急逝の意味とは
急逝(きゅうせい)とは「突然の死」を表す言葉ですが、より正確で詳しい意味を解説します。同じ「逝」という漢字を用いる「逝去(せいきょ)」との違いについても併せて紹介しますので、しっかりとチェックしておきましょう。
前触れもなく亡くなること
急逝とは、前触れなく突然命を落とすことを意味します。たとえば、前日まで元気だった人が翌朝亡くなっているような状況を指す言葉です。「急」と「逝」の言葉通り、予期せぬ速さで命が尽きることを表しています。
きゅう‐せい〔キフ‐〕【急逝】
[名](スル)急に死ぬこと。急死。
小学館 『デジタル大辞泉』より引用
長期入院中の人や、重篤な病気と闘っていた人が亡くなった場合、ある程度は死期が予測される状況であることから、「急逝」という言葉は使いません。
急逝と逝去との違い
急逝と逝去は、どちらも人の死を表しますが、意味や使用場面に違いがあります。
急逝が前触れなく突然亡くなることを指すのに対し、逝去は死因や経緯にかかわらず使用できる汎用的な表現です。また、逝去は「死ぬ」の尊敬語で、故人への敬意を表す言葉。「社長が昨夜逝去された」といった使い方をします。
急逝は突然の死を強調する言葉ですから、長期入院していた人や高齢者が亡くなった場合は、汎用性の高い尊敬語である「逝去」を使うのが適切です。
使い分けの例として、「有名俳優Aさんが40歳で急逝した」というニュースがあれば、その俳優のファンは敬意を持って「Aさんが逝去された」と表現します。
急逝の使い方や例文
急逝という言葉を使用するときには、正しい場面かつ適切な表現で使う必要があります。具体的な場面や、会話としてイメージしやすい例文を紹介します。
予期せぬ死亡時に使う
急逝は、予期せぬ突然の死を表す言葉です。これまで健康であった人が、病気や事故により命を落としたり、自ら命を絶ってしまったなどのケースで使用されます。
急死の丁寧語にあたるため、故人や遺族を敬いたい場面や、死という言葉を避ける場面で使いましょう。
なお、報道の場や社内での情報共有など、急に亡くなったという事実を伝える際には適していますが、弔事の場など遺族の前では「ご逝去」などの、より丁寧な表現を用いることが望ましいとされています。
急逝の例文
使い方がイメージしやすいよう、急逝を含む例文を3つ紹介します。
・昨日まで元気だった父が急逝し、家族一同、悲しみに暮れています。
・著名な作家が55歳で急逝し、文壇に衝撃が走った。
・同僚が出張先で急逝したと聞き、言葉を失いました。
どの例文も、予期せぬ突然の死を表現しています。そのような別れを表現する際に「急逝」としますが、使用には配慮が必要です。遺族の心情を慮り、適切な場面で使いましょう。
急逝の言い換え表現・類語
急逝という言葉には、いくつかの類語や言い換え表現があります。急逝と似た意味を持つ「即死」「頓死」「死去」「他界」について、それぞれの意味や使い方、急逝との違いを詳しく解説します。
即死
「即死」は、事故や災害によって瞬時に命を落とすことを意味します。たとえば、交通事故で大きな衝撃を受けて即座に亡くなった場合、「交通事故により即死した」と表現します。急逝と比べると、即死はより直接的で瞬間的な死を指します。
即死の特徴は、死亡までの時間が極めて短いことです。たとえば、「崖から転落して即死した」「落雷に打たれて即死した」など。ただし、「何分以内」という明確な定義はありません。
急逝との違いは、より具体的な状況を示す点です。急逝が予兆なく突然亡くなることを広く指すのに対し、即死は事故や災害といった外的要因による死を表現します。
頓死
「頓死(とんし)」は、突然の死や予期せぬ原因で亡くなることを意味します。たとえば、「旅行先で友人が頓死した」「頓死の原因を詳しく調べる」などの使い方があります。
急逝と頓死は似た意味を持ちますが、頓死の方がより突発的で劇的な印象を与える表現です。そのため、公の場では丁寧語である急逝を使う場合が多いといえます。
興味深いことに、頓死は将棋の世界でも使われています。対局中に優勢だった局面から一手の間違いで詰み、形勢が逆転することを「頓死」と表現するのです。
死去
「死去」は、文字どおり「死んでこの世から去る」という意味を持つ言葉です。主として、身内が亡くなった際に使用されます。たとえば「祖父が昨日、静かに死去しました」といった使い方をします。
急逝との違いですが、死去は必ずしも突然の死を意味しない点です。そのため、長期の闘病の末に亡くなった場合でも「死去」と表現できます。
死去は比較的中立的な表現で、公式の場面でも使用されます。「著名な作家が昨夜死去した」というように、ニュース報道でもよく耳にする表現です。ただし、身内以外の人に対して使う場合は、尊敬語の逝去が適切です。
他界
「他界」は、この世を去り、別の世界へ旅立つことを意味します。仏教的な背景を持ち、「あの世に行く」というニュアンスを持つ言葉です。たとえば「祖父は昨年他界しました」と使います。
前述の「死去」と同じく、突然の死を意味するとは限らない点が急逝との違いです。長期の闘病後でも「他界」と表現できます。また、他界は比較的穏やかな印象を与える婉曲表現です。
主に、身内や親しい人の死を表現する際に使われます。「尊敬する恩師が先月他界されました」といった具合です。ただしキリスト教のほか、仏教であっても宗派によっては使われない言葉である点に注意が必要です。
急逝の連絡を受けたらどうする?
急逝の連絡を受けた際の対応は、身内か身内以外かによって異なります。突然の別れに戸惑うことも多々ありますが、冷静に行動することが大切です。この項では、身内が亡くなった場合と身内以外が亡くなった場合の対応について、具体的に解説します。
身内が亡くなった場合
身内が急逝した場合、状況に応じて適切な対応が求められます。自宅で亡くなった場合、まずはかかりつけの医師か警察に連絡します。かかりつけ医がいれば自宅で死亡確認を行い、いない場合は警察に連絡して指示を仰ぎましょう。
一方、病院で亡くなった場合は、医師に死亡診断書を発行してもらいます。その後、葬儀社に連絡し、遺体の搬送や葬儀の準備を進めます。
死亡後の手続きとして、死体検案書または死亡診断書の取得、葬儀場の決定、役所への死亡届の提出と埋火葬許可申請などが必要です。
身内以外が亡くなった場合
身内以外の方が急逝された場合、訃報を受けたら「心からお悔やみ申し上げます」などの簡潔な言葉でお悔やみを伝えます。葬儀の詳細が不明な場合は、無理に尋ねず「何かできることがあればお申し付けください」と伝えるのが適切です。
葬儀の日時や場所がわかり次第、参列の可否を伝えます。参列する場合は服装や持ち物の準備をするほか、故人との関係性に応じて弔電を送る、お通夜や告別式に参列する、香典を用意する等対応を検討します。
葬儀に参列できない場合でも、後日遺族に連絡を取り、哀悼の意を表しましょう。急逝という突然の別れに対してできることは、故人との思い出を大切にし、遺族に寄り添うことです。
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