定だ。
- 多くの画家たちによって描かれた抽象画は、決して画一的なものではなく、実に奥深い様式美を兼ね備えている。